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12月26日(月曜日)
4時過ぎに目覚めた。悶々としていても辛いので、日記を更新する。
この宿で一人だけか、、、寂寥感に浸る。
せめて川の水音でもあれば良いが、暖房の音しか聞こえない。
窓辺に佇めば、 川の音がかそかに聞こえる。
外には山の上に綺麗な三日月。時々雲がよぎる。
竹薮のシルエットに三日月が似合う。
この場所のこの瞬間、二度と味わえないだろう。
人との出会いも、旅での自然や文化への出会いも一期一会だ。
会う人、出会う風景、皆それぞれに良いところがあるが、時間をかけて熟成させると新たな良さが発見できる。
そういえば、月明りに照らされた雪景色を見ていない。
天草は暴風だったので、月が出ていなかったから。
魔法をかけられたような別世界なのだが、最近は人工照明が多く、小さかった頃の記憶でしかない。
山では猿の親子が凍えているんだろうな。
人に生まれてきて良かった。もちろん猿には猿の幸せがあるのだろうが。
少なくとも子供の遊ぶ姿は、人よりも猿のほうが無邪気で楽しそうだ。
親心についても、人よりは母猿のほうが愛情豊かかもしれない。
家族の悲劇など、暗いニュースの話題は猿の世界には無いだろう。
母猿の理性のほうが人を上回っているのか、人の本能が低下しているのか。
そうではなく、戦後の核家族化と道徳教育が荒廃し、親となるべき者への教育が欠如しているからだろう。
まずは親の再教育が必要だ。
Yoshinogari
広い。復元建築が大きすぎはしないか。
青森の三内丸山のほうが、当時の生活に対する親近感があり、好きだ。
邪馬台国はここではないだろう。古墳のスケールが違う。
Chikugogaw bridge
なんと、船が通る時にはレールの橋げたを吊り上げてしまう。
船運のほうが重要だった時代の最上のソリューションだったのだろう。
川副 山口家
Kawazoe Yamaguchike
ろうと型の民家。屋根の棟が四方から逆勾配で、漏斗または蟻地獄のように落ち込んでいる。
これで雨を受けて、樋で流すこの発想にはびっくり。
誰がこんなとっぴな構造を思いついたのだろうか。
福岡へ
大川
Okawa Yoshiharake
風浪神社 本殿と五重塔
Okawa Kazenami jinja
柳川
Yanagawa Ohana
立花家の御殿とその庭園、
この宿は庭園内の御殿。彦根と同様、素晴らしい。
御殿は改装中。
立花家の宝物展示は興味深い。撮影自由なのが嬉しい。
日本の美術館、博物館は意味無く撮影禁止が多すぎる。
鹿児島の島津藩関連資料館は撮影禁止で残念だった。
内容はほぼ同じなのだが、ポリシーの違いが明確だ。
撮影許可して多くの人の眼に触れたほうが良いと思うのだが。
光に弱い美術品はいずれにせよ展示しないのだから。
Yanagawa creek
これが柳川の一番の観光資源。今回は敬遠。
船廻りは、動力船ではなく竹ざおをさして推進する、ゆかしいものだ。
情緒があるし、うるさい音がなく、速度も早過ぎず快適。
大好きな水辺の景観が市内各地に散在する。
柳川の利点は、他を圧倒する長い総延長の水路ネットワークだ。
立花の城下町として、持って生まれた昔の姿は素晴らしかっただろう。
近江八幡、佐原、倉敷、栃木、そして柳川。
比較すると良いところと改善すべきところが見えてくる。
萩や佐賀やお江戸日本橋など、利用可能な水路を持っているけれども全く活かしていない観光都市もある。
それを考えれば、柳川にだけ厳しい意見をするのは気が引ける。
だが、こよなく柳川を愛する一個人として、街の歴史と情緒を大切にしてほしいと願っている。
おせっかいだが、希望項目を列挙すれば以下のようなところか。
船廻りのルートでは以前に比べ少し修景の改善が見られるが、街並は悲しいほど乱雑になってしまった。
区画整理で古い街並を壊している。時代に逆行していると思うのだが。
美観地区もなく、車の騒音がうるさく、主要な景観スポットに店の看板が入り乱れる。
水路を廻る城下町の情緒をフィーチャーする街並であるならば、舟から見える景観も、陸から見える景観も、さらに配慮がなされなければならないだろう。
堀に流れ込む丸い下水管、船から見える電柱。
街並に似合わない洋風の街路灯、街路灯から釣り下がる洋風のフラワーバスケット。
無粋なガードフェンス、ありきたりの標識、そして乱雑な家並。
橋やベンチは直線や尖ったエッジが多く、テキスチャも無機質。道路舗装も無機質。
食糧として輸入した外来タニシの卵は今でもどぎつい赤色を放つのだろうか。
堀に沈没したまま放置されている老朽船。観光客はどのような印象を持つだろうか。
なぜ中心部の主要な景観道路を歩行者専用にしないのだろうか。不思議だ。
団体客を優先したがために、「旅の恥は掻き捨て」という国際的にも恥ずべき悪徳に感化されてしまったのか。
ここを訪れるたびに城下町の情緒が打ち消されて行く。
富士の忍野と同様、好きな所が俗化されるのは寂しい。
Yanagawa Tojima residence
庭園は国の名勝。
庭園は良いとして、建物に驚いた。 まるで、殿様の隠れ家のようだ。
内装が非常に上品で快適。女性に好まれる繊細な仕様だ。
映画蝉しぐれに登場したお手かけの女性の隠れ家のようでもある。
殿様がお茶をたしなむために使われたといわれているが、実際は素敵な女性と親密な時間を持つ目的で使われたのではないだろうか。
大牟田
Omuta meganebashi
鍵がかかっていて中に入れない。遠くから眺める。
Mitsui Miike Miyahara coal mine
夕日にレンガと鉄骨の縦坑廃墟がシルエットを描く。
ここで働き、生活し、死んでいった人々と日本の経済の歴史を刻む、貴重な遺産だ。
10年程前訪問したときには、まだあちことに炭鉱労働者の集合住宅、通称「炭住」があった。
とても暗い印象だったが、今ではすっかり取り払われ、野原に戻っていた。
戦後の栄光の時代を生きた三井鉱山も哀れな状況だ。
あの時撮影しておけばよかったが、後の祭り。
かろうじて残っている数軒を撮影することができた。
隣接して熊本県荒尾市
Mitsui Miike Banda coal mine
こちらは、さらに廃墟印象が強い。
トンネルのアーチ、レンガの建物、縦坑鉄骨、作業小屋。
この建物は各種映画のロケにぴったりだ。
今日の一番のインパクトは炭鉱遺産。ショックを受けた。炭鉱労働者を偲ぶ。
ぬばたまの よるのやみをと きしみたつ わがなりわひは ちのそこにあり
かなりやと ともにいりぬる やみがらす あすをもしれぬ いのちならなくに
大牟田にて
温度と湿度が高く過酷な労働だっただろう。閉所恐怖症の自分には耐えられない。
愛する家族のために命と引き換えに働いた人々。
多くの炭鉱事故を偲び、涙する。
日が暮れて、今日の宿探し。
山鹿温泉のまったりとした泉質が好きなのだが、時間が遅く、好みの宿が見つからない。
近くの玉名温泉へ。
Tamana onsen Chikusuien
一人なので古くて安い部屋にしたが、昨夜に負けないくらいの料理が出た。
湯はかけ流し。透明でさっぱりしている。
露天風呂はぬるめで気持ち良い。24時間入浴可能なのも嬉しい。
外来入浴客も積極的にとっており、ちょうど大勢の高校生でごったがえしていた。
若くてもマナーは良い。
深夜にもう一度入浴。やはり数名の外来客と一緒になった。
今夜は24日の月か。そろそろ細い三日月だ。