■蟇股あちこち 49 中山辰夫
日光市には、二荒山神社、東照宮、輪王寺のいわゆる山内二社一寺に大成された伝統的建造物の数々があって現在に受け継がれています。
それらの建造物は、ことさら説明が不要なほどに知られています。
輪王寺の「大猷院霊廟」から始めます。
東照宮の建造技術をそのまま生かし、規模は東照宮より小さいですが、細部の技法に力を尽くし、金彩丹碧は周囲の自然美とも調和し荘厳な佇まいです。
常行堂・法華堂・仁王門・御水堂・二天門・鼓楼と鐘楼・夜叉門を並べます。彫刻の塊です。写せたたものを並べました。
輪王寺 (大猷院霊廟)
栃木県日光市山内2306
大猷院霊廟は、徳川三代将軍家光公を祀る廟所として、四代将軍家綱の下に造営されました。
家光薨去後の1651年ただちに計画立案起工され、1653年に完成しました。造営は全て幕府の直轄管理、大棟梁平内大隅守応勝が造営を担当しました。
南隣する慈眼堂の敷地とともに大黒山の山腹を切り拓き、その地形を利用して造営され、高低差を持った伽藍構成と主要建物の配置に特徴があります。
国宝の本殿、石の間、拝殿はこの霊廟の建築中最も力を尽くした部分で、現在二十一棟が国宝(一棟)及び国重文(二十棟)に指定されています。
東照宮より華やかにならないように、金と黒を使用した重厚で落ち着いた造りで、全体に亘り漆を塗りこれに金箔をおし、或いは極彩色を施しています。
壮麗であって東照宮と共に江戸時代初期を代表する建築です。
二十一棟の建造物は、東照宮の絢爛豪華に対し、幽玄と「さび」、しかも人工の極致の伝統美が自然美の内に溶け込んでいるとされます。
彫刻に軸を置いてまわります。
■境内図
常行堂と法華堂 渡廊下でつながっています。848年に慈覚大師が比叡山の二堂に模して建立されたのが始まりです。
常行堂は和様、法華堂は唐様で造営されています。
■常行堂 国重文 建立:1619 桁行五間、梁間六間、一重、宝形造、向拝一間、銅瓦葺 棟札1枚 常行三昧の道場です。
「支輪しりん」と呼称される斜め格子の飾りは見かけることが少なく目を惹きます。
□細部
■常行堂法華堂渡廊 国重文 建立:1649 桁行八間、梁間一間、東端常行堂に接続、他端切妻造、前後軒唐破風付、銅瓦葺
■法華堂 国重文 建立:1619 桁行三間、梁間四間、一重、宝形造、向拝一間、銅瓦葺 棟札1枚
仁王門は大猷院廟の第一の門で、正面左右に金剛力士像を安置しています。左右の袖塀を含めて国重文です。
■表門(仁王門) 国重文 建立:1653 三間一戸 八脚門 切妻造 銅板葺 高さ3.2m 仁王門の内面にも透かし彫りの彫刻が施されています。
■正面側
仁王門の内部は大屋根の下にさらに2つの屋根が配された三棟造りなっています。三棟造lは法隆寺東大門や東大寺転害門にもある古式な様式です。
このような古式な寺院の建築様式は、幕府の作事方筆頭・大棟梁甲良宗弘が得意とするところとされています。
□正面蟇股と木鼻 「雁」が装飾された蟇股です。
□それぞれの小屋根内部にも蟇股
■背面側
蓮の花と葉の飾り
□蟇股と木鼻 蟇股派3色4体の麒麟 木鼻は唐獅子
□蟇股と木鼻 「野鳥」
□妻飾
両側ともに破風造で、見応えあります。 「麒麟」が描かれています。
■水屋 国重文 建立:1653 桁行一間、梁間一間、一重、切妻造、前後軒唐破風付、銅瓦葺
手水舎です。12本の白御影石の柱で支えています。全体の優雅な形姿と細部の繊細な技法が優れ、東照宮をしのいでいるとされます。
□正面(東面)細部 蟇股は「蓮の花、波模様」
使用されている金具には、透彫の技術が初めて用いられているとされます。
□側面「西面」 妻飾
□天井画 雲龍
天井の竜は狩野探幽の弟狩野安信の筆。日光山第一の傑作とされます。 水面に映る龍の姿を見る
■宝庫 国重文 建立:1653
桁行七間、梁間三間、一重、入母屋造、正面向拝三間、銅瓦葺
二天門は、持国天と広目天を安置する日光の境内でいちばん大きな門です。
■二天門 国重文 建立:1653 三間一戸楼門 入母屋造 前後軒唐破風付 銅瓦葺 左右袖塀
□正面側
左側に持国天、右側に広目天 迫力満点
□背面側
御水舎と相対する石段上にある二番目の門です。八脚楼門入母屋造り。彫刻の数は186体あるとか。
正面左右の柵内に「持国天」と「広目天」の二天を祀ることから二天門の名があります。
又、背面には「風神」と「雷神」を安置しています。もともとは東照宮陽明門に安置されていたとされます。(複製)
■正面全景
□唐破風 「大猷院」の扁額は後水尾上皇の宸筆です。
□組物・組物間
□高欄
□組物間
□高欄
□頭貫鼻
□妻部
鼓楼と鐘楼
夜叉門前に右左に対照的に並んで配置されています。左側が鼓楼、右側が鐘楼です。いずれも重要文化財の指定を受けています。
■鐘楼 国重文 建立:1653 桁行三間 梁間三間 袴腰付 入母屋造 銅瓦葺 銅鐘
細部
■鼓楼 国重文 建立:1653 桁行三間 梁間三間 袴腰付 入母屋造 銅瓦葺 銅鐘
細部
■枇杷板斗栱間中備え彫刻
略配置番付図
□配置状況
□鳳凰彫刻のみ抜粋
夜叉門
夜叉門は霊廟中心部への入口です。左右の回廊とともに重要文化財の指定を受けています。両開きの扉を設けています。四体の夜叉が安置されています
夜叉門 左右廻廊 正面
■夜叉門 国重文 建立:1653 三間一戸八脚門 切妻造 前後軒唐破風付 平入 銅瓦葺 両側面に袖塀が接続:左右廻廊: 各桁行二間 両下造
夜叉門の漆・彩色の塗装技法と様式は、山内の建物の中でも大変特色あるものです。赤、黒、金、緑の四つの色相を基調とし、装飾効果を高めています。
□正面側・
□背面側
正面側より細部を見ます
□正面
□軒唐破風 鬼板・瓦と破風
□彫刻
□頭貫(中央間虹梁下柱頭) 欄間彫刻は地紋彫り 獏彫刻 獅子鼻彫刻
背面側
□軒唐破風 妻大虹梁尻(血紋彫り)枇杷い阿t牡丹彫刻
□組物
□頭貫
□夜叉門内
■廻廊
(左廻廊) 国重文 建立:1635 桁行六間 梁間二間 一重 入母屋造 銅瓦葺
(右廻廊) 国重文 桁行六間 梁間二間 一重 入母屋造 銅瓦葺
朱色が主体の色鮮やかで華やかな廻廊です。
□蟇股: 左右廻廊では内外の蟇股彫刻各26個、両廻廊計52個配されています。
□夜叉門付袖塀 (蹴込・内法上東・西)
□全蟇股一覧 転載
□左右袖塀 欄間
慈眼堂
慈眼大師天海大僧正を葬る墓所で、現在廟塔(石造五輪塔)・拝殿・経蔵・鐘楼・阿弥陀堂の一基・四棟の五件が国重要文化財に指定されています。
境内地は大猷院霊廟南側の大国山中腹にあります。
境内と俯俯瞰
天海は福島県会津高田の生まれで、十一才で出家し、以来比叡山・三井寺・南部興福寺などを廻って修学し、家康・秀忠・家光・の三代将軍に仕えて信任を得た天台宗の僧侶です。衰微していた日光山を復興し、東照宮の造営に手腕をふるい、日光山の再繁栄に尽力しました。
■阿弥陀堂 国重文 建立:1646年 桁行一間 梁間一間 単層 宝形造 銅瓦葺
内部 正面 阿弥陀山尊仏および晃海の壁面刻銘
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