JAPAN GEOGRAPHIC
Monthly Web Magazine June 2018
平日でも賑わう平等院や宇治上神社があり世界文化遺産に登録されている宇治。
そこから淀川(宇治川)を歩いてさかのぼること30分、天ケ瀬ダムがあります。
高さ73m、長さ254mのドーム型アーチ式のコンクリートダムで、今から54年前の昭和39年(1964)に完成したダムです。
日本最大の湖琵琶湖を源とする一級河川淀川にかかる唯一のダムで、治水Fと利水(上水W、発電P)に寄与する総合(FWP)ダム。
近年、「コンクリートから人へ」というスローガンでコンクリートの塊であるダムが悪者扱いされる中、関西地方で唯一国が手掛けるダム事業として「天ケ瀬ダム再開発事業」が順調に進んでいます。
元のダムの放流量を1.7倍に増やすことで、ダムの貯水容量を増やす計画です。
このあたりの淀川は洪水時最大毎秒1500トンの水が流れるようになっていますが、ダムから放流できるのは全てのゲート開けても最大で毎秒900トンしか流せません。
残り600トンを放流できるようにしないといけないからです。
しかし、アーチ型のダムは構造上容易に改造できないため、本体を迂回して水を流すバイパストンネルを施工しているのです。
事業完了まであと数年・・、工事は最盛期を迎えているので訪ねてみました・・。
訪ねた日は前週からの雨で琵琶湖の水が増えていることや、梅雨を迎えるにあたり琵琶湖や上流の水を減らしておく目的でダムの真ん中にあるコンジットゲート3門を開けて毎秒300トン(通常の約10倍)の水を下流に放流していました。
その勢いはダムの横にある建物を低周波振動で揺らし続けていました。
ダムの上流の一部を締め切って水を遮断して、直径28mの巨大な円筒形のコンクリート構造物をつくっています。
ここに取水口が設けられるのですが、大きさはおよそ30階建てのビルに相当します。
当日はまだ半分くらいで15階分が露出しているのですが、今年中には出来上がるようです。
毎秒600トンの水が取水口からダムの左岸側の地下をトンネルを通過し下流の放流口に流れることでダム本体を通ることなく流れます。
そのために幅23m高さ26mの巨大なトンネルが必要となり、完成すれば日本最大級のトンネル断面となる予定です。
まだ、断面の半分しかできていないそうですが、ここもあと数年で完成して水を流してしまえば・・普通、人が入れなくなって見ることができなくなるようです。
吐口の外観も観光名所を下流に控えていることもあり、景観も配慮して巨大さを感じることができないようにするようです。
最後は知る人ぞ知る「ダムカード」をいただきました・・。
ダムカードとは統一した企画で全国の主要ダムにて無料で配布されているカードで、コレクターもいるようで一昔前のカードはネットで高額取引もされているとか・・・。
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