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Monthly Web Magazine   Sep..2024


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■蟇股あちこち 53 中山辰夫

 

日光東照宮 その3 

社務所・神楽殿・神興庫・唐門・坂下門・奥社・仮御殿です。 日光東照宮の最終です。


■社務所(祈祷殿)・神楽殿・神輿舎
この三棟は並存しています。これらの構造物は三間四方の同じ大きさです。上社務所は唐様、神楽殿は和様、神輿舎は折衷様と言えます

■上社務所 (祈祷殿) 国重文 造営:1635 桁行三間 梁間三間 一間向拝付 入母屋造 銅瓦葺 背面にも向拝付
外観的には神楽殿とほぼ同一です。家光の発意で建立。仏像は五体安置で、「五大明王」と及ばれます。神仏分離の時から社務所として利用されています。
     
全体に黒漆塗りと金塗りが基調。中備は詰め組を用いながらも間に蟇股を差し入れています。戸扉は唐風の黒漆塗りの桟唐戸

□妻飾
南側と北側
 
南側の妻飾りには唯一といえる麒麟の彫刻が見られます。

□向拝 正面に頭貫・木鼻が無く、柱上に連三斗を用いています。
    
欄間中央に蟇股、その左右には「鯉」、欄間には波の彫刻。

□軒下の木鼻は獏、手挟には波に蓮花模様の籠彫りが見えます。繊細かつ華麗な仕上げです。虹梁には紗綾文様、唐花文様が施されています。
虹梁には紗綾文様、唐花文様が施されています。
    

□身舎の彫刻はすべて鳥。 
「吐綬鶏 とうじゅけい」とも呼ばれ、耳があるという珍鳥。生んでくれた親鳥が年を取ると、逆にエサを運んでくる親孝行の鳥と称されます。
                   

□平和の象徴­とされた牡丹が描かれています
   

 

神楽殿
「眠り猫」の入口の手前に建っています

■神楽殿 国重文 建立:1635 桁行三間 梁間三間 入母屋造 一重 銅瓦葺 「神楽 かぐら」と呼称される踊りを奉奏する場所。
    
和様の造りです。黒塗りを基調とした仕上げに、漆箔の装飾がなされています。内部は二室で、正面が舞台です、後部が装飾の間です。
北向きの舞台の正面は桟唐戸、残る三戸は蔀戸で、周囲から舞台が見えます。
側壁の蔀戸や蟇股、垂木、極彩色に彩られた内法長押など柱間に用いています。

□妻飾
    
妻壁には大瓶束、左右の枇杷板彫刻は、菊、笹、雲。黒漆の妻虹梁の下に、「獏」をあしらった蟇股。

□蟇股
     

□身舎四方に蟇股
         

□神楽殿の彫刻は、正面西側の腰羽目には「花篭 はなかご」を模した浮彫、花鳥、唐草を用いて華やかな和様を表現しています。
      
欄間には牡丹、長押には菊唐草、西側連子窓下の胴羽目には花篭の薄肉彫りが飾られ、緑青の連子窓や黒い柱、朱塗りの回縁など、色彩の対比が美しい

神輿舎

陽明門をくぐった左手にあります。春秋の渡御祭に使われる三基の神輿が収蔵されています。天井に天女の絵が描かれています。

■神輿舎 国重文 建立:1636 桁行三間、梁間三間、一重、入母屋造、妻入、正面軒唐破風付、銅瓦葺
       
全体は黒漆で仕上げられ、漆箔や彩色の飾り木彫が、抑え目のアクセントになっています。
正面左右に金色で縁とられた「花頭窓 唐様と、殿舎側面に緑の「連子窓 和様」が用いられています。和洋折衷です。
正面戸扉は唐様で、折れ戸に桟唐戸が据えてあります

□屋根周辺
屋根の下などの彫刻は、蔓、鳳凰、インコ、ミミズクなど鳥がおおいです。

□唐破風軒下
    
妻壁に大瓶束が立ち、左右の枇杷板には竹、梅、笹に虎の彫刻

□彫刻細部
     
鶴・鳳凰・インコ・ミミズクなど、鳥の彫刻が多く彫られ、正面上には家康公の干支である虎が彫られています

□妻虹梁に鶴の枇杷板彫刻が見えます。
       

□神輿は、中央に徳川家康、右に豊臣秀吉、左に源頼朝の神輿三体です。
    

□天井に天女の絵が描かれています。
    

□蟇股
     

 

唐門は陽明門を入った正面、東照宮の最も重要な本社に入る正門が唐門です。透塀で囲まれています。
唐門破風~拝殿唐破風~拝殿千鳥破風が見えます
 

■唐門 国宝 建立:1636 桁行3m、梁間2m弱の建物。四方に唐破風を付けています。門全体を胡粉で白く塗り、611もの彫刻が彫られています。
    
彫刻の数は陽明門を越え、密集率は東照宮随一とされます。

□屋根上の鋳物 正面と背に「ヨウ(犬)」、東西に「鰭(ひれ)切れの竜」があります
    

□唐門南妻の総称、欄間の装飾、正面台輪上の彫刻(舜帝朝見の儀)
      

□入口とその装飾
     

□正面桟唐戸 牡丹唐草・梅・菊等の唐木象嵌、
    

□柱彫刻 唐木の象嵌「昇龍」、「降竜」・正面唐門の接続部の装飾
   

□天井には欅の一枚板に半肉彫りの天女弾琴図が描かれています。
  

透塀は、唐門から左右に延びて本社を囲む塀が透塀です。160mほどあります。 瑞垣(みずがき)とも呼ばれます。左右同じデザインです

■透塀 国宝 造1636 切妻像 平入 銅板本瓦葺 柱は黒漆塗りの角柱
    

□細部 花狭間の装飾
    
上段欄間 羽目、下段欄間、長押

       
□上段欄間・羽目 波に数種類の水鳥と水草がテーマの彩色木彫。羽目は亀甲花菱繋文。

□下段欄間・長押 山野の植物と鳥類がテーマの彩色木彫。
  

欄間彫刻 竹にふくろう、雀
 

 

坂下門は奥社参道の入り口です。坂下門から奥宮までは緩やかな坂道となっており、この門は奥宮から見れば坂の下にあることから「坂下門」と呼ばれます。

東回廊の唐破風が施されています通路・潜門を抜けると石段の上に仰がれるように立っています。潜門の裏側の彫刻「雀」の彫刻が見えます。
□有名な「眠り猫」、背面が「雀」の蟇股を過ぎます。
      

■坂下門 国重文 建立:1636 一間一戸 八脚門 平唐門 銅瓦葺 
     
奥宮から見ると坂の下にあることから「坂下の門」と呼ばれます。奥宮は最重要の霊域として普段は閉扉されていることから「開かずの門」とも呼ばれます。
絢爛な豪華、繊細な職人技の彫刻が冴えています。奥社入口を飾るにふさわしいです。

□細部
    
錺り金具・菊の御紋の六葉、菱形の飾り金具、挙鼻や出組、実肘木まで金具がハメ込まれています。鶴や牡丹の図様が見られます。

門の内部格天井の図様は牡丹や菊の花です。
   

坂下門の腰羽目の彫刻と七宝金具
  

■奥社

奥社は、坂下門から参道200段強の石段を上って、本社の背後、恒例山の中腹にあります。石段は一枚石を用い、その継ぎ目に鉛を詰めています。
 

奥社は、銅鳥居、銅神庫、拝殿、鋳抜門、宝塔からなります。

唐銅鳥居 国重文 創建:1637 高さ約6m 横幅約5m
銅神庫 国重文 創建:1654 寄棟造
      

拝殿 国重文 創建:1617 再建:1636 横幅約10m 横幅約6m 平入 前後唐破風付 入母屋造 連続した三つ葉葵紋が見事です
    
黒漆 真鍮や銅板を用いた重厚な造りと意匠。

妻飾と正面中央唐破風
  

細部
      

鋳抜門 (いぬきもん) 国重文 創建 1636 再建 1650 高さ3.4m 柱間 2.5m 狛犬は墓前の警護
  

宝庫 国重文 創建 1622 高さ 約5m 方形造り 円塔
  

鶴の燭台と獅子の香炉
 

御仮殿

日光東照宮御仮殿(おかりでん)は、一の鳥居の東側、日光東照宮宝物館近くにあります。
御本社を修理する際に、祭神を一時遷する御殿です。

御仮殿 国重文 建立:1639 権現造 透塀付 唐門、掖門(わきもん)付 拝殿、相の間、本殿と権現造が並びます。
     
他の神社では本社が完成すると取り壊されますが、東照宮では修理がくりかえされるので常設されています。

細部 見えるものだけです。
           


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