Monthly Web Magazine Mar. 2015
■■■■■ 観梅にもいろいろあって 大野木康夫
2月から3月にかけて、全国各地の梅の名所は賑わいを迎えます。
梅の名所は大きく分けて二つの類型に分かれるような気がします。
一面に広がる梅のじゅうたんのような大展望型の梅の名所
栽培用の梅林を観光用に開放しているものが多いので、個々の木よりも大景観が魅力です。
写真では伝わりませんが、花の盛り時期、一面に匂いたつ梅の香りも楽しみです。
梅の栽培地なので普段は静かですが、この時期は大勢の人でにぎわいます。
整備された梅園や社寺
普段から手入れされている観賞用の木なので、観賞用の鮮やかな花が咲き誇ります。
梅にまつわる故事や伝説なども魅力の一つです
こちらには、端正に手入れされた盆梅も入ると思います。
数ある梅の名所では、形はどうあれ、花を愛でるのが基本となっていますが、京都市山科区の勧修寺は、それとは異なる「梅の名所」です。
勧修寺は、梅の名所として多くのところで紹介されています。
しかし、境内に大きな梅園があるわけでもなく、開花する梅の木も10本程度しかありません。
勧修寺が梅の名所とされるのは、書院前の「臥龍の老梅」が有名だからです。
臥龍の老梅は、江戸時代に京都御所から移植されたもので、樹齢は約300年です。
臥龍の老梅の全景
親木はすでに花をつけておらず、子、孫の木がわずかに白い花をつけており、地味な感じです。
しかし、説明板を見ると、臥龍の老梅の見どころは「花ではなく幹」とされています。
親木は花を付けませんが、たしかに、龍が這っているような姿をしており、根が付いているので朽ちずにその姿を長年保っているということで銘木となっているということでしょう。
子や孫の花は控え目ですが、重要文化財に指定されている書院に映えていい雰囲気です。
樹齢750年といわれ、書院前に大きく広がるハイビャクシンの迫力との対比も面白いと思います。
花を期待して来られる方には少し物足りないような気がしますが、「梅の名所」として知られるのも分かるような気がしますが、この時期は、境内の氷室池で、アオサギが巣作りの真っ最中でした。
家に帰ると、我が家の庭の梅も今が盛りです。