Monthly Web Magazine Sep. 2019
9月に入り秋めいてくるのかと思いきや、残暑が続き蓄積夏バテで、カメラ持ってルンルンという雰囲気ではない。
しかし確実に秋は訪れているようで、魚屋の店頭には、マグロに代わり鮭の解体や生イクラの量り売りなど、色彩的にも健康的で食欲がそそられる催事が始まった。
デパートで生イクラのほぐし実演販売
東日本大震災の影響で福島の鮭の遡上数は激減(10分の1)したという話だが、稚魚の放流を行うも、まだ試験運用中でサケ釣りは全面解禁になっていない。
自然の生態系が崩れると元に戻すのは容易でないことを知らされる。
話は変わるが、以前登場した89才の母かね子さんは「塩引き」を毎年12月に調達しお正月の準備とするのが常だった。
山形出身で新潟に住んでいたことのあるかね子さんの「塩引き」という言葉を、私はしばらく新巻き鮭を表す方言だと思っていたのだが、村上に行って別物であることを知った。
簡単に言うと、塩引き鮭は、エラ、内臓をとりのぞいたのち、粗塩をうろこに逆らってまぶして(これを引くと言う)数日置き水で洗ってぬめりを取り塩抜きし、寒風で三週間ほど干す。
新巻き鮭は単純にエラ、内臓を取って、塩漬けにし、塩を洗って干す。塩引き鮭は新潟の村上地方が中心となり広まったものだが、新巻き鮭は北海道や岩手大槌町から広まったという説もある。
どちらも似た作り方だが、塩引き鮭は熟成しているためか独特のうまみがあり、今思えばかね子さんが塩引きにこだわって使い分けていたのだと理解できる。東京に来てからは、塩鮭と言って塩ふり鮭を年中食していたような気がする。
先日89才かね子さんが、そろそろ塩引き買わなくちゃねと真顔で言ったのを見て、食に対するこだわりは、まだらにぼけてしまっても一生残るのだと驚いた。
おばちゃんになった筆者も身の引き締まった塩引き鮭と新米ご飯のコラボが懐かしく、今年は村上からお取り寄せしてみようかと思う。
今月のニャンコ
観光客は立ち入り禁止だが、住猫は良いらしい。
売り物のヒジキの干場を闊歩する猫
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