JAPAN GEOGRAPHIC

滋賀県彦根市 加藤家住宅

Katouke, Hikone city, Shiga

Category
Rating
Comment
General
 
Nature
 
Water
 
Flower
 
Culture
 
Facility
 
Food
 


Jan.31, 2014 中山辰夫

彦根市高宮町1121−1

国登録文化財指定:主屋、一之蔵、二之蔵、三之蔵

■加藤家住宅は、高宮宿の旧中山道に面して建ち、高宮神宮参道と向かい合っている。かつて「布惣」の屋号で高宮布を扱う麻布商だった。

高宮は麻布の集積地として栄えた。この周辺で産出される極細の麻糸で織った高宮麻布は歴史が古く室町時代にすでにその名が知られていた。

産地は犬上・愛知・神崎・蒲生・坂田など今の東近江市近辺の緒郡で高宮の問屋に製品が集積され全国に売り出された。

高宮布の伝統は豊富な軟水、適度な湿気に恵まれて成立った。布惣は大きな問屋で高宮布を全国に宣伝販売していた。江戸時代には彦根藩の保護を受けて大いに栄えた。彦根藩では献上品として高宮布を使った。

7つの蔵があった布惣では、蔵に一杯集荷された麻布がすべて出荷される。それが年十二回繰り返されないと平年でないとされた。

廃藩置県で藩の統制力をなくし株仲間も解散する中で、高宮布は粗製濫造の弊害に陥った。こうした中で布惣の堤惣平が近江麻布蚊帳改会所を設立して高宮布の名誉挽回に尽力した。

しかし明治の中頃からは綿に押され繁栄の幕を閉じ衰退していった。布惣では7つあった蔵は現在5つ残っている。

「木曽路名所図会」や「近江名所図会」に「高宮嶋」「織元」の暖簾を掲げた商家が描かれているが「布惣」とされる。主屋は、歴史ある古民家を学生が改修し、高宮町のコミュニティスペースとして喫茶店を運営している。

ギャラリーも併設しており、月ごとに展示を変えて様々な作品・作家さんとの出会いの場になることを目指している。

加藤家住宅主屋

国登録文化財

構造:木造2階建、瓦葺、建築面積202㎡ 建築:江戸/1830〜1868/1940・2009改修 

解説:中仙道高宮宿中心部に建つ元麻布商で街道に西面して建つ。木造二階建、桁行16.6梁間12.4m、切妻造瓦葺。前面を店舗、背面を田の字型の床上部とする。

正面は、海老虹梁状の腕木や二階の幅広の格子窓など当地方の町屋よく示す。加藤家一之蔵

国登録文化財

構造:土蔵造2階建、瓦葺、建築面積23㎡ 建築:江戸/1830〜1868/2009改修

解説:街道に面して主屋の北隣に建つ。土蔵造二階建、桁行5.4m梁間5.0m、切妻造瓦葺で、入口を主屋の店舗に面した南面に開く。

置屋根とし、扠首組の木鼻に彫刻を施す。主屋と並び建ち、宿場町の歴史的な景観をかたちづくる。加藤家住宅二之蔵

国登録文化財

構造:土蔵造2階建、瓦葺、建築面積15㎡ 建築:江戸/1830〜1868

解説:主屋の背面北側に南面して建つ。土蔵造二階建、桁行3.8m梁間4.0m、切妻造瓦葺で、入口を南面に開く。

小規模ながら丁寧な造りで、軒廻りは桁先を現した塗籠仕上げとする。主屋、一之蔵、三之蔵とともに伝統的な町家の構えを伝える。加藤家主屋三之蔵

国登録文化財

構造:土蔵造2階建、瓦葺、建築面積41㎡ 建築:江戸/1830〜1868

特徴:敷地背面の東南隅に主屋から離れて建つ。土蔵造二階建、桁行8.1m梁間5.1m切妻造瓦葺で、入口を西面に開く。

大規模で建ちが高く、軒廻りは桁先をみせず鉢巻を廻す。主屋、一之蔵、二之蔵とともに伝統的な町家の構えを伝える。その他蔵と蔵の中

 ■加藤家その周辺

加藤家の周辺は、旧中山道沿いは古民家が並び宿場の、元宿場の雰囲気を残している。

さらに旧中山道から一歩路地に足を踏み入れると蔵や古民家が並び建ち目を惹く。それは高宮寺周辺にまで及ぶ。

このあたりは宿場の時代から高宮の中心区域であった。

今も蔵が集中している理由は?彦根市文化財課に問い合わせたが、わかりませんとつれない返事!残念です。

音瀬酒造場

高宮町1079

高宮に古くからある酒造場。猩々菊という銘柄で、猩々とは酒が好きな想像上の動物で謡曲や能にも出てくる。

さらに続く蔵、蔵、蔵

≪参考≫高宮布について

機織と麻布単

 中世・近世の近江麻布の資料

記録として、1449(宝徳元年)頃、諸国の神官が京都吉田家を訪ねる時の土産品に高宮布を用いた。1516(永生13)年京極高清が「細美五端」を幕府に献上した。1548(天文17)年、佐々木六角が高宮布10端を本願寺の証如に贈っているなどがある。近江で麻布を製織していたことを証する最古の資料 「1548(天文16)年」

上記の記録で、佐々木氏の元服用の朝の紋服が、金剛輪寺の近くの機織りに命じて調製せられたらしいことが分かる。多賀大社所蔵の文書 豊臣秀吉が朝鮮征伐に出た時、神官が陣中見舞いとして御祈祷札とともに帷子五反を贈ったことに対する秀吉の礼状

 高宮布を扱って大成した近江商人

幕府へ高宮布を献上したことに関する文書 毎年幕府へ高宮布を献上した詳細な記録である。

木曽路名所図会 1805(文化2)年

近江名所図会 1814(文化11)年

木曽路名所図会 野洲さらし

参考資料≪近江麻布史、国文化財データーベース、他≫

 All rights reserved 無断転用禁止 登録ユーザ募集中