■ 「鉄、石炭、その他鉱物」の歴史を学ぶ文化財巡り 瀧山幸伸
金銀銅と来れば、鉄や石炭その他の鉱物に関連する文化財を紹介するのが順当だろうが、なにしろ数が多いので個別に文化財索引を調べて訪問してほしい。鉄だけでも、中国山地に散在する古代の製鉄遺跡から世界遺産に指定された近代の釜石橋野製鉄遺跡、福岡の八幡製鉄遺産まで数が多い。
古代の製鉄遺跡で見逃せないのは出雲のたたら製鉄関連遺産だろう。水木しげるが描いた妖怪やジブリのもののけ姫のモチーフがここにあることは容易に察しが付く。砂鉄を採った跡に出現した奥出雲の棚田は鉱業と農業が調和した稀有な事例だ。
近代の製鉄遺産と石炭関連遺産は密接につながる。石炭関連遺産は九州から北海道まで数が多い。長崎市のグラバー邸や高島炭田、端島(軍艦島)、あるいは三池炭鉱遺産、福岡県飯塚市の伊東伝右衛門邸などは有名だが、福岡県築上町の倉内邸、佐賀県唐津市の高取家住宅などはドラマ関連で多くの人が視聴しているにもかかわらず現地文化財との関連はあまり認知されていない。北海道の炭鉱遺産に至っては夕張の町おこし失敗事例も尾を引いて盛り上がりに欠けている。現代を考えれば、常磐炭鉱のあとがまとして陳情招致された福島原発の惨事は来世紀には必ず産業遺産となるだろう。
その他の鉱山、例えば火山周辺の硫黄鉱山や鉱毒の歴史を背負った鉱山は、徹底的に負の遺産を表に出して活用すべきだ。
廃墟には廃墟なりに社会教育目的などローコストの活性化策がある。近年とみにSDGs(Sustainable Development Goals)が騒がれているが、この問題は人類の歴史、特に文明の盛衰や戦争の根幹であり、今に始まったことではない。SDGsのあり方を学ぶには、Unsustainable Development Hiostoryを学ばなければならない。 詳しくは持続可能都市(サステイナブルシティ)に関する研究を参照いただきたいが、世界遺産のみならず国の史跡に指定されている多くの文化財を巡れば解決策が見えてくる。まずは若者から気づきはじめ、為政者や経済人は最後まで抵抗勢力となったしがらみを引きずるのだろう。
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