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Monthly Web Magazine May 2019

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■ 京都 一本橋 中山辰夫

所要のついでに10連休で賑わう京都に行きました。真夏を思わせる暑い日でしたが人の多さにビックリしました。

少し時間が取れましたので『一本橋』周辺を散策しました。場所は京都市東山区石橋町地先です。

 

比叡山の麓に源を発する白川が、南下して知恩院の古門前に差し掛かる少し手前にある橋が「一本橋」です。

一本橋

   

長さ12m弱の橋で、縦2列に並べられた切石を石柱橋脚で支えているだけのシンプルな構造で、橋巾は60数cmしかありません。

行政上の名称は『古川町橋』ですが『一本橋』の名称で親しまれているようです。

この橋は他に「行者橋」や「阿闍梨(あじゃり)橋」とも呼ばれています。

比叡山延暦寺では平安時代から「千日回峰行」が行われてきました。この行の終盤には9日間、水も食物睡眠もとらずに「不動明王の真言を10万回唱え続ける」という「明王堂参籠」が課せられます。

この千日回峰を達成した行者は、知恩院の傍らにある粟田口(あわたぐち)の尊勝院に詣で、元三大師(だんざんだいし)(第18代天台座主)に満行を報告するのが決まりで、その際の入洛時に最初に渡る橋がこの一本橋でした。この由来から行者橋や阿闍梨橋と名付けられたようです。

命がけの荒行を続けてきた阿闍梨が「京都で最初に渡る橋」が名橋でなく、一切の装飾や余剰を排した簡素な一本橋であったという歴史的事実に、この橋と1000年に及ぶ求道の深さを感じます。

現在この橋は、地元にとって日常生活に欠かせぬ「道」で、様々な人が行き交っています。すぐ下流にはテラスが設けてあり、ベンチに腰かけての眺めもいいです。

   

この橋の周辺は散策にベストな場所です。

知恩院古門前橋〜古門・青蓮院・粟田神社・平安神宮もすぐ近くにあります。

     

尊勝院のある辺りは粟田口とされ由緒ある一帯です。粟田神社手前の参道を登ります。

   

尊勝院(元三大師堂) 東山区粟田口三条坊町 宗派:天台宗 本尊:慈恵大師 良源(元三大師) 始まりは平安時代の保延年間(1135~40)

本堂(京都市指定文化財)は、文禄年間(1592〜95)に、豊臣秀吉が朝鮮への出兵と桃山城の安寧を祈願するために再建したとも伝えられています。

    

境内からの市内の眺めもいいです

 

尊勝院の境内は京都トレイルのコースに入っており、尊勝院から山道を登ると東山山頂(標高:218m)に至ります。

そこ建つ将軍塚「菁龍殿」の大舞台からは京都市内の全貌が見渡せます。(画像は一部引用です)

     

久しぶりに歩きましたが、体力、気力の衰えを感じる時間で終わりました。

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