MONTHLY WEB MAGAZINE Feb.2012

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■■■■■ 奈良でデジカメを忘れた話など 野崎順次

この間の日曜日に家内と奈良に行った。

家内のペースに合わせて朝遅く家を出て、午後1時30分から東大寺ミュージアムのある総合文化センターで森本総長の東大寺学講座「大仏開眼会を考える」に出席した。

家内と一緒に出かけると日程が遅れがちでイライラするが、何とか時間に間に合うから不思議だ。

で、おまえは悪運の強い女だと言っている。

JR奈良駅前近くの三条通りで軽い昼食をとり、近鉄奈良駅からタクシーに乗り、センターの裏に着いたのが開講5分前だった。

鹿の写真など撮りながら会場に飛び込んだ。

鹿がよく太っている。

特に雌鹿はお腹に子供がいるそうだ。

森本総長は淡々と語られるが、面白い。

開眼法要が大規模で華麗であったことにいまさら驚いたが、実際に開眼師が吊り上げられて大きな筆で眼を入れたことは想像もしなかった。

その筆が正倉院に残っているそうだ。

講義が終わってもう3時15分である。

次の予定は(未だ家内が行っていない)今西家書院(見学受付午後3時30分まで)と福智院(拝観午後4時30分まで)で制限時間がきつく一刻も早く行きたいが、家内はミュージアムショップで何やら買い物していた。

センターの裏通り(北側の道)でたまたまタクシーが客を降ろしたので、そのタクシーを捕まえた。

いつも、家内は奥に座るが、何故か、私が奥に座った。

少しの時間も惜しいので、先に素早く乗り込んだようだ。

その時、左手にコンデジ(CANON IXY 31S)を握りしめていた。

今西家書院に着いて家内が降り、コンデジをシートの上に置き、左手で財布を取り出しお金を払った。

いつも座席に忘れ物がないか見ているのにこの時に限って見なかった。

こうしてタクシーを降りてから20秒後にコンデジを忘れたことに気付いた。

タクシーはもういない。

これまで2回ほどコンデジを忘れたことがあるが、戻ってきたためしがない。

恐らく、次のお客さんが気付いてポケットにしまい込むだろうと悲観的にあきらめかけた。

しかし、家内と今西家書院の案内レディ(少し年配の方と若い清楚な娘さん)はあきらめない。

奈良のタクシーはだいたい近鉄かカイナラだから、会社に電話して全車に無線で聞いてもらえばよいという。

タクシーのボディの色で会社名が分かると言う。

私は全く記憶がないが、家内が明快に「ベージュ」と断言した。

ベージュならカイナラですと年配の方が会社に電話して10分後にコンデジが見つかった。

後で聞くと運転手さんが次のお客さんを迎えに行った時に後座席で見つけてくれて、(私たちが誕生日祝いの夕食を奈良ホテルで食べる話を聞いていたので)奈良ホテルに届けておこうと思ったそうだ。

親切な運転手さんは直ぐに今西家に届けてくれたので、ついでに福智院(僅か300mの距離)まで送ってもらった。

その頃になってポケットの中にそのタクシーのレシート(会社の電話番号入り)があるのに気付いたが、いまさら誰にも言えることではない。

即座に記憶喪失の箱に収めた。

福智院の地蔵菩薩は魂の入った現役の仏像で、未だにご利益あらたかだそうだ。

肺がん末期の人が拝むとしぼんだ肺が復元してお元気になられたとか。

それはさておき、ずっと見上げていると心に深く感じるものがある。

家内はお寺の娘さんの説明に聞き入っていた。

奈良ホテルはもう暗かったので、あまり写真は撮れなかった。

おおらかなホテルで、誰でも座れるソファが1階にも2階にもあり、お客様の迷惑にならない限り、内部の撮影はOKのようだ。

帰る頃には奈良公園は真っ暗で人通りもなかった。

もう急ぐことはないので、JR奈良駅まで歩いた。

途中で見た興福寺五重塔のライトアップが寒そうだった。

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