Monthly Web Magazine Aug. 2019
近年、インターネットの世界には情報が溢れ、ずっと疑問に思っていたことも調べればわかるようになりました。
もちろん、情報の質は自分で判断する必要がありますが、便利になったことは確かです。
最近、長年の疑問のうち2つが解決したので、紹介します。
別府の供養盆踊り
宮崎県日向市に「別府(びゅう)の供養盆踊り」という踊りが伝わっています。
私は10代後半から20代前半にかけて、NHKのFM放送でやっていた民謡番組を毎週聞いていました。
別府の供養盆踊りは、確か、大学1年の頃に、農山漁村文化協会がオーケストラアレンジでレコード化したものが紹介されたのですが、たまたま録音して、何回も繰り返し聞いていました。
口説きの文句は、忘れているところや不明瞭なところもあるのですが、だいたい次のようなものでした。
南無や西方御弥陀如来 本願誓いましまさば
来世は必ず父母の 同じ蓮に生まれんと
念仏百遍唱えおき
お念じ終わりて衣裳も着替え 下地白無垢下締めまでも
上に羽二重浅黄の袷 しごき縮緬ゆるやかに締め
髪も(きわ?)結う紅白粉も 常に変わりてさも麗しく
(はちじの?)賜るそのものは 来国光の九寸五分
死ねとのことにはあらねども 今際の際の本望ぞと
三度いただき取り直し 南無阿弥陀仏を唱えおき
胸と紋とのあわいぞと 思うところに押し当てて
ハバキの元まで刺し通し 太刀を抜いてはうつ伏せに
倒れてついに哀れなや 二十一歳盛りの花があしたの露とぞ消えにける
おそらく浄瑠璃から来ていると思われたのですが、21歳の女の人が自刃する情景を描写したものでした。
しかし、何の題目なのかは、当時1日かけて大学の図書館で調べてもわからず、その後もずっとわからないままでした。
しかし、最近、ふとしたことから日向市のホームページで別府の供養盆踊りが紹介されているページを見たら、伝えられている口説きが列挙されており、その中に「加賀見山」とありました。
加賀見山は、浄瑠璃、歌舞伎の「加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)」、自刃するのは中老尾上です。
インターネットで中老尾上の年齢設定を調べると、21歳でしたので、中老尾上の自刃の場面だということがようやくわかりました。
ぢぬき
私が通っていた中学校の3年生の美術の授業はかなり変わっており、何人か1組で1年間かけて1冊の版画の絵本を作るのですが、1年の半分くらいの期間は近くの西陣の町に出て取材をするのです。
西陣といえば西陣織なので、大半の班は機を織っている家や織屋さんを尋ねて取材させてもらうことになります。
私の班も、手機(ジャカード織機)で帯を織っている家に通って取材をさせてもらっていました。
取材が始まる前に、先生から、「紋紙(ジャカード織機のパンチカード)は版権があるのでそのままスケッチしないように」といった注意事項とともに、「絵本には後書が必要で、それは頭で考えた文章ではなくて、取材した事実に基づいて書くように」という指示がありました。
私の班では希代のメモ魔である小野君が、スケッチの傍ら、職人である御主人と奥さんの会話を克明にメモしており、私は、達筆すぎて小野君自身も解読できないメモの解読作業と、後年放送記者からアナウンサーになる寺谷君がメモをつなげて後書の文章にするのを手伝いました。
全体の管理は親方気質の岡田君が進めるなど、なんとなく全体がうまく機能して後書が出来上がりました。
絵本の題名は、メモされた会話の中から選んだ、「おとうさん、ぢぬきありますか、まだ」でした。
この題名を選ぶときに、「ぢぬき」って何だろうという疑問がありました。小野君は、聞き違いで、「にぬき(堅ゆで卵)」ではないかとも言いだしましたが、それを本格的に調べることもないまま、40年近くがたちました。
最近、このことをふと思い出して、インターネットで調べてみたら、じぬきは「地緯」で、下地に当たる部分に使う緯糸(ぬきいと)すなわち横糸のことだということがわかりました。
当時、取材先の御夫婦に聞けばすぐわかったことだと思いますが、若い頃の思い出が鮮明によみがえってきて、何とも言えない気分になりました。
今月のお祭り
祇園祭神幸祭 (四条御旅所前)
御旅所前での最後の神輿振りは迫力がありました。
2年続いて台風で宵祭の提灯船が中止になりましたが、朝祭も風情がある祭です。
車楽船(だんじり船)は時代の影響で鉄船になっていますが、あまり気になりません。
だんじりが向かい合って指相撲をするようなイメージで、勇壮なお祭りですが、暗くなる前に事故のため中止となりました。
来年以降どうなるかわかりませんし、9月に行われる初嶋大神宮の山合わせにも影響しそうな気がします。
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