JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Sep. 2021

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■■■■■ Topics by Reporters


■ ダイジェスト版ビデオの作成は辛い 瀧山幸伸

ここ2か月はコロナと酷暑と世界的な運動会が重なって外出はほとんどできなかった。そこで、過去に蓄積した動画を地域ごとにダイジェスト版として編集しようと思い立った。

今までに千本以上の動画を編集したが、そのほとんどは単一の対象地なので、自ずと深く狭い内容となっており、目が肥えた人には大いに歓迎されるが、初心者には内容が重すぎるかもしれないから、初心者向けにダイジェストビデオが必要だろうとの考えからだ。

試しに北海道と京都を対象に作業してみたのだが、予想外の苦戦を強いられている。まず、素材のビデオをアーカイブのハードディスクから集めるのがとんでもなく重労働で、頻繫にハードディスクの電源のオンオフを繰り返すからかハードディスクがやたら壊れる。その都度バックアップから復元するので、非生産的なむなしい作業が数日間続く。あれやこれやで下準備が完了して素材が揃うのは早くて1週間後だ。

次にいよいよ編集開始となるはずが、最近の動画は8Kで撮影しているのでPCがまともに動かない。8Kのファイルを編集用に小さく軽くする作業がさらに1日ほどかかる。

そしてようやく動画編集だが、これがまた辛い。莫大な数の動画を再生して採用の可否を判断し、採用した動画クリップの数秒を切り貼りし、2台のモニターを使って色を調整し、手振れを無くすスタビライズという作業を行い、クリップごとに音の大きさや風切り音などを調整し、説明の文字を入れ、BGMを加え、何度も試写を繰り返して、、、

こうしてようやく完成版ができあがるのは2週間後だ。

毎日PCとにらめっこの18時間労働で全くの運動不足。足がむくんで痛い。PCは24時間唸りっ放しで莫大な熱を発するからクーラーがあまり効かなくなる。こんなことを続けると自分もPCもあっという間に寿命が尽きてしまいそうだ。

出来上がったビデオは我が子のようにかわいいのだが、内容はあくまで社会教育目的の科学文化志向なので、娯楽目的の一般人はやはり見向きもしないようだ。

岩波映画など科学文化専門の映画会社はほとんど絶滅してしまったが、利益や欲を最優先する価値感がグローバルスタンダードだそうで、そんな地球の将来はとても心配だから自分ができる限りのことは実践して悔いのない人生を送りたい。



■ 撮影再開  大野木康夫

7月末に光明寺と美山を訪問して以来、しばらく撮影に行っていませんでしたが、9月に入って、週末の早朝、ほぼ無人と思われる訪問先を選んで、撮影を再開しました。

4日(土) 福王子神社(京都市右京区)

雨まじりでしたが、ほぼ無人で、久しぶりの撮影を堪能しました。

   

5日(日) 御香宮神社(京都市伏見区)

差し上げ撮影のテストなどを行いました。
蟇股が多い社殿ですが、重文本殿背面の蟇股の絵(五間分)には驚きました。

   

今後は、市内中心部の町家も含めて撮影していこうと思います。

並行して、ため込んでいた資料(寺社のパンフレットなど)をスキャンしてハードディスクに保存する作業を進めています。
自宅の複合機がA4までしかスキャンできないので、横長のものなどは工夫して分割して取り込んでいます。

霊山寺(奈良市)パンフレットの分割例

片面で5つに折られているのを、つながりを重視して2:3に分割

    


大判のものは近くのコンビニエンスストアのコピー機で1枚30円で取り込んでいます。

取り込み例:彦根城案内図

 

A3を超えると、対応できないので、原本保存としています。

例:安堵町案内図、生駒市文化財マップ

  

また、グッズも原本保存としています。

例:宇太水分神社絵葉書、室生寺チケットケース

  

まだまだ先は長いですが、この機会を利用して整理を進めていこうと思います。




蟇股あちこち 17  中山辰夫

先月は法隆寺でした。今月は東大寺大神神社です。9月12日までの緊急事態宣言が9月30日までに延長されるようです。年代順に報告してきましたが、詰めの取材が出来ない対象が多いため、次月からは順不同で行うことになりそうです。ボチボチ進めます。




■ある公園で・・・   酒井英樹


盛夏の日曜日、大阪府豊中市にある小さな某都市公園を訪れた。
住宅地に囲まれた小さな公園、赤煉瓦塀が並び整備された若干100㎡ほどの空間は公園というよりは休憩所のような様相を示す。

  

 話は変わるが、夏の高校野球がこの日も行われていた。高校野球の代名詞とも言える「甲子園」。
兵庫県西宮市にある「阪神甲子園球場」・・甲子とはこの球場が完成した年の干支(十干十二支の60のうち一番最初の干支)にちなんで名付けられた。完成年は大正13年(1924)。
 夏の高校野球(全国高等学校野球選手権大会)は今年103回を迎え、第1回は大正4年(1915)まで遡り、甲子園で開催はされていない。

 では、第1回の大会はどこで開催されたか(当時は旧制の学校制度のため「全国中等学校野球選手権大会」と称している)というと・・当時は日本一のグラウンドとうたわれた『豊中グラウンド(豊中球場)』という場所である。

 
= 豊中グラウンド (現地説明の写真引用修正)=
 
= 第1回全国中等学校野球選手権大会の様子(現地説明の写真引用修正)=

 豊中グラウンドは大正末期に取り壊され、住宅地へと変貌したため現在はほとんど残っていない・・。
しかし、グラウンドの跡地・・その一角に冒頭の小さな公園がある。
「高校野球発祥の地記念公園」として・・観客席の擁壁としてかつては使用されていた当時の煉瓦を用いて近年整備された。
       



 
= 第1回大会開幕戦始球式の様子を描くレリーフ =

 

公園と隣接する区画には歴代の優勝校と準優勝校の校名が記されたプレートが並んでいる。
   

 
 この豊中グラウンドは野球専用ではなく多目的グラウンド(野球を行う場合のみ豊中球場と称した)。
 そのため、色々な競技が開催されている。
 「甲子園」が高校野球の代名詞なら、「花園」といえば高校ラガーメンにとっては聖地。
 昨年度の玄冬に第100回を迎えた「全国高等学校ラグビーフットボール大会」は大阪府東大阪市にある東大阪市花園ラグビー場で開催される。
 この第1回大会となっている第1回日本フートボール優勝大会の開催地は豊中グラウンドであった。

 
= 阪急豊中駅前にある80回大会記念碑 =

 ちなみに東京オリンピックによる改修前「冬の国立」と呼ばれた「全国高等学校サッカー選手権大会」の第1回大会がラグビー大会と同時開催で豊中グラウンドにて行われている。


 朱夏の日曜日、「甲子園」「花園」といった青春の象徴ともいえる大会の産声を上げた地で・・懐かしくもあり・・白秋に間もなく片足を突っ込むだろう自分がもう戻れない時を思い・・少しわびしく思えて公園を後にした。


■ この10年間で蛇を見たのは数回だけ  野崎順次


普通の人に比べて山野をウロウロする機会は多いほうだと思っているが、蛇を見る機会は激減したような気がする。春や秋に藪とかあぜ道とか歩くときは特にマムシを警戒して足元に注意しているのに、2011年から今年の今まで、数回だけだと思う。記憶力が減退しているので、すべて正確に覚えている自信はないが、そのうち3回はJGサイトにアップしている。4回目は3週間前の(何と)二条城二の丸庭園である。

出会うときは突然だし、奴らは素早く動くし、カメラはプログラム設定ないし動画の切り出しなので、残念ながらピントは甘い。

① 2011年5月8日 京都市伏見区 上醍醐寺
五大堂の下でヤマカガシに出会った。幸い動きが遅かったので、ピントはまあまあである。進路を邪魔するようにカメラを向けると迷惑そうにしていた。

     

② 2017 年7月21日 高野山 奥の院 
明智光秀墓所あたりでスペイン語を話す外人が騒いでいるので、見ると、ヤマカガシだった。すぐに墓石の隙間に消えた。

    

③ 2021年7月24日 鳥取県大山町所子
美甘家住宅の宝蔵と土塀を動画撮影中に小さなヘビが目の前を横切った。シマヘビかなあ・

  

④ 2021年8月11日 京都市 二条城二の丸庭園
京都烏丸で早朝の買い物があり(実はすでに売り切れ)、その後、昼前に二条城近くで別の用事があったので、時間つぶしに二条城を拝観した。豪快な二の丸庭園を散策していると、4,5人の家族連れの男の子が「あっ、蛇が泳いでる。」いうではないか。そしてその家族は立ち止まることなく、出口のほうへ行ってしまった。こちらはすぐにカメラを向けたが、動画モードでレンズは広角系だったので、写りは悪い。1m以上の大きめの蛇だったので、アオダイショウかな。

    
 


■トンボを撮る 田中康平

 コロナはまだまだ収束せず家の周りを廻る散歩ばかりしてる。暑いこの季節は散歩していても鳥も種類は少なくなって勢いトンボに目をやる機会が多くなる。
トンボはなかなか止まってくれないので何とか飛行中のを撮ろうとするがこれが容易くない。動きが思いの外クイックでファインダーの中へ落ち着いて入れることが難しい。ピントもオートではなかなか捉えきれない。勿論小さいものだからそれなりの望遠で撮ることになる、そもそもファインダーに入れることからして容易くない。エアーライフル用のスコープをハンドメイドでカメラに取り付けて使っているがそれでも難しい。ピントはマニュアルであらかじめ固定しておきそこに来たのを撮るというのが関の山だ。苦肉の策だ。さんざんやって1日に1枚撮れればいい方だが画面の隅でも撮れればやはり面白い。
それにしてもこの頃はアキアカネかと思うと大抵がウスバキトンボだ。インドネシアあたりから海を渡って北上してくるトンボで、戻ることの無い渡りを何世代もかけて行うというその生態は面白いのだが、やたら数が多くて有難味が少ない。なかなか止まらないことでも知られているのだがどういう訳か時々我が家の庭でぐったり休んでいることがある。落ち着いて撮れると情が移り心行くまでお休みくださいと思ってしまう、なかなか綺麗だ。
近くの溜池ではコシアキトンボやチョウトンボに始まったトンボの季節は今やギンヤンマが多数を占めるに至りそろそろ今季も終了まじかになってきているようだ。コロナはいつまで続くのだろうか。

写真は順に、(カッコ内は撮影日)
飛行中のトンボ:コシアキトンボ(6/20)、チョウトンボ(6/24)(7/1)、ウスバキトンボ(7/9)(7/16)(8/15)、ギンヤンマ(9/8)
       

庭に来たトンボ:マユタテアカネ(7/6)、ウスバキトンボ(9/6)
  


その他止まっているトンボ:チョウトンボ(6/24)、ウチワヤンマ(6/28)(7/9)(7/10)、ミヤマカワトンボ(6/30)、シオカラトンボ(7/15)(9/4)
       



■ ウォーキング中に出会うのが楽しみな生き物  川村由幸

緊急事態宣言の最中、週に一回の出勤以外は自宅でテレワーク、家内が車の運転をしないため飲料など重たいものの買い出し、そして出勤せず、雨が激しくなければ必ず出かけるウォーキング。
これが今の私の行動の全てです。
ゴルフも行かず、外食もしない。もちろん旅行もカメラを持って撮影にも出かけていません。
全く、何が楽しみで生きているのか分からない自粛生活を続けています。
そんな中でも唯一楽しみなのがウォーキング中に出会うチョッピリ珍しい生き物たちです。
ウォーキングしているのは利根川の調整池の中でこんな風景です。

  

出会える生き物で多いのは鳥類で一番にめずらしいのはカワセミです。
 
水路の小魚を狙いに来ているのでしょう。近づくと水面ギリギリをものすごいスピートで飛んで逃げます。
瑠璃色の弾丸のようでかっこいいのです。ただ必ず歩いている私の進行方向に逃げますから、もう一度遭遇することが出来たりします。

日本の国鳥、雉にも良く会います。
  
今年は親鳥(♀)に連れられた幼鳥にも三度会うことが出来ました。不思議なのは遭遇の瞬間、脱兎のごとく逃げるのですが親鳥も含めみんなバラバラの方向に逃げて行きます。近くの上空にはトンビが餌を求めて滑空しているのもしょっちゅうで襲われはしないかと後ろを振り返ることもあります。

カルガモの引っ越しにも会いました。
 
調整池の傍に柏市の水処理場があり、そこに小さな池があります。そこで出産し、私がウォーキングしている水路に子育てのための引っ越しで調整池の堤防を越えようとしている時に鉢合わせしました。
引っ越しに出会った時期は失念していますが、今、調整池の水路で見かけるカルガモはどれが親鳥か見分けがつかないほど成長しています。

チョウゲンボウにも会えます。
 
この鳥は鳩ぐらいの大きさで羽を素早く動かし高速で飛びます。特徴的なのはホバリングすることでしょうか。
田んぼや土手の上空で体を斜めに保ち、小刻みに羽ばたいて上手にホバリングしている姿をよく見かけます。
三羽、一緒のところを一度見かけましたがほとんどが単独でいつも同じ地域で遭遇していますから、テリトリーがあるのだろうと想像しています。

哺乳類で珍しいのはイタチです。
 
水路の土手に棲み処があるようです。こいつ、人を見て逃げるのですが、一目散ではなく、少し逃げては振り返るのです。
もちろん、近づくことはできませんが、なんとなく愛嬌を感じてしまいます。
たぬきも居そうなんですが、ウォーキング中に会ったことはありません。自宅近くで見たことはあるのですが。

昆虫も多いです。蝶にトンボにバッタ、多く見かけますがめずらしいのはギンヤンマぐらいでしょうか。
 

これより大型のオニヤンマには今年は巡り合わずじまいでした。
このように私のウォーキングコースにはまだまだ豊かな自然が残されているようです。これを楽しみにウォーキングを続けて行きたいと考えています。
それでも、九月に入って始まった稲刈りが終了してしばらくすると、調整池の生命観はどんどん薄れて行きます。
筑波おろしが強く吹き出すころには、カラスさえ見かけなくなり、生命観が途絶えます。
そんな中、広い調整池の中を冷たい風を受けて一人歩くのもそれなりに快感なのです。
身体の続く限り辞めずに歩いていたいものです。



■ 看板考 No. 102  「塵芥票」 柚原君子

  

所在地:埼玉県蕨市

2021年7月、熱海市伊豆山に産業廃棄物が不法投棄されていた可能性が高い山の部分がくずれて、土石流を引き起こして人命が奪われたニュースは未だ耳新しいです。産業廃棄物は廃棄費用が高いので不法投棄をする業者が後を絶たないらしいとのこと。


廃棄物処理法をひもといてみると半世紀の歴史が有り、それ以前には汚物掃除法というものがやはり同じ半世紀くらいの歴史を持つ、とあります。


汚物掃除法にはコレラやペストの流行を恐れてネズミの買い上げなどもあったといいます。


この汚物掃除法は、目的・規定もない全文11カ条の小さな法律で、しかも対象とする「汚物」に関する定義規定もありません。この法律の第1条の中に 「塵芥汚泥汚水及屎尿」があり、「塵芥」という文字が出ています。


その処理責任は「土地ノ所有者ハ汚物ヲ掃除シ清潔ヲ保持スルノ義務ヲ負フ」または「市ハ…汚物ヲ處分スルノ義務ヲ負フ」と明記してあるり、これらは現在の産業廃棄物処理法にも引き継がれているはずです。


当該の錆びたホーローの「塵芥票」は蕨市のとても大きな民家の戸口上にありました。
蕨町とあるので(蕨町になったのが1889年。蕨市になったのが1959年)、汚物掃除法施行されたのは1900年なので50年から100年くらい前の「塵芥票」と見て取れます。

当時はおそらくトラックを持つことも少なかったでしょうから、遠くの山に捨てに行くことなど出来なかったでしょうが、なによりもきちんとしたことをきちんとするという人間性がしっかりとしていたような気がします。
こうやって戸口にしっかりと示し、町やあるいは県にお金を払って捨てていたのでしょうね。

古い家の戸口上には「NHK」や「Gで示すガス」、「日赤の会員」や「固定資産税の家屋調査済証」などが貼られたりもします。自治体によっては「健康家族の家」などというのもみたことがあります。明示するものをきちんと明示して暮らすことが少なくなった今、人災による災害も増えています。熱海市伊豆山土石流の被害者の方々のご冥福をお祈りします。


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Editor Yukinobu Takiyama

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