Monthly Web Magazine Apr. 2020
■ 紫式部と聖武天皇ゆかりの石山寺 瀧山幸伸
今年に入ってからの訪問地はどこもガラガラで、普段から混雑する目的地を避けている自分の文化財調査活動にはうれしい誤算だった。関西の観光地、特に京都はあまりの混雑にここ10年ほど足が遠のいていたが、今年は昔の面影を思い出すように静かだった。
滋賀の各地も普段は賑やかなのだが、今年の石山寺は桜の時期にもかかわらず近隣の方が少数参拝しているだけ。今回はガイドさんの解説をじっくり聞きながらゆっくりと境内を巡ることができた。
聖武天皇の勅願寺なので、新天皇ご即位にちなみ秘仏の如意輪観音が公開され、静かに拝むことができたことは願ってもない幸いだった。また、紫式部が源氏物語を構想した寺であることも有名だ。古典文学大好き青年で、高校時代に原文で全帖に親しんだ自分にとっては特別な場所だ。紫式部の部屋に座るお人形さんと境内の銅像は自分のイメージとは少し違うように思えた。
この寺は天然記念物の石灰岩の上に立地しており、景観的にも地理的にも興味深い。境内の奥は深い谷で閉じているので水音が爽やかだ。隣接する新幹線や高速道路の騒音や人の雑踏とは無縁で心地よく、おすすめの寺だ。
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