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12月22日(木曜日)

夜半に風がさらに強くなり、ピーピーと笛のような音が鳴る。

音の高さから思うに、水道管程度の細いパイプの穴が風に鳴っているのだろう。

天然のフルートだ。興味ある現象だが、うるさくて眠れない。

7時過ぎ起床。あたり一面真っ白の世界。

風呂には誰も居ない。露天風呂から眺める天草橋と雪景色が素晴らしい。

こんな影像はめったに撮れないだろうな。

海の向こうに雲仙が垣間見える。裾野の海際まで真っ白だ。

この白さと海の青さ、松島の緑のコントラストが美しい。

今日は困った。フェリーは昨夕から欠航中。

やむなく、ゆっくりと準備をして本渡に。途中渋滞かのろのろ。

 本渡 祗園橋

Hondo Gionbashi

日本一古い石造りの橋。アーチが美しい。

天草の乱、激戦の地でもある。

ようやく島鉄フェリーが動き出した。

 鬼池港から島原半島の口之津へ

Oniike to Kuchinotsu ferry

波が高く船が横揺れする。

 原城跡

Hara castle

島原の乱終焉の激戦地、原城跡へ。

海にせり出した天然の要害。殉教者の行動は崇高だ。

この地で、キリシタンの老若男女3万人以上が命を落とした。

その中には幼い子供も多数居ただろうに。

昔も今も、権力の犠牲者はいつも弱者だ。

愛する家族がこのような事態になったらどうしよう。

最近では、原爆や空襲で命を落とした人々、この方々も権力の犠牲者と言えるが、第二次世界大戦は選挙で選ばれた権力が戦ったわけだから、江戸時代のように不可避ないくさではなかった。

さて、未来の権力者は我々に何を仕掛けてくるのだろうか。

さらに考えれば、今のVisit Japanキャンペーンの本来の目的は何だろうか。

世界から観光客に来てもらって景気を良くすることだけではなく、日本のナショナルセキュリティ、平和活動すなわち本来の戦争予防策ではなかろうか。

岡倉天心の教えを受け、日本文化を深く愛した米国人ウォーナーが、京都への爆撃をやめるよう大統領に手紙を書いたおかげで、千年の都が救われた。良い教訓だ。

例えば、大統領の一人娘が日本を好きになり、日本の青年に嫁いだとする。

そして、多くのアメリカ人が日本を好きだったとする。

嫁ぎ先の日本に、先の対戦のような行動を起こすだろうか。

大統領は娘の住む町に原爆投下命令を出すだろうか。

世界中の人々が、せめてネットでお互いの素顔をしることは、ゆがめられたマスコミや教科書を鵜呑みにするよりははるかに健全だ。

Japan-geographicのミッションの一つも国際理解の一助となることにある。

自分と家族は、自らの手で守らなければならない。

Think for the best, prepare for the worst. 

格言だ。

口之津の割烹で昼食。エビフライとさつま揚げの定食。

 小浜温泉

Obama onsen

道路の両脇から湯気がもうもう。

旅館の煙突からも、もくもく。

町中湯気で覆われている。

雲仙温泉に行きたいが、ここでも雪があるのに、山の上には無理だろう。

やむなく諫早へ。

橘湾は波が高いが、いつ見ても青い海が素晴らしい。

夕焼けが綺麗でロマンチックだろうな。

つれあいと二人でサンセットを見たいものだ。

 諫早 眼鏡橋

Isahaya Meganebashi 

この橋はかなり大きい。以前の橋を公園内に移築している。

文化財が今日ほど評価されていない頃、移築してでも橋を保存した市民の見識の高さに敬意を表する。

橋はそのまま保存し、近くに新しい橋を架ければ、なお良かった。

背後にうっそうと茂る暖地性樹林が素晴らしい。

長崎に入る。

昔は寒漁村だったが、当時の村人は今日の発展を想像できただろうか。

 長崎 旧本田家住宅 

Nagasaki Hondake residence

茅葺屋根には一面の雪。背後の屋敷林の緑。壁の茶色。

3色のコントラストが、おりからの夕日を浴びてこの世のものとも思えないほど美しい。

家の中から外を眺める。雪花が舞う。この瞬間に引き合わせた天使に感謝。

昨日今日と、キリシタンに縁がある。

天草の乱と原爆の犠牲者のことが頭から離れなかったが、ほっとする光景だ。

 長崎 眼鏡橋

Nagasaki meganebashi 

諫早に比べれば小さい。

水が少し濁っているのが気になる。

確かに、水面に反射する姿は丸眼鏡だ。

今夜は何処に泊まろうか。

ホテルで一人は寂しい。

温泉宿は無いものか?

愛用の宿泊表を繰ると、唯一の温泉、道ノ尾温泉があった。

が、よく調べると日帰り温泉だ。

温泉に入って、雪が降るかもしれない寒空に車で寝るか。

ホテルか旅館で、真水の風呂に入るか。

難しい選択だが、温泉に一票。

食事は近所の西友内日本料理屋で。

鯛かぶと煮、てんぷら、刺身などの定食1800円に、特別にアラカブの味噌汁を追加してもらった。

アラカブは当地の魚。大いに満足。

温泉は、いわゆる銭湯に近い。今日は冬至なのでゆず湯。

ここで車中一泊。

20夜。朝見れば半月だろうが、雲に覆われていて月は見えないだろう。

明日は夜明けから長崎の文化財取材だ。

2年前に取材した所の他にもかなりの数が残っている。

なぜこのようにたくさんの文化財を追いかけるのか、と問われる。

答えは単純だ。

国際貢献、教育教養目的もさることながら、掘り出し物を見つける喜びとでも言おうか、たくさんの中から、素晴らしい環境と芸術を備えた文化財を見つけた時の喜び。

多くの文化財をこの目で確かめて、評価することは、達成感のある作業だ。

そういう意味では、全国各地に恋人探しをしているようなものかもしれない。

数を見ないと、良し悪しが判断できない。そして、量は質に転換する。

気に入った所は何回も訪問する。

その季節、時間、日差しや風、気温、周囲の音などに従い、いつも違う印象を持つ。

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