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Monthly Web Magazine July 2018

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■ 東日本大震災から7年が過ぎた真壁で思うこと 川村由幸

東日本大震災から7年4ヵ月が過ぎました。復興も道半ばまだまだ多くの問題を抱えています。

特に福島はこれから30〜40年間、復興という文字がつきまとうことになる現実に未だ打ちひしがれる自分がいます。

そんな気分で被災地と呼ぶには被害が軽微でいささかおこがましい感もありますが、まだその傷跡の残る真壁を訪れました。

以前にもここで同じ発言をした気がしていますが、同じ重伝建でも千葉の佐原と比較して真壁は被害を受けた歴史ある建造物の再建が遅い状況です。

佐原は元に復原されたと言える状況なのにも拘わらず、真壁は7年前の被害を受けたままの建造物が残っています。

観光地としての商業的価値の差なのでしょうか。遅い再建ではありますが、その現状を画像でお知らせします。

先ずは良いほうから、左の画像が再建前、右が再建後です。

  

観光駐車場のすぐそばの平井家、少し造りに変化はありますが、風情を残してきちんと再建されました。あとは風雪という

時間の問題を残すだけです。

  

花屋を営んでいた木村家、左側の門が未再建ですが、これも美しく復元されています。ただ、新しい家には人の気配がないのです。

花屋は再建されないようなのです。やはり家は人が住んで家、人の住まない重伝建はハリボテは言いすぎでしょうか。

重伝建は済む人の生活があっての重伝建ではないでしょうか。

次にやっと再建が始まった建造物、上と同様左が再建前、右が現在の画像です。

  

  

工事中です。特に上の市塚紀夫家は曲屋で歴史的な価値の高そうな建造物で私個人的にもこのまま朽ち果てる建造物になってしまうのではと心配していました。やっと再建が始まり一安心しています。

下の土谷家も震災後しばらくは無人であったと思います。前回ここに訪れた2016年9月には人が住んでおられましたのでそれで再建が進んだのではと推測しています。

  

村井醸造さんです。酒造会社で建物の規模が大きくて再建が大変です。工場ですから自主再建の道だけなのでしょう。

まだまだ多くの時間が必要だと感じました。

中途半端のものもあります。

  

塚本茶舗の蔵。屋根のみきちんと再建されていますが、他は手つかずの状態です。

なぜこのようなことになるのでしょうか。持ち主の事情も絡むのかもしれません。

最後が手つかずの状態の建造物です。

  

右の画像は2016/9のもので、今回撮影していませんが、現在もこのままの状態です。

手つかずの建造物はこの二つぐらいですが、この状態がさらに進めば、再建も困難になることを危惧しています。

まあ、とてもゆっくりではありますが、再建が進んでいることは進んでいます。ただ、ゆっくり過ぎるのです。

真壁は重伝建というだけで観光で賑わう町ではありません。

そんな中で、古いものを古いものなりに再建することには大きな障害があるのだろうと想像しています。

災害のあとで、文化を守ることより人の生活が優先されて当然です。経済的価値の乏しい建造物の再建が優先されるべきでもありません。

ただ、文化は一度失われると二度と元には戻りません。失ってから気づくのではなく失う前に気づき手を入れるべきだと

思うばかりです。

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