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大分県豊後高田市 天念寺

Tennenji, Bungotakada city,Oita

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六郷満山

Rokugomanzan


Nov.18,2021 瀧山幸伸

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天念寺耶馬と無動寺耶馬のパンフレット

 

名勝

国東半島は大分県北東部に位置し、両子(ふたご)山(さん)(山頂標高約720m)から放射状に伸びる山並みと谷筋に、耶馬渓層凝灰角礫岩の風化と侵食により独特な岩峰の風致景観が形成されている。国東半島の北西部、西に向かって流れる真玉(またま)川が成す谷を挟んで、南に天念寺耶馬、北に無動寺耶馬は所在する。
古来より山岳信仰の場となってきた国東半島では、平安時代後期に天台系修験と結びついて今日に続く六郷山寺院群と険しい山々から成る数々の霊場が形成され、「峯入り」と呼ばれる回峰行を通じて密接な繋がりを有してきた。六郷山寺院群は学問・修行・布教を司る本山(もとやま)・中山(なかやま)・末山(すえやま)に分けられ、それぞれに本寺(ほんじ)と末寺(まつじ)が位置付けられ、中世においてはひとつの巨大な寺院として組織されていた。中山本寺に属する長岩屋山天念寺と小岩屋山無動寺では、古代から中世にかけて背後(北側)に高くそびえる岩山が修行の場として定着し、江戸時代以降、国東六郷満山霊場(国東半島三十三箇所)として名所にもなり、急峻な岩峰に特徴付けられる独特の風致景観は、耶馬渓の景勝に準えて、近代には天念寺耶馬、無動寺耶馬と呼称されるようになった。
天念寺耶馬は、都甲(とごう)谷の奥、長岩屋川の右岸に位置し、標高約120mの河岸段丘上に天念寺の講堂、身濯(みそそぎ)神社の社殿と拝殿が所在する背後の岩山群から成る。山内には、石仏や石塔を祀った忌堂(いみどう)岩屋、小両子(こふたご)岩屋、龍門(りゅうもん)岩屋などの岩屋群や、険しい峯道に針の耳などの難所が古代以来の霊場の風致を伝えるほか、標高200mを超える岩山には、龍ヶ鼻などの岩峰が屹立し、特に高所から深く狭隘な谷を成す部分に架けられた無明橋(むみょうばし)(標高約210m、アーチ状の石造橋)は風致景観上の特徴を成す。長岩屋川の河道中に所在する巨石には中世に水害除けを祈念して刻まれたとされる川中不動(不動三尊像)が風情を加え、毎年旧正月には天念寺講堂で、古代以来伝承されてきたとされる修正(しゅじょう)鬼会(おにえ)(五穀豊穣を祈る修正会と追儺(ついな)式の鬼追いが結びついた火祭り;昭和52年重要無形民俗文化財指定)が行われるなど、永く育まれてきた風土と信仰との結び付きをよく今に伝えている。
無動寺耶馬は、真玉川の右岸に位置し、標高約90mの河岸段丘上に現在の無動寺境内と身濯神社が所在する背後の屹立した岩山(山頂標高約230m)から成り、一枚の巨大な岩壁が聳える様相を呈している。古くは黒土(くろつち)岩屋(いわや)と呼ぶ霊場であったと推定され、現在の無動寺境内の西方約1,300mに位置する下黒土(しもくろつち)の身濯神社の地から江戸時代に移ってきたと伝えられている。天念寺耶馬と同様に、山内には石仏を安置した岩屋とともに、無明橋(標高約170m、桁橋状の石造橋)が所在する。
古代以来の峯道は南側の天念寺耶馬から北側の無動寺耶馬に続き、それぞれ無明橋が架かる附近からは相互の耶馬と谷に広がるかつての坊集落の優れたけしきをよく望見するなど、2つの耶馬の密接な繋がりが風致景観に刻まれてきた。
以上のように、天念寺耶馬及び無動寺耶馬は、固有の岩峰や岩屋、無明橋などから成る優れた風致景観で、古代以来の信仰を通じた密接な連続性を示すとともに、相互に眺望の対象となっている点で顕著な特徴を有することから、名勝に指定して保護を図ろうとするものである。
(文化財データベース)

 

天念寺耶馬で修行 -国東半島の行場は危険だらけ-

文化財の調査は大なり小なり危険を伴う。大分の耶馬渓と福岡の英彦山周辺の山岳地形は史跡名勝天然記念物などの文化財指定にふさわしい険しい断崖絶壁に満ちている。

特に大分県各地にある耶馬渓は国の名勝に指定されているが、絶景を楽しむ場ではなく修行崇拝などの宗教的行為、いわゆる民俗文化を体現する場で、自分は世界遺産にふさわしいと考えているが、その本質的価値を認識している人はほとんどいないのではなかろうか。

今回訪問した天念寺の背後にある耶馬は、修験者、行者、六郷満山の修正鬼会などの当事者しか近寄らない甚だ危険な行場だ。転落事故などが発生したためか、いわゆる不埒な輩や軽装の観光客は入山禁止と警告されている。天念寺耶馬も名勝に指定されている中の一つで、恐怖に満ちた空中架橋の無明橋などがある。

修正鬼絵の峰入り行はほとんど行われなくなり、20年ほど同行調査の機会を探っていたが未だ叶っていない。昨今のコロナ騒ぎでほとんどの民俗文化財的行事が中止となり、峰入りも次回はいつになるかわからない。いつもは麓から仰ぎ見るだけの耶馬だったが、今回初めて行者と同様の峰と岩屋の巡礼を体験することができた。

ジャパンジオグラフィックの理念に従った調査手法は、本来の姿を忠実に調べ、本来の価値をきちんと後世と世界中に伝えることなので、テレビ番組やYouTuberなどとは正反対の、学術と歴史文化を重視した地味な行為だ。安全重視で慎重に調査するが、それでも今回は怖かった。

しつこいようだが一般の方は絶対に立ち入らないでほしい。中津耶馬渓の古岩屋も恐怖に満ちていたが、無明橋を渡る修行はこの世とあの世を繋ぐ結界のような存在で、一歩踏み間違えばあの世へ旅立つほど極めて危険な所だ。今思い出してもぞっとする。

 

 

  

                                                                                                  

 

天念寺耶馬の巡礼

東側から登り西側に下った。かなり危険な登攀。

                                                                                                                                                       



May 23,2019 瀧山幸伸

天念寺周辺

    

    


Dec.2014 瀧山幸伸  source movie

                                      

有寺

       


May 2012 瀧山幸伸 source movie

A camera

                                   

B camera

                                                                 


Dec.2010 瀧山幸伸 source movie

                        

天念寺の上流

                     


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