JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine   May 2023


■■■■■ Topics by Reporters

■蟇股あちこち 37 中山辰夫


今月は静岡県を集めています。
神部(かんべ)神社・浅間(あさま)神社・大歳御祖(おおとしみおや)神社の三社を総称して静岡浅間(せんげん)神社といいます。創建は千古に遡ります。
現在の社殿は江戸に60年の歳月をかけて再建された、総漆塗り極彩色の豪壮華麗な建築群です。社殿群二十六棟が国重文指定です。
境内にある彫刻はほとんどが極彩色塗装されており、信州諏訪の名工・立川和四郎父子とその一門よるものです。「東海の日光」と称されるほど豪華です。

 


撮影 Dec.7,2022 中山辰夫

1804 静岡浅間神社
静岡市葵区宮ケ碕102-1

静岡浅間神社は、賤機山(しずはたやま)の南端にあって、「おせんげんさん」 の愛称で親しまれていますが、正式には神部神社、浅間神社、大歳御祖神社(おおとしみおや)の3本柱を総称した呼びかたです。
往古より駿河国の総社として、時の権力者から保護されてきました。とくに徳川家康が浅間神社への保護を強め、家光が1634年に大造営を行いました。
その社殿の華麗さを、貝原益軒は「日本にて神社の華麗なること、日光を第一とし、浅間を第二とする」と評したとされます。
その社殿は火災で焼失し、現在の社殿は1804年に着手し、1866年に再建されたものです。26棟の社殿が国重要文化財に指定されています。

■総門 国重文 建立:1817 三間一戸 桁行三間 梁間二間 八脚単層門 木造平屋 切妻 本瓦形銅板葺 外部は朱色 仁王像

華美な装飾の少ない質実な建物

 
上層部に高欄が巡り、細部に精緻な立川流の彫刻が施されています。その数は111個とか。江戸後期の貴重な楼門建築の遺構とされます。
外部内部共に多くの彫刻が並びます
外部彫刻


□欄間彫刻
総漆塗で、彫り物には「水飲みの龍」 「虎の子渡し」等があります。二層部に扁額が揚げてあります。
           
「水飲みの龍)は、名工と知られた左甚五郎の作と伝えられます。1773年の火災の際には龍が池の水を飲み社殿に吹きかけ延焼を防いだとされます。

■手水舎 国重文 木造平屋建 切妻造 本瓦形銅板葺 外壁は四隅柱のみの吹き放し 朱色 妻面や蟇股の彫刻は極彩色
        
手の込んだつくりです。大瓶側の左右には「波に泳ぐ鯉」 四辺に配された蟇股は「水に水仙」と水に関わる題材です。

■舞殿 国重文 建立:1820 桁行三間 梁間二間 一重 正面軒唐破風付 入母屋造 妻入 銅板葺 彫刻が目一杯ならんでいます。
    
金の金物や立川流の彫刻が随所に施されていますが、彩色が無く、唯一素木造りです。
細部 彫刻は内部・外部ともに施されています。
正面
      

貫の上には波の意匠の彫刻、木鼻には獏の彫刻
内部
      
あちこち
     

■大拝殿 国重文 建立:1814 桁行七間 梁間四間 切妻 本瓦堂板葺屋根に千鳥破風 楼閣 浅間造の代表 は笠25m 殿内は132畳敷きの広さ 
     
1804年から60年の歳月をかけて立川流一門に造営されました。
建物全体に精緻な彫刻が施され極彩色で彩られ、金物は金箔で仕上げられ、境内を象徴する大規模社殿建築です。
江戸時代後期の神社拝殿建築の遺構として大変貴重な存在とされます。

□妻壁 二階~一階~一階
        
屋根は総瓦葺で、浅間造(せんけんづくり)とよばれる重厚な建築様式です。

細部
        

一階部分
         

蟇股は身舎に配されています。
      

工事報告書からの転記です
       

■南回廊 国重文 建立:1813 折曲り延長二十八間、梁間二間、一重、入母屋造、本瓦葺
  

■本殿 国重文 建立:1813 七間社流造、本瓦形銅板葺
  
神部神社、浅間神社の二つが社殿を共有しています。右が神部神社、左が浅間神社です。

■斎館
    

■社務所
   
 

立川流
静岡浅間神社は、初代立川和四郎富棟、二代富昌と三代富重と三代にわたり社殿の彫刻を手掛けています。その彫刻は代表作とされます。
立川流については、Wikipedia,立川流彫刻 研究所 などに詳しく記載されています。

 


■1826 大歳御祖(おおとしみおや)神社 本殿
静岡県静岡市葵区宮ケ崎町

大歳御祖神社は静岡浅間神社の境内に鎮座している神社です。創建は273年とされ、703年には「安倍の市」の市神として信仰されました。
その後927年には延喜式神名帳にも式大社として記載され、古くから続く格式の高い神社として崇敬されてきました。
江戸時代に入ると幕府から崇敬庇護され、数度に渡り幕府直営で社殿が造営されたようです。
現在は神門・拝殿・唐門・本殿で成り立っています。
本殿、中門、透塀は江戸時代末期の社殿建築の遺構として重要文化財に指定されています。

■神門~拝殿
            

■中門、透塀、本殿 僅かな隙間から写すだけです
     
中門は一間一戸平唐門、本瓦風銅板葺、 透門は一周延長38間、本瓦風銅板葺

■本殿 国重文 再建:1826 三間社 流造 本瓦風銅板葺 組物・彫刻は極彩色
 

□本殿 「引用」
 
2014年、20年かけてて化粧直しが終了しました。

以下は工事報告書からの転記です。 (1977~1988年発行)

□向拝の蟇股
      
□向拝隅斗栱
 

□手挟
  

□身舎の蟇股
          

 

1844 麓山(はやま)神社 本殿
静岡県静岡市宮ケ崎

麓山神社は静岡浅間神社の境内に鎮座しています。創建は不詳ですが静岡浅間神社が勧請される以前から鎮座していたとされます。
祭神は静岡浅間神社の主祭神の木之花咲耶姫命の御父神である大山祇命、配祀として日本武尊を祀っています。
本殿は極彩色に彩られています。います。神社の拝殿、本殿、中門(平唐門)は重要文化財に指定されています。

□麓山神社は賤機山上にあります。約100段の石段を上ります。
    

■拝殿 国重文 建立:1824) 桁行五間、梁間四間、一重、入母屋造、本瓦形銅板葺
   
主要構造部は朱色、戸扉は黒色に塗られ、木鼻や蟇股、木組に施された精緻な彫刻や軒下廻りは極彩色に彩られています。

細部
□妻部
     

蟇股は向拝と身舎の周囲に配されています。
□向拝と周辺
蟇股
         

□身舎の蟇股と周辺 極彩色の彫刻が並びます。
         

蟇股 身舎軒下の四面にに配されています。工事報告書より引用
                   

■中門 国重文 建立:1822) 一間一戸平唐門、本瓦形銅板葺
■透塀 国重文 建立:1822) 一周延長三十間、本瓦葺、潜門一所を含む
    

本殿は外からしか写せません。 部分々の撮影です。

■本殿 国重文 建立:1822 三間社流造、本瓦形銅板葺 古来、賤機山上に鎮座。「山宮」と称せられ、本社の別宮でした。
    
拝殿同様に、主要構造部や外壁は黒色に塗られ、木鼻や蟇股、木組に施された精緻な彫刻や軒下廻りは極彩色に彩られています。



1850 少彦名(すくなひこな)神社 本殿
静岡県静岡市葵区宮ケ崎102-1

少彦名神社派静雄邪浅間神社境内に鎮座しています。本社神部神社の元の14社の神々を祀っています。神宮寺薬師社と称された古社です。
現在の本殿は1850年に建立されました。漆喰極彩色、十二支の蟇股が有名です。本殿は江戸末期の建築遺構として国重文に指定されています。

■本殿 国重文 建立:1850 桁行三間 梁間二間 木造平屋 入母屋造 本瓦風銅板葺 漆塗り極彩色 蟇股の十二支の彫刻が有名 
    
医薬・酒蔵の神・芸能の神として信仰され、参拝が絶えません
外壁は真壁造黒漆喰仕上げ、木鼻や組物、蟇股(十二支の彫刻)、桁などは極彩色で彩られています。

細部

         
□蟇股は社殿内(2個)と身舎の周り(10個)配されています。立川流干支の彫刻です。干支中「子」「丑」は内部にあり、普段はうかがえないです。
 

□社殿内は「子」「丑」です
  

□身舎まわり
          

本殿内部の蟇股 補修工事が完了しました。 引用
      


1838 八千戈神社 (やちほこ)
静岡県静岡市葵区宮ケ崎町

八千戈神社は静岡浅間神社の境内に鎮座しています。境内社で規模は両社本殿に次ぐ大きさです。
徳川家康の念持仏、摩利支天像を安置するため創建されたのが始まりとされ当初は摩利支天社と称していました。
江戸時代は幕府の庇護のもと社運も隆昌していましたが、神仏分離と廃仏毀釈で、八千戈神社に改称しています。
本殿、中門、透塀は江戸時代後期の社殿建築で、意匠に優れた遺構として国重文に指定されています

■八千戈神社 
     
外壁は真壁造黒漆仕上げ、中門は平唐門、本瓦風銅板葺、透塀は本瓦風銅板葺、南側延長10間、北側延長10間。
細部は立川流の彫刻が施され極彩色で彩られています。

■中門 国重文 一間一戸、本瓦形銅板葺の平唐門で、南透塀及び北透塀はいずれも折曲り延長十間、本瓦形銅板葺である。
 

■唐門
   
特に唐門格狭間に施された「麒麟」の彫刻が優れているとされています

■本殿 国重文 建立:1838 桁行三間 梁間四間 一重 正面千鳥破風 三間軒唐破風向背付 入母屋造 銅瓦葺
  
内部は見えません

□妻壁と正面千鳥破風~側面妻壁
        

□向拝の蟇股
      

□身舎内は極彩色
       

□蟇股は向拝と身舎に配されています。
蟇股は二十四孝を題材とした彫刻が付けられ、立川流の円熟した技が見られます。
       

□身舎の蟇股 (工事報告書より転記)

                 

玉鉾神社
静岡県静岡市葵区宮め崎102-1

本社の北側に摂社。社殿は伊勢神宮の御古材を用いて1975年に再建されました。
明治9年(1876年)県内の神官により官許を得て創始され、受検・学問の神と仰がれています、
    


5月の連休の間に西本願寺の国宝・飛雲閣が一般公開され、撮影しましたので、既存の西本願寺(蟇股あちこちNo33)に追加します。

蟇股あちこちNo1~No37掲載分の、県別社寺一覧表を作成しました。今後も追加、修正を行います。見やすくなればと思っています。




 

 All rights reserved 無断転用禁止 登録ユーザ募集中