MONTHLY WEB MAGAZINE May 2013
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トピックス
■■■■■ 遥かなる隠岐 瀧山幸伸
5月分の新着ページを参照してください。
遠隔地の調査は遠い場所から順に進めていますが、九州四国の1回目の調査はほぼ終わり、中国地方では山口県と島根県がほぼ終わって、今回のゴールデンウィークは島根県で残っている隠岐諸島と広島県の文化財を訪問しました。
隠岐へは、天候が良ければ行ってみたいな、との軽い考えだったものですから、宿泊施設と足の便に苦労しました。
七類港からフェリーで車を運ぼうとしたのですが、運賃支払いにカードが使えないのです。
運賃も高く、現金の持ち合わせが数千円不足しましたが、まさか港にも近くの村にも現金を引き出す施設が無いとは。
うんと遠くのコンビニにもATMは無く、あせりました。個人観光客に冷たいかな。海外の秘境だと考えれば納得ですが、せめてホームページに目立つように書いて欲しかった。
迫り来る出航時間にギブアップとなり、やむなく車を置いて一般乗客として乗り込みました。
現地でレンタカーという破目になったのですが、そのレンタカーも予約で一杯。
結果的には空きが出てなんとか細切れでレンタカー(なんと軽トラックも!)を使いましたが、一部はどうしようもなく、不便なバスや2時間の徒歩苦行と、重い機材を抱えて「点と線」のような旅となりました。
宿泊施設探しにも難儀をしました。電話をかけまくって民宿になんとか滑り込み、結果的には期待以上のおいしい食事と親切な宿の方々との交流で幸せな旅となりました。
これほどの苦労をしても隠岐の自然と文化は素晴らしく、訪問する価値があります。
特に島前は世界的にも珍しい沈降カルデラであり、ジオパーク登録を狙っています。中央火口丘の溶岩ドームに鎮座する焼火神社にも驚かされました。
摩天崖や赤壁では、断崖絶壁を見下ろせるようにカメラを空中に2mほど突き出して撮影した動画の怖さと臨場感は半端ないです。
一方の広島県でも船を乗り継いで交通便の悪い島々を巡りました。
しまなみ海道周辺で訪問地として残っている因島、向島などは便利ですが、愛媛県に属する岩城島、弓削島、魚島は大変です。時刻表とにらめっこしながらなんとか訪問することができた。
島旅は費用も時間も負担が大きいですが満足度は数倍は濃いですね。観光ツアーは便利で安いですが同じ感動は得られません。
今年は関東以西では桜の開花が早く、満開に合わせての旅行の段取りが難しい年でした。
逆にG.Wになっても青森 弘前城の桜は満開となっていないようで、季節の変化に異常が起こっているのではないかと危惧すらしています。
そんな2013年も大好きな桜をあちらこちらと尋ねました。
三月末の茨城県桜川市の桜川の桜に始まり、三春の滝桜で終わった今年の観桜紀行をスライドショーにまとめてみました。
4月15日に下賀茂神社に行きました。深かい境内(糺の森)は新緑に覆われ、普段と違ったみずみずしい神域を感じさせました。
5月15日は葵祭です。
葵祭はわが国最古の祭とされ、飛鳥時代に始まり、斎王代を中心に、優雅典麗な王朝人の行粧が千年の夢の世界へと誘います。
祭に登場する女性は十二単を身に着けます。
葵祭の先陣となる「禊之儀」は上賀茂神社と下賀茂神社で交替々に行われ、下賀茂神社ではここで行われます。
禊之儀
(賀茂御祖神社発行の「葵祭」平成24年度から引用)
昨年の第56代斎王代の金井志帆さんも、「禊之儀の日に、初めて十二単に袖を通した瞬間は忘れることができない。十二単の一枚一枚の色彩
の美しさに感動すると同時に、その重さから歴史の深さを感じ緊張の気持ちで胸が一杯だった」と語っておられます。
斎王代 (賀茂御祖神社発行の「葵祭」平成24年度から引用)
重要文化財「三井神社の舞殿」で十二単衣の着付けを鑑賞する機会を得ました。
■十二単衣着付鑑賞
5月15日の『葵祭り』では、530人程の男女が着物を身につけるとのこと。その着付はしきたりにのっとった手順通りに行われるようです。
4月から5月にかけて撮影したものをダイジェストにしてみました。
4月12日
日吉大社日吉山王祭(滋賀県大津市)
午の神事
4月13日
同じく日吉山王祭
宵宮落し神事
4月21日
松尾大社神幸祭(京都市西京区)
連休中の撮影は花や自然が中心でした。
4月27日
長岡天満宮のキリシマツツジ(京都府長岡京市)
4月28日
天滝(兵庫県養父市)
加保坂ミズバショウ公園(兵庫県養父市)
竹田城(兵庫県朝来市)
4月29日
深泥池(京都市北区)
5月4日
鎌掛のホンシャクナゲ群落地(滋賀県日野町)
近江八幡
5月6日
南山城の重要文化財建造物群
神童寺、天神社、松尾神社、御霊神社、相楽神社(木津川市)
春日神社(精華町)、白山神社、佐牙神社(京田辺市)
荒見神社、水度神社、久世神社(城陽市)
なにか本編のアップ前の予告みたいになってしまいました。
福岡市の西隣の糸島というところが魏志倭人伝にも登場していることもあり多少気になっていて折を見て出かけねばと思っていた。
たまたま近所の親切な方から糸島に行ってきたお土産においしいおさかなを頂いて家内が糸島に遊びに行くのに随分と乗り気なったこともあって、出かけた。
自宅から直線距離では20km程で旅行というほど大げさなものではない。
まずは歴史資料館にいかねばと糸島の平野に入ると ぐるりを高くも無い山に囲まれている。
奈良盆地の雰囲気がある。生活にも防衛にも交易にも便利な地形のようだ。
神武東征は歴史そのものではなくとも歴史のある真実を伝えているのだろう。
1-3世紀頃に倭の主要な都市であった伊都国で育まれていた文化は人とともに東へと波及していき、拠点とする場所も似た雰囲気のところを選んでいったのだろう、そんな風にも思ってしまう。
歴史資料館には糸島で50年近く前に農作業中に発見された平原遺跡の出土品として多数の銅鏡をはじめとする副葬品が展示されていた。
全てが国宝となっていて圧倒的だ。
伊都国には王がいたと魏志倭人伝にも記されており王家の墓だったのだろう。
次第に伊都国の重さを感じてくる、予想以上だ。
資料館を出て近くにあるその平原遺跡に行ってみる。
思いの外小さい遺跡で王家の墓に似つかわしくない気もするが古墳時代の前はこんなものだったのだろう。
糸島では旧石器遺跡も発見されておりこの地域には非常に古くから人が住み続けている。
こじんまりとした平野だがそれが生活を営むのにちょうど良いサイズだったのかもしれない。
ついでに近くの神功皇后を祭る高祖(たかす)神社にも訪れてみる。
怡土城(奈良時代、吉備真備が築城したという山城)を13世紀に再利用した高祖城建造とともに設置されたともみられ、17世紀に修理された社殿が残っている。
いずれにせよ古い神社だ。しかしあたりの遺跡に比べれば新しいように思えてしまう。
ドルメン遺跡などまだまだ興味深い遺跡は他にもあってとても回りきれない。
糸島の地は歴史を辿って遊ぶのに事欠かないように思えて、しばらくは楽しめそうだ。
さかなの調達も大事だと、走り回ってさかなを求めて戻る。今の時期特にイカがいいようだ。
食べるものも含めて糸島は随分と手ごたえのある場所だった。
糸島の直ぐ向こうには唐津の美しい浜もある、名護屋城の歴史もある、その先には平戸もあるし五島もある、尽きない。
仕事を終えて福岡の地に移り住んで2ヶ月と少しが過ぎた。
この先楽しくも忙しい日々が広がっているような気がしている。
■■■■■ 京都のお好み焼屋でフランス人の落語家に出会った話 野崎順次 source movie
京都東山のウェスティング都ホテルから三条通りの坂を少し下ると(京都で下ルと云うと南へ行くことだがここでは文字通り坂を下る)と「ぼんぼり」というお好み焼きと鉄板焼きの店がある。先月の21日(日)午後1時過ぎに初めてこの店に入った。すごくおいしいか、少しまずいかのどちらかなと思ったが、幸い、前者であった。お好み焼の定番、豚玉を食べたが、キャベツ多めのサイズ大きめで、マヨネーズははなから無いし、しかも花ガツオではなく粉末ガツオで、なかなか美味しい。思わず「トレビアン」と叫びそうになったら、フランス人の先客がいた。
4人連れで、3人がフランス人、一人が日本人。右端から詳しく言うと、日本人女性(A)、三日月風仏男性(B)、日本語の流暢な仏男性(C)、ごく健康そうな仏女性(D)。
焼きそばから始めて、お好み焼きを食べ、生ビールをお代わりしている。なかなかの健啖ぶりでお箸の使い方もうまい。CがAとBの両女性に気遣いながら、早口で通訳している。それまで無口だった店のおばさんが突然Cに「どの落語家が好き?」と聞くと、「三遊亭で、テレビには出ていないので、あまり知られていないが、竜楽(りゅうらく)がいい。」という。何やら「通」である。というわけで、私たちも話しかけてよく聞いてみたら、Aの日本人女性はCの奥さん、Bはフランス語で落語をする人、Cは日本語のアマチュア落語家、Dは演出家・作家。
その後、インターネットで調べてみた。BとDも夫婦だった。
まず、日本語のうまいCは、尻流複写二(シリル・コピーニ)。1973年に南仏のニースで生まれ、高校時代に日本語の勉強を始め、その頃より日本の古典芸能である落語に興味を持ち始める。1997年9月に来日し、2010年大阪での落語家・林家染太との出会いをきっかけに本格的に落語を教わる。2011年に開催された「落語国際大会」に出場し3位を獲得。外国語で落語を演じる三遊亭竜楽のフランス公演のコーディネートや通訳で同行し、落語の海外普及にも積極的である。
細面で顎のとがったBは、ステファン・フェランデスStephane Ferrandez。彼は2009年、京都にある関西日仏交流会館ヴィラ九条山にて、フランス外務省とキュルチュールフランスが日本で実施する、アーティスト・イン・レジデンス・プログラムで滞在しながら、落語の師匠に弟子入り。6ヶ月ほど基礎を学んで、演出家サンドリーヌ・ガルブグリアSandrine garbugliaと「フランス語で落語」スペクタクルを作り上げた。彼らは初の外国人落語家、ヘンリー・ブラック(英国人1858?1923)の英語で書き残したネタをもとに、フランス語の口語に翻訳したものも含め、ネタを増やしつつある。「時うどん」もできるそうだ。
Dの女性はステファンの妻にして演出家・作家のサンドリンヌ・ガルブグリア。1974年ブロン・メニル生まれで、両親はイタリアのサーカス団員。若い時から演劇に対する情熱を抱き、演劇を教え、2006年にはカンパニー・バラボルカを結成した。2009年度ヴィラ九条山に招聘され、帰国後は落語の演目をフランス語で演出することに専念した。
この日は京都市国際交流協会で、「フランス語で落語」ツアーの緊急京都口演があり、その直後の昼食時に出会ったのだった。
次の機会にでも、是非、二人の噺を聞かせてもらいたい。
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編集 瀧山幸伸
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