Monthly Web Magazine September 2014

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■■■■■ 災害と自然現象 大野木康夫

久しぶりに晴れた9月の週末、家内と一緒に若狭に行きました。

明通寺では、国宝の本堂、三重塔の端正な姿を鑑賞しました。

お寺の下を流れる松永川では、重機が入って、崩れた護岸を修復していました。

今年の夏の集中豪雨では、福井の嶺南(若狭地方)でも河川の増水等がニュースで報道されており、実際に現地に行くと、このようにあちこちで被害が出ているのを目にします。

次に神宮寺を拝観しました。

神宮寺から、お水送りが行われる遠敷川の鵜の瀬に行きました。

鵜の瀬の手前で河川工事が行われていましたが、護岸に損傷はないようでした。

しかし、鵜の瀬に下りてみると、あたり一面で、生臭いにおいがします。

よく見ると、しめ縄が張られている屈曲部に堆積している土砂の量が明らかに増えています。

しめ縄をよく見ると、以前は3つあった房が1つなくなっており、紙垂(しで)もほとんど残っていません。

以前撮影したしめ縄

どうやら鵜の瀬は豪雨で水没していたような気がします。

最後に、蘇洞門めぐりで奇岩や洞門などの景観を楽しみました。

ここでも、底が見えない「地獄門」と呼ばれる洞窟の入口が、昨年の台風の際のがけ崩れで埋まってしまっていました。

ほかにも、海蝕崖のあちこちでがけ崩れの跡が見られました。

訪問した名所のすべてで豪雨の被害の後を目にして、京都の自宅に帰る途中、滋賀県高島市から大津市にかけて通った国道367号は、数箇所でがけ崩れや路肩崩壊によって片側交互通行となっていました。

運転している私は見られなかったのですが、助手席の家内が、沢のあちこちで大規模な崩落がおこっていると言っていました。

昨年あたりから、集中豪雨による土砂災害が各地で起こり、多大な被害をもたらしています。

マスコミの報道で知ることができるのは、人的被害が起こったり、交通が遮断されたて生活に影響が出たところが中心ですが、山岳国家である日本の各地で、報道の対象とならない崩壊が起こっているのでしょう。

道路や河川、人里に影響があるところへの対応は、生活や次の災害に備えて可能な限り迅速に行われますが、蘇洞門の地獄門ような景観だけのところは復旧の対象とはなりません。

そもそも土石流も含めて侵蝕作用なので、今の世に存在する自然景観はそれらの積み重ねによって形作られたのです。

それが人間の生活に影響を及ぼした場合に、災害と呼ばれるようになるわけで、二次的なものも含めて人の営みに影響がある部分は復旧などの対策を行うとして、蘇洞門のがけ崩れなどのそうでない部分については、むしろ復旧を行わないのが正しいような気がします。

ただし、重要な観光資源として手入れが行われている自然景観(天橋立など)については、人間の手が入った状態を「文化的景観」として保全するということなので、観光なども含めて生活に影響するとして復旧するということでしょう。

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