JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Feb.2021


■ 福岡の小戸海岸  田中康平


緊急事態宣言はまだ続き出かけにくい状態がなかなか終わりにならない。不急不要の外出は控えるといっても気晴らしは必要で、海を見に行ったりもする。福岡市で人工的でない海を最も近くで見ることができるのは小戸公園かなと思って、数日前に出かけてみた。
小戸という地名はいつからそう呼ばれているのか分からないが、小戸神社の由緒には日本書紀に出てくるイザナギが黄泉の国から戻って禊をした小戸がこの地だというように書いてあるらしい。伊都国であった糸島と最古の王墓ともされる吉武高木遺跡の間を結ぶ峠は日向峠と呼ばれており日本書紀にある「筑紫の日向の小戸」とはここのことだとしてもそれほど無理な説明でもない。10万年前の出アフリカから3万年前頃に日本列島に人類が到達したのは南の沖縄経由,西の朝鮮・中国経由、北のサハリン経由の3方からだったと推定されており、古事記日本書紀の記述は西方又は南方ルートの起源を暗示しているのだとも思える。西からとすればここが日本書紀の小戸であるのかもしれず、南方であれば宮崎県の小戸神社の辺りなのかもしれない。神話時代の話故、どのみち決着はつかないだろう。
先日は小戸神社の向かいの妙見岬に行ってみた。こちらには妙見神社があるが、創建は2003年で非常に新しい神社ということになる。本殿はテントで中に神棚があり夢のお告げで掘り出された石がご神体という。確かに褶曲した地層が露出しているところでもあり石が面白いが、現在でも何か神聖さを感じさせるところではある。
何故かこの日はカモメの仲間が全く見えず、陸にはツグミはいるものの、海の鳥といえばヒドリガモのつがいがのんびり魚を捕る姿ばかりだ。
入江になっていて如何にも禊にちょうど良いが、港にも良い。今は福岡のヨットハーバーとなっていて数年前のアメリカズカップ日本予選では各国の競技ヨットの母港としても用いられた。
ここには長い時の流れが漂っているようでこんな所はコロナがどうなろうと心地いい気がしている。

写真は順に、1.2.小戸の位置 3.小戸・妙見岬 4.妙見神社入口 5.妙見神社由緒 6.7.妙見神社本殿 8.褶曲地層の露出 9.妙見岬海辺 10.ヒドリガモ 11.遠くを見るツグミ 12.アメリカズカップ日本予選に小戸に集結した各国艇(2016.11)

 

 

  

 

 

 

 

 

 

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