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島根県奥出雲町 奥出雲たたら製鉄及び棚田の文化的景観

Tatara and tanada cultural landscape,Okuizumo town, Shimane

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May 28,2017 瀧山幸伸

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島根県仁多郡奥出雲町上阿井、竹﨑、大呂、中村、大谷、大馬木の各一部

 天平5年(733)に編纂された『出雲国風土記』の仁多郡(現在の奥出雲町にあたる)の条に三所(みところ)郷(のさと)・布勢(ふせの)郷(さと)・三沢(みざわの)郷(さと)・横(よこ)田(たの)郷(さと)あわせて4郷が所在し、「諸郷(もろもろのさと)より出(いだ)すところの鉄(まがね)堅(かた)くして、尤(もっと)も雑(くさぐさ)の具(もの)を造(つく)るに堪(た)ふ」と記している。

このことは、その当時から盛んに製鉄が行なわれていたことを示すとともに、当地方で産する鉄の優秀性を物語っている。そして、今日もなお世界で唯一“たたら製鉄”の炎があがる町として全国に周知され、その技術は国選定保存技術に選定されている。

歴史的に見ると、近世・近代にかけて奥出雲地域は、我が国の鉄生産の中心地として隆盛を極め、たたら製鉄で栄えた地である。

また、松江藩の鉄政策により、櫻井(さくらい)家、絲(いと)原(はら)家、ト蔵(ぼくら)家という大鉄師(だいてつし)(たたら経営者)を産みだし、櫻井家住宅は国重要文化財に指定され、絲原家住宅は登録有形文化財に登録されるなど、鉄師頭取の佇まいを今に残している。

中国山地脊梁部は、地質的に良質な砂鉄(磁鉄鉱)を多く含有する地帯であることから、丘陵を切り崩し水流によって比重選鉱するという「鉄(か)穴流(んななが)し」が広範囲に稼業された。

この鉱山跡地(鉄(か)穴流(んななが)し跡)は豊かな棚田に拓かれ、今日において、生産米は「奥出雲仁多米ブランド」となっている。

また、山林は、たたら製鉄用の燃料木炭林として旺盛に製炭活動がなされたが、永続的に循環できるよう約30年周期で輪伐しながら保全してきた。

このように、本町の文化的景観はたたら製鉄の歴史とともに形成されてきたものであると同時に環境共生・循環型であり、世界に類のない鉱山跡地に形成されたものである。

そして、鉄(かん)穴(な)横手(よこて)(水路)や特異な鉄穴残丘が点在する棚田が広がりをみせる農山村集落の背景に、かつて鉄山(てつざん)(たたら製鉄用の木炭山林)であった山々が取り囲むという特色ある文化的景観を形成してきた。

今日の文化的景観を見ると、鉄穴流しのために導かれた鉄穴横手(水路)は、現在も農業用の潅漑用水路として引き続き使われており、基本構造はそのまま踏襲されている。

また、墓地や鎮守の杜が所在したことにより流さず残された丘陵部分は「鉄穴残(かんなざん)丘(きゅう)」として良好に保存されるなど、たたら製鉄を背景とする文化的景観が保存継承されている。

地域住民は、自治組織での道路愛護活動、環境美化活動はもとより、先人から受け継いだ歴史的建造物の維持管理や伝統行事も鋭意継続している。また、全国的な広がりを見せる耕作放棄地も少なく、営農意欲は旺盛で、棚田の維持管理が行われている。

さらに、学校教育においては、たたら製鉄を総合的に学習するプログラムがつくられつつあり、「たたら・炭焼き・鉄穴流し」の実体験活動やフィールド学習(文化的景観)から本町の歴史文化を知り、郷土を愛する心が育まれている。

これらが、結果的に文化的景観を保存することにもつながっており、保存継承の環境が整ってきている。

以上、今日まで良好な状態で保存されてきた文化的景観は、これまでの景観形成過程で同時につくられた地域の伝統とルール(慣習)によって守られてきたものであるといえる。

奥出雲町は島根県の東南端に位置し、鳥取県と広島県との県境にあたり、中国山地脊梁部の中央、山懐に抱かれた山間地域である。

このため豊かな自然が残り、取り囲む山々は、四季折々の彩りを見せる。

また、歴史的にみると風土記時代から連綿と砂鉄をとり、炭を焼いて、たたら製鉄を行なってきた地である。

そして、近世から近代初頭まで、我が国の一大鉄生産地帯として隆盛を極めた。

この間、中国山地より派生するなだらかな山麓丘陵地が、砂鉄採取のために稼業された「鉄(か)穴流(んななが)し」により切り崩し流され、本町の地形変貌に与えた影響は多大である。

一方、中国山地の尾根に広がる豊富な山林資源は、たたら製鉄が永続操業できるよう、約30年周期で輪伐することにより保全管理されてきた。

林野に分け入ると無数の炭窯跡が残り、往時の製炭風景を偲ぶことができる。

本町の基幹産業は農業であり、この農業基盤をつくりだしたのが鉄穴流しである。奥出雲町横田地域の3分の1以上が鉄穴流しを起源とする棚田である。

これには、流し込み水田等の判断が難しいものは除外されており、このことを踏まえて考えると、本町の農業基盤は鉄穴流しに負うところが極めて大きいといえる。

このように、本町の文化的景観特性は、当地方の豊かな山林資源と地質的に風化花崗岩地帯であったという恵まれた自然環境のなかで、たたら製鉄という歴史的背景により拓かれた棚田が広がりを見せる景観構造となっている。

ここに、鉄師(てつし)頭取(とうどり)の佇まいや山内(さんない)(鈩場及び労働者住居が一体となった区域)、登録有形文化財鳥上木炭銑工場などの遺構、鉄穴流しで拓かれた棚田及び農山集落が有機的に結びつき、景観を形成している。

(奥出雲町)

  

A-1小万歳集落 羽内谷

                             

A-2追谷集落

卜蔵家

Sakodani Bokurake

卜蔵家庭園

                                

たたら山内

                                      

    

A-3山県集落

日刀保たたら

Yamagata Nittoho

                                  

  

A-4福頼集落、蔵屋集落

Fukuyori/Kuraya

                                        

A 稲原、原口集落

Inahara/Haraguchi

                         

B-1旭集落

大原新田の棚田

Asahi Ohara shinden

           

B-2雨川集落

絲原家

C-1真地集落

櫻井家

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