JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine Feb. 2022

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■■■■■ Topics by Reporters


■  世界遺産熊野古道 伊勢路の全峠道を歩き終え 瀧山幸伸

世界遺産と国の史跡に指定されている熊野古道(熊野参詣道)のうち、伊勢路には風向明媚な峠が多くある。冬の歩きやすい季節に限って数年かけて歩いてきて、今年の1月にようやく1回目の調査が終わった。

伊勢路を歩いてみたいけれどあまり自信がないと思われている方も多いかもしれない。伊勢路の情報は三重県尾鷲市の熊野古道センターが詳しい。ネットの情報はそれなりに有益だが、センターにいらっしゃる方にはさらに詳しく伺うことができる。最適なルートはもちろんのこと、最適な季節や時間のこと、危険動植物のこと、体力や交通手段に応じたコースのこと、食事や宿泊のことなど、ネットでは手に入りにくいライブな情報が得られてありがたかった。

超初心者向けに私がおすすめする入門コースは、三重県熊野市波田須にある数百メートルの区間だ。おすすめの理由は、アップダウンが少なく距離も短かく歩きやすいこと、伊勢路の石畳は江戸時代から明治時代のものが多いが、ここには鎌倉時代の古い石畳が残っておりその区間が世界遺産に指定されていること、道中に海が見えて景色が良いこと、アクセスが比較的良いこと、徐福の宮があり熊野信仰の原点の推理が楽しめることなどだ。

   

四国遍路や全国の史跡指定古道を歩くことが好きな通人には、古式ゆかしく伊勢から熊野へ向けて巡礼するのがおすすめだ。熊野水軍や九鬼水軍は歴史を動かしてきた。道中には多くの文化遺産が残っており、寄り道すれば歴史と文化と食をたっぷりと味わうことができる。

また、アニメ好きにも熊野古道はおすすめだ。なぜ熊野が物語の舞台に選ばれやすいのか、ネタバレはやめておくが、現地に行けばその理由は五感で感じられる。

 


■ 修理中 大野木康夫

文化財建造物を撮影しようと訪問したとき、修理中で撮影ができないということがしばしばあります。
令和4年1月末現在、京都市内において修理中の重要文化財建造物を駆け足で回ってみました。

平野神社本殿(北区)

平成30年に台風の被害で拝殿(京都府指定文化財)が倒壊、本殿(重要文化財)2棟にも檜皮屋根が損傷する被害がありました。
平成3年11月1日付けで文化庁の補助金交付対象となり、同月中に着工されたようです。
   


倒壊した拝殿は、本殿の修理に先立って修理が完了しています。
 


本隆寺(上京区)

平成28年から10年間の予定で、本堂、祖師堂の順に大修理に着手されています。
本堂は令和5年に竣工予定、その後祖師堂の修理にかかり、令和8年に完了する予定です。
  


本堂
   


祖師堂
  


良正院(東山区)

屋根の傷みから小屋組み全体に影響が出ていたため、令和元年から令和4年にかけて、本堂の半解体修理が行われています。
その後、表門も修理予定です。

本堂(重要文化財)

令和4年度に竣工予定です。
   


表門(重要文化財)
 


妙法院(東山区)

建物全体が南西に傾いていたため令和2年から庫裏の半解体修理が行われています。
令和7年度に本工事終了、周辺整備が終わるのは令和8年度の予定です。
    


1月に訪問した比叡山延暦寺では、根本中堂の修理中ですが、修理現場が常時公開される形となっており、大変興味深かったです。
    

京都でも、時期を限ってではありますが、京都府文化財保護課が修理現場の公開事業を行っています。
普段見られない小屋組みなどを間近で見られるのは、うれしいところです。




蟇股あちこち 22  中山辰夫

1400年代の後半を主に並べます。多少の入り繰りを含みます。
天神社(奈良県)・大田山神社(北海道)・西明寺楼門(栃木県)・善光寺楼門(茨城県)・西蓮寺仁王門(茨城県)・意賀美神社(大阪府)・老杉神社(滋賀)・水上神社(山形県)・天津神社(兵庫県)・油日神社(滋賀県)・雙栗神社(京都府)です。地方色濃いとされる蟇股も含まれます。
 


■ 富士は日本一の山?? =PARTⅡ=  酒井英樹

 昨年最後のWEB-MAGAZINEでかつて(100年ほど前)日本の最高峰は富士山でなかった話をさせてもらった。その時現在の最高峰は富士山剣ヶ峰と言い切ってしまったが果たして正解だったのだろうか・・・。そこで話の続き・・
 続編のサガか・・前回よりスケールアップして視線を変えてみた。

 前回が日本一なら今回は世界一・・。世界一高い山はエベレスト(サガルマータ、標高8849m)・・小学生でも答えられる常識??・・。

世界最高峰??? 『サガルマータ(通称:エベレスト)』
 

 しかし、山の標高のほとんどが海抜距離(海水面からの距離)で測定している。日本の場合は東京湾平均海面(1873年から1879年の平均潮位)・・。エベレストをはじめ世界の山々の標高はもちろん別の基準から測っている。基準が違うのだから、どの山が世界一なのか比べようがない。
 そこで基準を従来のようにいくつも設けるのではなく、地心距離(地球の中心点からの距離)で山の高さを比べてみる。つまり地球の中心から一番遠いところが一番高い場所として比較する。

 地球の形状は球体ではない・・山あり谷ありの多少の凸凹を均しても完全な球体ではないことはあまり知られていない。
 地球は約23時間56分で一周(自転)する物体。回転することで回転軸から離れたところでは遠心力がより強く働く。つまり北極や南極より赤道直下の方が遠心力は強く働き、常に外側に引っ張られるので赤道の地表の方が南極の地表に比べ地球の中心から離れている。いわゆる回転楕円体と呼ばれる形状で、緯度が低いほど中心からの距離が大きくなる・・その差は約21㎞。

 地心距離が一番大きい場所・・世界一高い山の頂上は、南米エクアドルにある南緯1°29′標高6310mの「チンボラソ」(地心距離6384.458km)というほとんど無名に近い山の頂になる。
 ちなみに北緯27°59′標高8848mのエベレスト(サガルマータ)は32位(地心距離6382.270㎞)になる。

世界最高峰??? 『チンボラソ』
  


さて、話を冒頭の日本に戻すと、富士山(標高3776m、地心距離6374.488㎞)は北緯35°21.6′にあるため、北緯30°20.2′にある屋久島の宮之浦岳(標高1935m、地心距離6374.463㎞)とその差25mとほぼ同じ高さになる。
 では、日本一高いところはと言うと、やはり緯度が低いほど有利なのか・・日本最南端の北緯20°25.2′にある沖ノ鳥島(地心距離6375.595㎞)となってしまう。海抜0mの今にも消えそうな岩のような島・・国の大規模な護岸工事でかろうじて姿を海面から出すこの小さな陸地が日本の最高所とはいささか理解に苦しむが・・昨今はやりのグローバルスタンダードな観点から言えば紛れもなく日本一地球の中心から離れた場所、つまり高いところになる。

日本最高峰??? 『沖ノ鳥島』
 


 違和感しか残らない・・ここまで書いて今更何を言うのか?と思われるが、やはり個人的には富士山は日本一高い山であって欲しい。何もかもがグローバルスタンダードではなくローカルスタンダードでも良いのでは・・。
 と言うより・・そもそも山って何???・・その話はいずれ・・続くかなぁ・・・。


 


■  北陸新幹線雪山景色 野崎順次

 

長距離列車に乗ると忙しい。パソコンでDVD映画、読書、ICレコーダー録音トーク番組などなど、家や喫茶店でじっと座っているよりも、乗り物のほうが集中できるのである。これを古来、「ながら族」という。ただし、山らしい山が見える場合には、ひたすら、景色を楽しむことが多い。若い頃には、背面テーブルに地図とコンパスを置き、手には双眼鏡を持って、JR中央西線を進んだこともあった。

先日(1月21-22日)、東京からの帰りに北陸新幹線に乗った。積雪の多い時期だ。

JR高崎駅あたり、浅間山、妙義山などが見えた。
   


軽井沢駅を過ぎると、まじかに浅間山。
   

佐久平駅付近では八ヶ岳連峰がまとまっている。ここまでは雪が少ない。
  


上田に近づくと積雪が一挙に増える。夜間の気温はマイナス9℃。上田で宿泊。
翌日、長野に移動し、JR駅と北野美術館をバスで往復した。

まず北西方向の飯縄山が目立つ。千曲川土手沿いの道路では、左側は土手の雪しか見えない。
     


千曲川の落合橋を渡る。東側の山々。
  


橋の上から西方に後立山連峰がよく見えた。一番高いのは鹿島槍ヶ岳らしい。よく見ると双耳峰だと分かる。
    

再び、東側の山々。
  


北陸新幹線に戻って、糸魚川駅あたり
    


写真中央奥は後立山連峰らしい。
        


黒部川を渡る。
  


富山平野を行く。日が暮れてきた。雲の奥は立山だろうか。
   


新高岡駅の手前で、庄川を渡る。
   


新高岡から金沢へ
 


■冬の野鳥は餌取りに必死 田中康平

このところ近くを散歩して野鳥を見るのが日課のようになっている。
冬期は渡ってくる野鳥が増えてにぎやかになるが、眺めていると彼らの興味の焦点は餌、餌、餌のように見えてくる。カモなどは渡った当初こそ人を警戒するがじきに人の姿を見るとむしろ遠くからでも寄ってくるようになる。餌を撒く人が結構いるからだろう。野生の生き物への餌付けのような行為は自然を緩やかに破壊すると反対の意見も多いが食べ物に飢える野鳥の姿を見ると、同じ生き物として何とかしてやりたくなるのは当然の様に感じる。
渡りをしない留鳥は、いつもの冬が来たという塩梅か、それほどピリピリはしていない様だが、餌を必死でとる姿はこの季節見かける風景でもある。最近見た印象的光景は公園のベンチでハシブトガラスが野鳥を食べる姿だ。これまでもハシブトガラスが鳩の群れに襲いかかる姿を見たことがあり他の鳥を襲うことはあることだとは思っていたが、これには驚いた。
ともかくようやくコロナの冬が過ぎて行く。

写真は順に、1.人の姿に寄ってくるマガモ、2.水底の餌をとるコガモ、3.落ち葉の中の餌をあさるシロハラ、4.泳ぎながら水面の水から餌を濾しとるヒドリガモ、5.水の中で嘴を振って餌をとるクロツラヘラサギ、6.木の幹の中の餌をとるメジロ、7.同じくヤマガラ、8.公園で野鳥をとらえて食べるハシブトガラス

        



■めずらしいと思う野の花  川村由幸

コロナウィルスの感染拡大が続き、いつまでたっても撮影に出かけられるようになりません。
昨日、三回目のワクチン接種も済ませ、取れる感染対策はしていますがそれでもあちこち出かける気分ではありません。
ウェブマガジンのネタも尽きていますが、以前ウォーキングコースで見かける動物を紹介したことがありましたが今回は私がめずらしいと感じた野の花を紹介します。
紹介する植物の名前も承知しておりませんし、私がめずらしいと感じるだけで実際にはどうなのか不安だらけです。
まず、花の形に特徴のある2種類です。
    

両方共に直径5ミリほどのはなです。黄色の方は春に、ピンクの方は秋に撮影しています。
花の形状が良く似ていますので同系の植物でしょうか。
こんなのを畦道の際に見つけるとただ歩くだけの時を楽しくさせてくれます。
  
この紅い花は5km強歩くウォーキングコースの中でも一箇所にのみ咲いていたものです。季節は秋。
花のサイズは20ミリ程。赤と黄の目立つ色で形も変わっていてすごく目立っていました。もし来年も同じところで咲いたなら自宅の庭に移植しょうと考えています。
次に紹介する2種は調整池の堤防で見つけたものです。
    

撮影したのは共に秋。淡いピンクと紫の可憐な花です。
見つけると摘んで帰ろうかと思うのですが、今まで持って帰ったことはありません。
折角、味気ないウォーキングをいくらかでも楽しいものにしてくれているものをできるだけ残しておきたいという気持ちからです。
今は冬、冷たい風ばかりで生命観のない調整池の中を黙々と歩いています。命溢れる春を待ち望んでいます。


■ 看板考 No.106 「たばこは心の日曜日」  柚原君子

看板考では2012.05に「lucky strike」で、2015.07に「交差点の角のたばこ屋さん」という題でタバコに関する話題をしていますが、それに続いてのタバコ関連です。タバコ全盛時代は「今日も元気だタバコがうまい」、「タバコは動くアクセサリー」、「贈り物にたばこ」などというキャッチフレーズが多くありました。
今にしては珍しいフレーズの看板場所は板橋区南町のとある十字路の角。出窓の細い面にキャッチフレーズを見つけました。
「タバコは心の日曜日」とあり昭和の遺物を見つけたような気持ちで見とれました。

タバコ全盛時代には映画の中でカッコ良い俳優に吸わせたり、テレビドラマのシーンで喫煙場面があまりにも多いからと不思議に思うとスポンサーがタバコがらみだったり、と生活の場に当たり前のようにあったタバコですが、今から25年前の平成半ば頃からテレビによるタバコCMが規制されるようになり、町の一角やレストランでは分煙となり、それは道でタバコを吸わないという市町村の条例発令までに至り、喫煙者にはかなり厳しい現在になっています。

今では害有る嗜好品のくくりの中にあるたばこですが、もともとはマヤ文明において神の祈りにかかわる宗教上のものであったり、病気の治療に使われたりと、鎮静剤、安定剤なども含めて神聖な部分が多かったようです。
タバコという名称は、吸う(あるいは嗅ぐ)道具のパイプの名前だったのですが、新大陸発見のコロンブスがたばこの葉の方と間違えたために定着したとか。毒の要素と思われるニコチンはフランス大使のジャン・二コーが頭痛持ちの自国の皇太后にたばこを嗅がせたら頭痛が治ったところから宮廷内で吸ったり嗅いだりの習慣が定着して「ニコチン」の名前があるという、いろいろおもしろい話もあります。

「たばこは心の日曜日」などというキャッチフレーズも、日曜日は安楽の日ですから、吸えばゆったりとした気持ちになれる嗜好品のお薦めということなのでしょうね。

たばこは今は「JT]ですが、もとは「専売公社」といっています。
近代化を伴なった明治維新後は、国がこれまであった地租の税金収入だけでは成り立たなくなり、国としての財源確保の必要に迫られ、専売公社にして利益が国の元にダイレクトに入るようにした経緯があります。たばこの葉を国が買い上げますので、どこの農地もたばこ葉だらけだった時代もあったようです、
現在はJTとの契約農家のみですが、たばこの売り上げは減り、2021年12月のニュースでは作付け農家が47%減少とでていました。

吸わないに越したことはないという現在のたばこの位置。コロンブスの時代には解らなかったことですが、ニコチンやタールの有害物質がはいっているたばこは、体内の活性酸素を過剰にしてしまうので、細胞が傷つけられ障害がおこり、細胞のかたまりで出来ている動物としては悪い変化が起きることになる……とまあ、平たく言えばそのような理解の現在です。

吸っている人は目の敵にされて気の毒な時代になっていますが、既に虜となっているたばこを、震えながらガマンして生きて健康で長生きして聖者として暮らす味気なさは、吸わない人には想像ができません。せめて副流煙まき散らさず、囲みの中で吸って心の日曜日を堪能して頂ければと、盛り場の囲みのモクモク上がる煙の外を大曲りにして通る私です。

……ソンナ私デスガ、ミーハーデモアルノデ、タバコヲ吸ウキムタクハ、チョットカッコイイトハオモッテイマス……


■ おばちゃんカメラマンが行く  @信貴山朝護孫子寺  事務局

今年こそ信貴山朝護孫子寺に行こう。
行くなら今月でしょう。
国宝 信貴山縁起絵巻で有名な朝護孫子寺、絵巻には創建当時の東大寺大仏殿と大仏及び庶民の生活の様子が描かれている。創建は不明だが、寅年寅の日寅の刻、聖徳太子が信貴山で毘沙門天王を感得したと言われ、西暦582年と寺の歴史には刻まれている。毘沙門天王信仰の総本山で、昔からパワースポットとして庶民信仰の対象となっている。そのため、広い境内ではあるが参拝順路脇には所狭しと虎の置物や奉納された置物などがあり、楽しみながらお参りできる。なんじゃこれ?!と思わず言ってしまいそうなものもあるが、ご利益を求める庶民の気持ちの表れだろう。
今年は寅年ということで、奥秘仏毘沙門天王像の御開扉が行われている。12年に一度の御開扉ということになる。今月は寅年寅の月なので、毘沙門天の像開扉(2月1-28日)と寅祭り(2月26、27日)が盛大に行われる予定だが、コロナの影響が心配される。
何はともあれ、商売繁盛、家内安全、疫病退散、何でも叶えてくれそうだ。
 

今月のニャンコ

朝護孫子寺
微妙に申し訳なさそうなキジトラ猫
母はトラ猫だったのに

 

 


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Editor Yukinobu Takiyama

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