JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine June 2018

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■  東洋のリビエラ? 瀧山幸伸

最近は離島を巡ることが多い。離島に関する各種の記録は非常に興味深いものが多く、訪問は長年の願いだったが、時間がかかるので後回しにしていた。

5月に訪問した甑島馬渡島鷹島、いずれも独特の歴史と文化を持つすばらしい島だった。

特に保戸島については数十年来の強い思いがあった。

戦争も終結近い7月25日、米軍の国民学校爆撃により児童124人(1年生と5年生全員と他数名)と教師2名が犠牲となった事件。その現場と犠牲者が眠る寺を訪問したいと願っていた。

この島はマグロ漁で栄え、狭い土地に密集できるようほとんどの家は鉄筋三階建て、その風貌はまるで東洋のリビエラとも呼べるようなきらびやかさがある。

  

だが、島内を歩けば御多分に漏れずほとんどの家が空き家で、その数は300を超えるという。

島の子供は小学生1人、中学生ゼロ、赤ちゃんが1人だけ。

70台のおばあさんに導かれて念願の海徳寺へ。犠牲者に手を合わせることができた。彼女の兄と姉も犠牲になったという。

  

その後小学校前にある慰霊碑に向かった。

 

裏の堤防から学校の全景と背後の山(海軍の通信施設があった)を撮影して、どのような理由で爆撃(誤爆)されたのかを探っていたら、80台のおばあさんが近寄ってこられた。

お話を伺うと、やはり弟と妹を亡くしたという。自分は校舎が違ったので助かったそうだ。

 

彼女らの話に眼が潤んだ。

この島の未来を想うと、離島ならではの空き家活用法があっても良いのではなかろうか。建築に数千万円かかった家が50万円で買えるらしい。

単なる釣り人の別荘となるのではなく、離島ゆえの閉鎖性を活かした国際交流プログラムなどの利用法も考えられるだろう。

マグロ漁の島だったので住民の方も国際性が高く、盛時はインドネシアの乗組員も大勢住んでいたという。

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