MONTHLY WEB MAGAZINE Jan.2011
■■■ 年末の九州文化財紀行 瀧山幸伸
この時期の九州はオフシーズンなのでその土地の本音が見えるのだが、今回もまた雪に悩まされた。大きな目的地は三つ。
一つ目は、世界遺産正式登録の有力候補と思われる長崎を中心とする隠れキリシタン遺跡の調査。
昨年は主に五島列島と佐世保平戸など北部を回ったが、今回は長崎以外でリストに掲載されている天草の崎津や大江、福岡の今村。
そして世界遺産リストには入っていないがキリシタン大名大村忠純やルイスフロイスゆかりの隠れキリシタン史跡である横瀬浦殉教地などを重点的に回った。出津はあいかわらず補修中だ。
世界にも稀な殉教者の多さは日本人の世界観の特殊性ゆえかも知れない。
二つ目は、大分の国東半島を中心とする独特の文化、主に六郷満山文化の調査。
世界遺産への動きが加速されマスコミや観光業界に蹂躙される前に調べておかなければならない場所が多くあり、予備調査の二回目だ。
国東の六郷満山文化は、鎌倉時代を最盛期とした神仏混合であるが、キリシタン大名大友宗麟の影響で当地にも隠れキリシタンがいた。
日本のマルコポーロとも言われ、ローマカトリックが列福した「ペトロ岐部と187殉教者」のペトロカスイ岐部は国東の岐部出身である。
竹田の隠れキリシタン洞窟などに比べ国東での実態はよくわからないが、岩戸寺の子安観音は隠れキリシタンにとってのマリア様とキリスト像であると思われる。
応歴寺の隠れキリシタン五輪塔、その奥の隠れキリシタン村と言われている有家など、さらに詳しい調査の必要性を実感した。
『石のマリア観音耶蘇仏の研究』(高田茂/立教出版会)を古本屋で買い求め参考にしているが、本に掲載されていない地では、隠れキリシタンが世間を欺くための子安観音なのか、単なる民間信仰の子安観音なのか、判断に迷う。
三つ目は、サステイナブルシティと重要文化的景観の研究関連で、日田の小鹿田焼きの里への訪問だ。小鹿田焼きの里の唐臼の音に癒される。
All rights reserved 無断転用禁止 登録ユーザ募集中