■蟇股あちこち 36 中山辰夫
今月は愛知県岡崎市所在の、伊賀八幡宮(1611 重文)、六所神社(1636 重文)、滝山東照宮(重文 1646)です。
いずれも徳川家に関わる社殿です。
岡崎は徳川家康が生誕した地です。滝山神社境内に創建された滝山東照宮は三大東照宮と称されるともされ、本殿・拝殿・中門・鳥居・水屋などは国の重要文化財に指定されています。
1611 伊賀八幡宮
愛知県岡崎市伊賀町字東郷中86
1470年、松平親忠が、松平氏の氏神として社「八代」を伊賀国より現在の地に移した、これが伊賀八幡宮の始まりとされます。
その後徳川家康が社殿を改築、家光が社殿を拡張、家康を祭神に加えました。江戸時代を通じ、家康の命日である4月17日に将軍の名代として岡崎藩主が代参することが慣習となっていました。
境内にある、渡ることのできない神橋(石橋)、 随身門、幣殿、拝殿、本殿が国の重要文化財に指定されています。
■神橋~神池周辺
■随身門 国重文 建立;1636 三間三戸楼門、入母屋造、前後軒唐破風付 檜皮葺 柱は円柱 頭貫の木鼻は拳鼻 随神が鎮座
正面~背面~斜正面
正面・背面は対称な造りです。どちらにも軒唐破風が付いています。上層が四手先なので頭でっかちの感じがします。
右側面の妻飾
入母屋破風の内部には虹梁と蟇股が見えます。大棟の鬼板には徳川家の三つ葉葵
斜め方向に突き出た尾垂木には力神が座り、軒裏の隅木を支えています。
蟇股
上層の蟇股は彫刻の無い古風なもの
蟇股 10個あります。 龍・虎・鹿等の彫刻 彩色
■手水舎
切妻で銅版葺 蟇股や笈形付の代瓶束の造形がいいです。
■御供所 国重文 桁行五間 梁間二間 一重 入母屋造 檜皮葺
■透塀 国重文 建立:1636 延長42m 檜皮葺
■拝殿 国重文 建立:1636 肩行二間 梁間一間 一重 両下造 向拝一間 檜皮葺 大工棟梁:鈴木近江守長次
屋根の四隅の軒先が長く、軽く反った形です。千鳥破風はむくりがついて少し角張った形状をしています。千鳥の形状がユニークです。
一間向拝の周辺
正面の虹梁は波に泳ぐ鯉の姿を極彩色で描かれた派手なもので、虹梁の木鼻は白をベースにした彩色の唐獅子です。
柱上の組物は青と緑をベースに極彩色に塗り分けられ派手なものです。
蟇股 拝殿の周りに配されています。一部を除き、 総数撮影が難しく、工事報告書より転載します。
■案内板には社殿(拝殿・幣殿・本殿)は権現造とあります。 近かくの六所神社でも見られます。
左が拝殿、右が本殿で、両者をつなぐ屋根が幣殿です。
このように前後に並んだ拝殿と本殿を、幣殿が串刺しにして一体化させたものを権現造といいます。
■幣殿 国重文 建立:1636 桁行二間 梁間一間 一重 両下造 檜皮葺
蟇股が配されています。
■本殿 国重文 建立:1611 三間社流造 向拝付 檜皮葺
妻壁に蟇股、出組、二重虹梁、笈形付大瓶束が見えます。極彩色です。
蟇股
1636 六所神社
愛知県岡崎市明大寺町耳鳥44
創建は松平清康(徳川家康の祖父)の代で、豊田市松平町にある六所神社を勧請したのが始まりとされます。
徳川家の氏神として篤く崇敬され、幕府の保護を受けました。
社殿は江戸時代のもので、整備された境内に国重文の楼門や社殿が並び建っています。
■手水舎
二の鳥居を過ぎ参道を進むと右手にあります。手水舎としては大きく、こった建物です。
■楼門 国重文 建立:1688 一間1戸 楼門 入母屋造 檜皮葺 石垣の上に建っています
五代将軍・徳川綱吉の命で建てられました。
細部
一階と二階 柱は円柱、軸部は貫で固定されています。組物は三手先、一階は組物の間に蟇股を配しています。二階は間斗束です
破風板は黒く塗られ、装飾の金具と懸魚が付いています。
二階枇杷板の彩色
蟇股は4面に配されています
題材は鳳凰や波さまざまです
■神供所 国重文 建立:1636 桁行五間 梁間二間 一重 入母屋造 桟瓦葺 柱は角柱
大部分が無塗装の素木で出来ていますが、頭貫の上の蟇股だけは彩色された彫刻が入っています。
蟇股は四面に、14個配されています。題材は唐獅子、ほか多彩です。
拝殿・幣殿・本殿が一体化しており、三棟とも1636年に徳川家光の命で造営されました。棟梁は遠州大工・鈴木近江守長次です。
伊賀八幡宮と同様の権現造です。
拝殿 国重文 建立:1636 桁行五間 梁間三間 一重 入母屋造 正面千鳥破風 向拝一間唐破風造 檜皮葺 後方で幣殿と接続
細部
向拝と周辺
蟇股 見舎の周りに配せれています。
幣殿 国重文 建立:1636 桁行二間 梁間一間 一重 両下造 本殿と拝殿に接続(権現造)
蟇股
外部中備に配しています。
本殿 国重文 建立:1636 三間社流造 西面 前面に弊社と接続 (権現造) 向拝三間吹き流し 両端獏鼻付
本殿側部 妻飾りと周辺
大虹梁を架渡し浜頭形扠首組、ボタンの彫刻の笈形入り 上部に大斗肘木で化粧棟木を受けています
向拝と周辺
本殿(内部)正面
1646 滝山東照宮
愛知県岡崎市滝町山麓107
岡崎市北部の山間にある滝山寺と隣接して鎮座しています。創建は1646年。
岡崎生まれの徳川家康がよく訪れていたことから、三代将軍の家光の命で、当地に東照宮を勧請されました。
もとは滝山寺の一部でしたが、神仏分離で独立した神社となりました。
境内には多数の文化財があります。本殿や拝殿・幣殿のほか、鳥居や灯篭までも国重文に指定されています。
滝山寺の本堂
右奥が瀧山東照宮の境内です。
全景
■拝殿 国重文 建立:1646 桁行三間 梁間二間 一重 入母屋造 向拝一間 銅瓦葺
■弊殿 国重文 建立:1646 桁行二間 梁間一間 一重 切妻造 全面拝殿に接続 銅瓦葺
境内の中央に位置していますが拝殿と幣殿が一体となっています。
母屋は正面中央が両開きの桟唐戸、ほかの柱間は跳ね上げ式の蔀付です。
□向拝周辺 (向拝蟇股は正面と背面)
柱は角面取り、二本の角柱は極彩色の虹梁で繋がれ、両端の木鼻には唐獅子が彫刻されています。
中備の蟇股は鷹と思われる鳥が彫刻され、軒裏では菊を籠彫りした手挟が垂木を受けています。
□母屋と蟇股 蟇股は母屋の周りに配されています。その一部を並べます。
母屋柱は円柱。軸部や軒裏は赤を基調とした配色です。長押や頭貫、その上の蟇股と組物も極彩色に塗られています。
□幣殿の妻壁
唐草模様の大瓶束が建てられ、その両脇には二羽の孔雀が舞う構図が描かれています。
■中門 国重文 建立:1646 一間一戸平唐門 銅板葺 軒裏はまばら垂木 門扉は両開きの桟瓦葺
門の両脇にめぐらされた石柵は総延長57mとかで、附国重文です
■本殿 国重文 建立:1646 桁行三間 梁間二間 一重 入母屋造 向拝一間 銅瓦葺 附厨子一基 母屋柱は円柱
本堂は中門の下か敷地外からしか見えません。
□向拝周辺
柱は几帳面取りの角柱。虹梁は極彩色で、両端の木鼻派唐獅子。蟇股は鷹とされます。
全体的に拝殿とよく似た構成ですが、本殿は彩色に金マッキが多用されており、その分豪華です。母屋はしら
□妻壁
□母屋廻りの蟇股
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