Monthly Web Magazine Jan.2021
■ 2020年の桜と紅葉 瀧山幸伸
桜も紅葉も、巷で喧伝される騒々しい観光地は好きではなく、なるべく人がいない目的地に絞っている。昨年は団体や海外からの観光客をほとんど見かけなかったので、普段は避けるような観光地でも静かな桜と紅葉に出会えた。
桜は南西から北東へ、紅葉は逆向きに、渡り鳥かアサギマダラのように巡るのだが、盛りの期間が短いうえ、近隣の文化財調査を兼ねているので、いつも時間切れで終わってしまう。
昨年訪問した桜と紅葉のうち印象が良かったものを訪問日順に整理してみた。
■ 新年雑感 大野木康夫
あけましておめでとうございます。
毎年、家内が友人と作ってくれるお節料理の写真をアップしていますが、今年はそれぞれの家で分担して調理し、大晦日にシェアする方式で作ってくれました。
昨年以来、新型コロナウイルス感染症の影響で撮影に行く機会がめっきり減りましたが、私の職場でも暮れに感染者が出たことにより、正しい知識を持つことの重要性を痛感しました。
報道やネットの書き込みは「検査ができていない」、「対応が不十分」といった情報を垂れ流しますが、私の体験では、精密な疫学調査(感染者や職場からの聞き取り、場合によっては現地調査)が行われ、感染する可能性がある人は濃厚接触者としてPCR検査を受けたうえで、感染者と最終接触した日から2週間の外出制限要請を受けます。
これにより、職場の業務は多大な影響を受けましたが、他部署からの応援や臨時の外部委託対応により、なんとか乗り切ることができました。
また、それまでは、マスクは「自分が感染しているかもしれないから、人に感染させないために着けるもの」と考えていましたが、ウイルスを含む飛沫が口や鼻から入って粘膜に付着して感染するだけでなく、飛沫が付着した手で鼻や口の粘膜を触ることでも感染しやすいと保健所の方から説明を受けたことにより、マスクを着けていれば無意識に鼻や口を触ることが物理的になくなるという意味で、感染にも非常に効果があるものであると知りました。
最後に、感染者は厚生労働省の基準に従い、他の人に感染させる可能性がなくなった時点で保健所の管理下から離れますが、感染したことにより引き起こされた症状(味覚や嗅覚の障害、肺炎症状)は残ります。
感染した人は、後遺症や「どうして感染してしまったのか。」といった悩みを抱えながら職場に復帰することになるので、職場としては、報道やネットの情報で必要以上にナーバスになっている他の職員に対し、丁寧な説明を尽くしたうえで元感染者を職場復帰させる必要があります。
「正しく恐れる」という短い言葉の中には、最低限このようなことが含まれているということを、皆が理解することが大事であると思います。
そんなこんなで、昨年12月初め以来、撮影に行けていなかったことから、9日の早朝、リハビリがてらに西本願寺に行きました。
普段であれば早朝参拝の団体さんの姿が見られるのですが、この時期、そのようなこともなく、ほぼ無人の境内で撮影をし、1時間ほどで早々に帰宅しました。
現在の状況ではこれが精一杯と思いますが、状況に応じて、撮影を再開していきたいと思います。
■ 「牛」の彫刻 酒井英樹
明けましておめでとうございます。
今年は丑年。干支は「辛丑」です。
初めてWEB-MAGAZINEに書いたテーマは「辛卯」。同じ「辛(かのと)」だったので、早いもので十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)が一周したことになる。
「丑」の象徴としてあてられる動物は牛。
そこで、例年の通り(といっても10年間で3回目ですが・・・)、国指定の重要文化財重要文化財建造物にある「牛」の彫刻、撮影してきた内公開可能な写真から探してみた。
<十二支の内の一つとしてデザインされた彫刻>
五重塔のように3間×3間の平面を持つ場合、柱間は12となりそれぞれの柱間の中備(蟇股)に十二支が一つずつ配されている。
*日光東照宮五重塔(栃木県日光市)
*旧寛永寺五重塔(東京都台東区)
上野恩賜動物園内にあり鳥糞害に晒されて放置されていた状況
*本門寺五重塔(東京都大田区)
*北口本宮富士浅間神社神楽殿(山梨県富士吉田市)
*南宮神社高舞殿(岐阜県垂井町)
*備中国分寺五重塔(岡山県総社市)
*神部神社浅間神社少彦名神社本殿(静岡市葵区)
桁行3間×梁間2間(柱間が10間)の平面を持つ。外面の10個の蟇股には寅(虎)から亥(猪)が配されている。
内部に子(鼠)と丑(牛)が存在する。(通常非公開) 公開時に外部から撮影したため不鮮明ですみません。
*箸蔵寺本殿(徳島県三次市)
十二支中、未(羊)は未確認、それ以外は確認済み
*箸蔵寺護摩堂(徳島県三次市)
十二支中、戌(犬)と亥(猪)以外は確認済み
<牛を単独でデザインされたもの>
*英勝寺仏殿(神奈川県鎌倉市)
*延暦寺根本中堂(滋賀県大津市)
*日吉大社東照宮本殿・石の間・拝殿(滋賀県大津市)
*北野天満宮本殿・石の間・拝殿及び楽の間(京都市上京区)
*専修寺如来堂(三重県津市)
<農耕用や運搬用道具として人との関りをデザインされたもの>
*専修寺如来堂(三重県津市)
*随願寺本堂(兵庫県姫路市)
*名草神社拝殿(兵庫県養父市)
*本願寺唐門(京都市下京区)
<その他>
*築地本願寺本堂(東京都中央区)
*北大農学部第二農場種牛舎(札幌市北区)
これら以外にも詳しく探せばあるかもしれませんが・・、とりあえず今年はここまでとさせていただきます。
来年は寅で虎の彫刻・・虎と龍は数が多すぎて・・兎は10年前に一度・・これまでと同じく気ままに・・パス???して4年後かな・・
■ 積雪の宇和島 野崎順次
伊達家の城下町、宇和島には名庭園が多い。以前から、1月7日―9日に訪問することを決めていた。その日が近づくにつれて、東京地区の新型コロナ緊急事態宣言、大寒波到来などネガティブな要因が立ちふさがってきた。が、ひるまず決行した。
1月7日早朝、大阪からJRを乗り継いで、宇和島に向かった。風がきつく、瀬戸大橋では風速25kmを越えたので、15分くらい緊急停車した。その後、ずっと雪の気配はなかったが、内子駅あたりで、吹雪き始めた。大洲城は吹雪で煙って見えた。
昼過ぎに宇和島に着いた。積雪はない。キャリーバッグに撮影機材を入れて、ホテルから歩いて10分くらいの西江寺、明源寺の庭園を撮影した。その直後に風と雪が強くなり、屋外はあきらめた。いったんホテルに戻り、多賀神社凸凹神堂に出かけ、性文化財の研究に没頭した。
7日の夕方から降雪が本格的となり、8日の朝までに20-30cmの積雪となった。さらに雪が断続的に続いているので、庭園のディテールを見ることはできない。そこで、宇和島城、伊達博物館、天赦園庭園に行くことにした。雪のため、キャリーバッグは使えない。リュックサックを担いだ。宇和島城天守閣へは桑折氏武家長屋門側から登った。途中の石段は乱積みで吹雪の中では足元が不安であった。
天守閣と四方の眺望。外に出ると吹雪の頂点だった。上り立ち門に降りた。
伊達博物館は伊達家の屋敷跡で展示は撮影禁止である。庭園の一部が残る。雪で分かりにくいが池泉鑑賞式で、江戸末期の武家らしい石組が残っているようだ。
名勝天赦園は受付にも園内にも誰もいなかった。雪景色がなかなかよい。滑らないように注意しているのに、凍り付いた敷石に薄く粉雪が積もっているところで、こけて、三脚付きカメラを守ると腰骨で着地してしまった。アイゼンなしでは不可抗力である。出るときにはじめて係員の人がいて入場料を払った。
ホテルに戻る途中で遅めの昼食を食べた。長いネギ入りかき揚げそばである。うまかった。
■ 蟇股あちこち—9 中山辰夫
「初期透かし蟇股」の遺構として、平安時代後期の四例の紹介が終わり鎌倉前期に入ります。蟇股がどのように伝播し、形状変化してゆくのか興味津々です。
ここからは平安時代後期から鎌倉時代前期に創建された社寺の代表例を羅列します。すでに板蟇股で紹介しました社寺も含みます。
順序については、建立時期と再建時期が交錯しているケースがあり、順不同と思ってください。
訪れた社寺を軸に紹介しておりますが、未訪問の社寺は画像を引用させて頂いたもので紹介しております。
■ 2020年を振り返って―コロナ禍に思う― 川村由幸
毎年、新年1月のウェブマガジンのテーマは前年の振り返りです。
残念ながら振り返るほどの取材内容がありません。コロナ
コロナで出かけることもままならず、シャッターを切る機会が大幅に減少してしまいました。
仕事で東京に出る以外、隣県の茨城には数回出かけましたが、それ以外千葉県を離れることがありませんでした。
千葉県は昨年のコロナ禍の初めから感染拡大が他県に比べて激しく、他県への訪問が憚られました。
そして現在も一都三県で緊急事態宣言が再発令される状況となり、さらにまた行動が制限される状況となりました。
コロナを含む病になっても治療が受けられないという医療崩壊が目前に迫っている中、思いのほか世の中、平和です。
都心の盛り場には新年の三連休、多くの人出があるようですし、最初の発令時よりもゆるみが見られます。
仕方がないでしょうね、11、12月は政府がGo
Toキャンペーンで目一杯アクセルを踏み続けていたわけですから。
手の平を返すようにブレーキを踏んでもすぐには止まらないのが道理です。
対策が後出しに見えるのは私だけでしょうか。経済が大切でないとはもちろん思いませんが、まずなすべきは感染拡大防止でしょう。
オリンピックは本当に開催するのだろうかとか、はやくワクチン接種が始まればいいのにとかそんなことを考えながら、自宅に閉じこもっています。
昨年はここに載せるほどの取材活動ができませんでした。載せる程の画像もありません。
今年はいつ頃になれば、自由に動けるようになるのでしょう。いつになったら思い切りシャッターを押せるのでしょう。
「出来る我慢もそろそろ限界」 そんな気分が蔓延し始めているのでしょうか。
■身近な野鳥の季節 田中康平
冬になると色々の鳥が渡ってきて鳥見にはいい季節となる。例えば九州では鹿児島県出水の1万羽を越えるツルの飛来が知られているが、身近なところでも、おやという野鳥に出会えるようになる。コロナで出歩く機会が激減している現状だが手近に自然の移ろいが楽しめるのがいい。
自宅から歩いて5分ほどの街中の公園でも結構野鳥が面白い。今冬の目玉はトラツグミの飛来だ。すぐ横の広場では子供たちが球技で元気な声を上げたりしているのだが悠然として草原で体をゆすって土の中のミミズをとっている。トラダンスといわれるが全体としては動きが緩慢なので景色に溶け込んでしまって見逃してしまう。子供たちが追いかけることもない。この鳥は冬は暖地で過ごし夏は山や北海道など涼しいところで過ごす国内を移動するだけの漂鳥と見られている。見る機会がそれほど多くない鳥で見つけるとうれしくなる。
カワラヒワは国内を移動するどこにでもいる鳥だがまれに大柄で美しいオオカワラヒワが混じっていることがある。今冬は同じ近くの公園でセイタカアワダチソウの実を4羽のオオカワラヒワが頻りに食べているところに出くわした。茫々とした雑草の茂みは野鳥が好む場所でこの公園もこれ以上手を入れると野鳥の数が減りそうだ。見栄えのいい整った公園には面白い野鳥は現れにくいように思う。
この季節では他にはシロハラが多い。渡ってきて直ぐは人に対する警戒心が強くなかなかしかと姿を見れないが、この頃になると落ち着いてきて見やすくなる。今年はシロハラやアカハラの仲間のマミチャジナイがここへちょっとだけ姿を見せた。これもここらではめったに見ない鳥だ。寒い冬のせいだろうか。
コロナと寒波の冬もこんな風に過ごせば満更でもない。
写真は順に1,2:トラツグミ 、3,4:オオカワラヒワ 5:普通のカワラヒワ、6:シロハラ 、7:マミチャジナイ
■ 「茶々丸」 柚原君子
人は犬派と猫派に分けられると言う。犬派は群れを好み、Grでお茶飲みを好み互いを褒め,モミ手をするように楽しむ。他方猫派は一人を好み、時々訳のわからない自分勝手行動をするのではないか、とまあ、猫派である私の狭い範囲からの見解。
昨秋、コロナ故猫を飼う案が家族会議で可決された。
コロナ故出掛けられないので家で皆が楽しめるように。
孫が五年生になったのでそろそろ自分の責任で動物を可愛がったりお世話ができたりの親からの希望。
家族全員でお国から50万円貰ったけれども、コロナにビビる我が家はどこにも出掛ける予定がない……のでお金を回せる……と言うような、数々の理由で,まずは保護猫から模索に入った。
保護団体を何ヶ所かまわったが,見学の都度1000円寄付が必要。もらい受けるのに論文が必要(貰う理由から家族構成からなぜ猫が必要なのか、かなりしつっこいものを求められた)←結果、論文が通らずに譲れない、と言われた日には少しむっとした。
くわえて保護猫シェルターであるにもかかわらず子猫がやたら多い上、もらい受けるだけで8万円くらいかかる……何か変,という疑問生じた。今時のことでネット情報をさぐると、子猫を産ませて売っている可能性もありトカ。
それならば,多少高くってもペットショップで出自の正しい猫を!に家族全員の気持ちがシフトした。お国から貰った50万円がある。強気である。
ある日、孫の希望する茶色の猫、生後一ヶ月に出会う。スコティッシュフォールドの立耳、垂れ目の丸顔。茶系のタビー。まだヨロヨロしている感じ。血統書付きだけど、30万円平均の種類が、なぜが23万円の値札。ショップのオーナーに聞くと「少し食が細いので」と言う。育たないということですか?「いえいえ、それは無いです,大丈夫と思います。色の出具合がちょっとなので、ご了承いただければ」、とだんだん小声に。けれど、出会いの不思議があり、私は見た瞬間にこの仔は絶対に我が家にやってくると直感。その後、家族全員で見に行ったが全員そろってOK!我が家に迎えて『茶々丸』と命名。年賀状に『家族が一人増えました』と書く事ができた。
食が細いといわれたが今は一日中食べ物を探して、ゴミ袋に頭を突っこみ、家族の食事中にはテーブルの上に手を出し、おこぼれがないかと,食卓付近を徘徊している。カーテンはよじ登られて一部にかぎ裂きができ、つめを研がれはじめた壁は一部ボロボロになっているが,叱りもせずにアララ~といいうだけである。家の中に無条件に可愛い動く物がいることはなんと心が和むことか。コロナ禍の外出不可のイライラを救ってくれている。
私は生まれてからずーと生活のページに猫がいた。茶々丸は通算10匹目の猫となる。この年で猫を飼えるとは思わなかった。娘との同居は少し窮屈だが,猫が飼えたことで良かったと思っている。ちなみに私の年を考えて「猫が先かお母さんが先か」と口の悪い娘には言われている。確かに私の健康余生と猫の寿命はどっこいどっこいだろう。猫に負けずに頑張りたい!と思う。
■ おばちゃんカメラマンが行く 西教寺@滋賀県大津市 事務局
あけましておめでとうございます。
コロナの報告があってから丸一年。毎日ニュースで状況確認をしつつも終息の目途が立たず、行動自粛や三密回避では限界かと思われ、ジャパジオ的には、撮影旅行はどうしたものかと悩んでしまう。
こうなると庶民は八百万の神に頼りたくなるのはいつの世も同じだ。
妖怪神アマビエやそのグッズ、疫病退治のお守り、家の戸口に貼られている角大師の護符など頻繁に耳にするようになった。
昨年秋、東京 深大寺で秘仏元三大師木像を公開しようという話があったが、密を回避するため中止となった。
元三大師は特に疫病退散のご利益があることで有名だ。
元々比叡山の高僧で、良源という名前だが、元日三日(一月三日)に入滅したので、通称元三大師と言われている。
人並外れた霊力を持ち、様々な姿に変わって人々を救ったと言われている。
角大師もその一つで、鬼の姿となって疫病神を退散させたそうだ。弟子がその姿を写し取って版木を作り護符として刷ったものを人々が家の戸口に貼って疫病や厄災を払ったそうだ。
昨年11月西教寺に参詣した折、コロナ禍の特別開扉で、元三大師坐像等を拝観することができた。その横に角大師木像もあり、護符は有名だが角大師像は珍しく、初めて拝観したような気がする。このご時世、ついつい拝む手に力が入ってしまう。
西教寺の角大師は一見ぎょっとするが、よく見ると目がクルリとしていて護符とともにとても愛嬌のある大師だ。他の寺の護符、特に大御所の比叡山延暦寺横川元三大師堂のおどろおどろしいそれと比べると疫病を戸口で防いでくれるとは思えない可愛いお顔つきだ。
蛇足だが、元三大師はおみくじの創始者といわれ、西教寺でもこの元三大師像の横におみくじ引き箱が置いてあり、拝みながらおみくじを引くことができる。もちろん有料だが、最強のおみくじに違いない。
「そうだ京都、行こう」も角大師の特別御朱印めぐりを企画して疫病除けのご加護を授かりましょうと謳っている。(元三大師ゆかりの曼殊院、蘆山寺、青蓮院)。護符は通販でも入手でき人気らしい。
日本人はこの神頼みに使うエネルギーと転んでもただで起きない商魂パワーで平安時代より疫病や厄災を乗り切ってきたのだろう。
深大寺の秘仏元三大師像は今年の秋東京国立博物館で205年ぶりに出開帳する事になった。元三大師様、拝むなら今でしょうということらしい。
好きな時に好きな所に行ける日が来ますように。今回も早い終息を願うばかりだ。
★今月のニャンコ
ネコ文字「祝」? 福岡県新宮町 相島
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Japan Geographic Web Magazine
Editor Yukinobu Takiyama
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