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Monthly Web Magazine   Oct. 2023


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■蟇股あちこち 42 中山辰夫

今月は京都です。教王護国寺(東寺)と醍醐寺と御香宮神社です。いずれも有名な社寺ですから説明不要です。
御香宮神社は重複ですが、補足分を含めています。十二支の蟇股が配されています寺院大光寺も含めました。


教王護国寺(東寺)


京都市南区九条町1

東寺は、東寺真言宗の総本山です。別名は教王護国寺。創建は平安時代初期、都と国家鎮護のために開かれた官寺です。
平安時代は一時衰退しましたが鎌倉時代以降は隆昌しました。天皇家や足利氏、豊臣氏、徳川氏の庇護を受け、再々伽藍を再建しています。
現在の境内伽藍配置と規模は建設当初と同じです。伽藍は室町後期から江戸初期のものでほとんどが国宝に指定されています。
特にシンボルとされる五重塔は日本最大の規模です。国宝五件、国重文八件を数えます。
弘法大師の月命日の二十一日には「弘法さんの縁日」として多くの参拝者で賑わい、市民にも広く親しみ、昔も今も京都の心のより処です。

全景あちこち
        

蟇股を軸に巡ります。先ずは「門」からです。

■南大門 国重文 移築:1895 三間一戸 八脚門 切妻造 本瓦葺 正面戸背面の意匠はほぼ同じです。
□正面~背面
    
九条通りに面して東西に延びる築地塀のほぼ中央に建つ東寺の正式な入口です。ここから境内に入ると、金堂、講堂、食堂が並んでいます。
三十三間堂の西門として豊臣秀頼の寄進で建立されたものが焼失したため、三十三間堂から移築されました。

□妻部
    
東妻も西妻も同じです。妻飾りは二重虹梁で、平三斗と花肘木を組み合わせたものが見えます。内部は格天井が張られています。少し装飾の多い作りです。

□妻飾細部
   
妻壁には、木鼻のような部材が付き出ています。上下虹梁の間に、大きな木鼻があり花肘木を用いています。蟇股を2個配しています。

□組物
      

□向拝の蟇股
正面側
   
背面側
   

□間斗束
 

□虹梁周辺
         
蟇股は正面側、背面の虹梁に多く配されています。

■蓮華門 国重文 建立:鎌倉後期 三間一戸 八脚門 切妻造 本瓦葺 西面 正面側、背面、妻
    
死期を悟った空海がこの門を出て高野山に向かった、その足跡から蓮花が咲いたという伝説から名称となりました。
円柱、柱上が絞られています。柱は円柱。中備は間斗束、格天井。妻壁は二重虹梁 妻飾りは古風な板蟇股。
   
板蟇股は両妻の二重虹梁蟇股式の架橋部に用いられています。 足元の先端を斜めに切り落とした形で、平等院鳳凰堂の板蟇股の形を引継ぐとされます。

■北大門 国重文 再建:1601 三間一戸 八脚門 切妻造 本瓦葺 北面
      
柱は円柱、柱上は平三斗。中備は間斗則。軒裏は二軒繁垂木妻壁は二重虹梁で板蟇股を配しています。

■北総門 国重文 建立:鎌倉後期 一間一戸 四脚門 切妻 本瓦葺
       
八条大路の南側に建ち、外郭築地塀に開く唯一の四脚門です。
側面に付く大仏様の木鼻から鎌倉以降の建物と分かります。柱上は大斗と舟肘木 梁の中備は間斗束 妻飾りは板蟇股

■慶賀門 国重文 建立:鎌倉前期 三間一戸 八脚門 切妻造 本瓦葺
     
大宮通りに向かって東面しています。柱は円柱 上部が絞られ散ます。柱上は平三斗 中備は間斗束 中央通路上の天井は格天井 
妻飾りは二重虹梁で板蟇股が配されています。


■東大門 国重文 建立:鎌倉前期 再建:1198 改修:1605 三間一戸 八脚門 切妻造 本瓦葺
□正面側・背面側
     
現在の建物は1198年に文覚上人の大勧進で再建されたもの。1336年、東寺にいた足利尊氏を新田義貞が攻め、危機に瀕した尊氏がこの門を閉ざして難を逃れた故事から不開門と呼ばれるとか。1596年地震で損壊し、豊臣秀頼が1605年に大改修しました。
□妻部 蟇股が配されています
    
柱は円柱、上端が絞られて粽柱で鎌倉初期に伝来したものとされます。柱上の組物は平三斗、軒裏は二軒繁垂木中備は間斗束 門扉は板戸

■食堂
   
1930年に焼失、1934年に竣工。毎日灯明が点され、幻想的な光景を見せています。

□向拝と蟇股 木鼻
       

三重塔、金堂、講堂には蟇股は配されていません

■五重塔 国宝 再建:1643 三間五重塔婆、本瓦葺 抱く:中井大和守 総高55mに及ぶ現存最大の塔 和様
    
心柱が心礎まで達し、初重に縁が設けられないなど、古風な手法が多く用いられています。

■金堂 国宝 再建:1603 近桁行五間、梁間三間、一重裳階付、入母屋造、本瓦葺 豊臣秀頼 和様と大仏、禅宗様の折衷。
     
旧堂の規模を踏襲した大型の仏堂。木割太く雄渾な気風をもっています。
堂々とした屋根です。裳階が中央で途切れて小窓となった中に、開扉のときには本尊の光背が望まれます。

■講堂 国重文 建立:1491 桁行九間、梁間四間、一重、入母屋造、本瓦葺
     
1486年に焼失、1491年に再興。創建当初の基壇・礎石の上に建っています。

■手水舎
    

■灌頂院 
 
844年頃建立。度々火災に遭遇、現在の建物は1634年に竣工したもの。密教の重要な道場でした。通常非公開、4月21日のみ公開
北門と東門があります。年に二回、合計6時間のみ開門されます。

□東門 国重文 建立:鎌倉前期 四脚門 切妻造 本瓦葺
     

□北門 国重文 建立:鎌倉前期 四脚門 切妻造 本瓦葺
    
板蟇股が両門の妻の虹梁上に配されています。

■八幡社殿 塔頭の灌頂院と向い合っています。
    

西院に入ります。

■本坊(事務所) 玄関と入口門 
□入口門 一間一戸 薬医門 切妻造 本瓦葺 玄関は向唐破風 銅板葺
    
柱は角柱、柱上には肘木(女梁)が使われ、その上で椀木(男梁)が軒桁を持ち出しています。妻飾りは間斗束。かなり凝った造形です。


□玄関 向唐破風 銅板葺 進入禁止 破風板の兎毛通や妻飾りの笈形と大瓶束
    

■勅使門  建立:1934 一間一戸 妻入唐門 檜皮葺 木材は全て木曽ヒノキとされます。
    
正面梁間の中備は蟇股、菊の花の彫刻です。妻虹梁の上は笈形付大瓶束 門戸は桟唐戸 左右に植物の彫刻 桟唐戸上の花狭間には菊の紋の彫刻
□細部
  
主柱は円柱、控柱は角面取りの角柱。上部は絞ってないです。木鼻付、組物は出三斗。

□蟇股
   
妻虹梁の上は笈形付大瓶束、正面梁間中備えの蟇股は菊の花

□桟唐戸
    
上部の花狭間には繊細な造形の透かし彫りの菊の紋

西院内へ入ります。
西院は教王護国寺(東寺)の西北一廓を占める別院で、大師堂は西院の中心建築です。弘法大師の住房を佛堂としたものです。
大師の念持仏、国宝・不動明王像(秘仏)一躯が安置され不動堂とも呼ばれていました。
現在の建築は1380年1390年に、北に前堂が附加されましたがなおよく住房の形式を伝えています。
太子堂と司馬遼太郎
  

■入口の門 一間一戸 四脚門 切妻像 本瓦葺 
     
妻飾りは板蟇股、飾り金具でカバーされています。梅鉢懸魚が見えます。

■大師堂(西院御影堂) 国宝 桁行七間、梁間八剣、前堂・後堂・中門よりなり、洗練された住宅風の造りとなっています。
    
現在の建物は、室町幕府三代将軍足利義満と公家の援助により、1380年に再建されたもので、さらに1390年に一部を改造して北面に前堂徒中門を付加しています。その建物は室町時代に焼失。その後再建、増築されたのが現在の大師堂です。は、当時造営にあたり空海が墨ならわした故地です。
建具に蔀を用い、高欄を組んだ、住房らしい気品ある佇まいです。御影堂は一周すると各面の様相が異なり、複雑な構成になっています。 

■前堂 桁行四間、梁間五間、一重、北面入母屋造、南面後堂に接続 1390年に増築されたヵ所
    

■中門 桁行二間、梁間一間、一重、西面切妻造、東面前堂に接続、総檜皮葺" 厨子1基
     

■後堂 桁行七間、梁間四間、一重、入母屋造、北面西端端二間庇、すがる破風造、東向向拝一間

     

■大日堂
  

 


醍醐寺 

京都市伏見区醍醐伽藍町

上醍醐


醍醐寺の起源は 874年頃聖宝理源大師(法然の方孫)が醍醐山の山上に、観音を祀り、草庵を営んだことに始まります。
907年醍醐天皇の勅願寺となって以後、飛躍的に発展し、山上と山下の伽藍が整備されました。
室町時代は将軍家の帰依を得、最盛期を迎えました。しかし応仁・文明の乱で衰退、桃山時代に豊臣秀吉・秀頼により復興されました。

山上の上醍醐の伽藍は、清瀧宮拝殿、薬師堂、五大堂、如意輪堂・開山堂・等が所在します。蟇股は薬師堂、開山堂に見られます。

清瀧宮は、総鎮権現を祀る社です。上醍醐に祀られていましたが、1097年に山上と山下に分祀されました。
現在の下醍醐の清瀧宮本殿は1599の再建です。上醍醐の清瀧宮拝殿は1434年の再建で国宝です。

■清瀧宮拝殿 国宝 再建:1434 懸造 桁行七間 梁間三間 一重 入母屋造 妻入 向拝三間 軒唐破風付 檜皮葺
        
室山時代の建物です。寝殿造りの手法を活かした気品ある風格を備えています。懸造理の構造になっています。

■薬師堂 国宝 建立:1121 桁行五間 梁間四間 一重 入母屋造 檜皮葺
    
薬師堂は上醍醐伽藍の中央に位置視、913年に醍醐天皇の御殿堂として創建されました。水平観を強調した落ち着いた建物で、平安後期の気風が見えます。
勾配の緩い屋根、全高も低く、優美な姿です。身舎は格子戸や土壁により囲い込まれています。

□蟇股 優雅で魅力的な蟇股です。
    
本蟇股は薬師堂内陣に見られます。平安後期から現れた現存最古の蟇股です。
組物と組物の間は、下段を間斗束、下段を蟇股とする新しい意匠です。
蟇股は二つの材を中央で合せて作られ、肩が大きく脚部が細すぎて弱弱しい欠点がありますが、建築細部を賑やかにする役を果たしています。

□宇治上神社本殿と、中尊寺金色堂に用いられているものと併せて天下の三蟇股といわれています。
醍醐寺薬師堂(1121)―中尊寺金色堂(1124)―宇治上神社(1185)
      

■五大堂
  
913年に醍醐天皇の御願堂として創建されました。現在の胴派1940年に再建されました。

■如意輪堂 国重文 再建:1606 懸造 桁行五間 梁間三間 一重 入母屋造 妻正面 杮葺
   
創建は876年とされ、現在の建物は1613年建立です。

■開山堂
開山堂 国宝 再建:1608 上醍醐 桁行八間 梁間五間 一重 入母屋造 妻入り 向拝三間 軒唐破風付 前部檜皮葺 後部柿葺
     
911年に建立され、焼失、再建を繰り返し、1606年に秀頼が再建しました。
開山堂は寺院の開山の像を安置する場所で、開山は寺院に最初に住した僧侶を指します。開山堂は祖師堂、御影堂、影堂などとともいわれます。
開山堂には、開山、聖宝・理源大師と弟子観賢と空海の像を安置しています

□妻飾りの蟇股 二重虹梁大瓶束下蟇股
   
南は透かし蟇股で、彫り物は無く、元の構図は不明です。北側は板蟇股で渦、若葉付です。

■向拝 正面側と背面側 蟇股が三個並んでいます。
   
正面三間に向拝が付随し、その中央部分は唐破風構えです。唐破風には兎の毛通が付きます。木鼻は木瓜型の象鼻風で極めて進歩的な渦とされます。

□向拝の蟇股 透かし彫り蟇股で、中央は「龍」、東は「唐獅子」、西が「虎」です
向拝中央 表面(龍)~裏面(雲)
   
向拝東側 表面(唐獅子)~裏面(ボタン)
  
向拝西側 表面(虎)~裏面(竹)
   

この彫刻は御香宮神社本殿(京都・重文)の向拝のものと非常に構図が似ていて、同じ大工のグループが製作したとされています。
御香宮神社は家康が寄進したもので、秀頼の寄進した開山堂に家康に属する大工が加わったことの証拠にもなり、興味あることです

□御香宮神社向拝 (再建:1605)
   

■厨子 内部厨子中央部~西川~東側~内部造りつけ厨子
       

□厨子蟇股 
東側 金鶏
 

中央 桐に鳳凰
 
西側 松にさぎ

 
中備えに透かし彫り蟇股を一本木から造り出していますが欠失しています。中央は「桐に鳳凰」、西に「松にサギ」を彫っています。中央部には支輪の上に虹梁を渡し、その上に板蟇股を置いています。

唐破風部の蟇股
 


醍醐寺 下醍醐 

下醍醐には金堂(国宝)・五重塔(国宝)・西大門(府指定)・女人堂(府指定)・清滝宮本殿などの諸堂が並んでいます。蟇股を主に回ります。

■清龍宮本殿 国宝 再建:1517 三間社流造 檜皮葺
     
斜面に建ち、南面が懸造。軒唐破風をもつ東妻の立面 蔀や疎垂木の使用など、住宅風の軽快な意匠が用いられています。

清瀧宮は、総鎮権現を祀る社です。上醍醐に祀られていましたが、1097年に山上と山下に分祀されました。
現在の下醍醐の清瀧宮本殿は1517年の再建です。上醍醐の清瀧宮拝殿は1434年の再建で国宝です。

□向拝と蟇股
     

■真如三昧耶(さんまや)堂 建立:1997
    
朱雀天皇の御願により法華三昧堂として949年に創建されましたが、その跡地に1997(平成9)年建立されました

■観音堂(旧大講堂) 建立:1930
    
観音堂を中心に広がる林泉および弁天堂、地蔵堂、鐘楼、伝法学院などを総称して大伝法院と呼ばれます。
これら諸堂は、醍醐天皇一千年御忌を記念し、1930年山口玄洞居士の寄進により造築されました。
西国三十三観音霊場第11札所上醍醐准胝堂の遥拝所として、准胝観世音菩薩が祀られています。

□身舎の周りに蟇股が配されています
      

■日月門
      
1930年、醍醐天皇一千年御忌を記念して山口玄洞居士より寄進されたもの

■成身院女人堂 府指定 建立:江戸初期 桁行三間 梁間三間 一重 入母屋造 向拝一間 背面庇付 桟瓦葺) 
    
上醍醐の上り口にあります。昔は女性がここから山上の諸仏を拝んだことから通称「女人堂」といわれています。現在の本堂は江戸初期の再建です。

弁天堂 弁才天を祀る
  


醍醐寺を象徴する下記の建物には、蟇股は用いられていません。

■西大門「仁王門」 府指定 再建:1605 三戸楼門 入母屋造 檜皮葺) 唐門(国宝 建立:桃山 三間一戸平唐門 檜皮葺)
  
秀頼が再建しました。安置されている仁王像(国重文)は、もと南大門に祀られていました。1134年に造立されました

■金堂 国宝 建立:平安後期 1600移築 桁行七間 梁間五間 一重 入母屋造 本瓦葺
  
醍醐天皇の御願で926年に創建されました。その後焼失もあって、、秀頼の時代、1600年に完成しました。醍醐寺の中心のお堂です。

五重塔 国宝 建立:952 三間五重塔婆 本瓦葺
  
醍醐天皇の冥福を祈るため、第一皇子・朱雀天皇が936年に着工、第二皇子・村上天皇の951年の完成しました。
高さ38m、相輪は約13m、相隣が搭の三分の一を占め、安定感を与えています。

■三宝院 唐門 国宝 再興:桃山時代 三間一戸比良唐門 檜皮葺
  
唐門は、規模の大きな三間一戸平唐門、扉に桐紋、脇間に菊紋の雄大な薄肉彫りを配した大胆な意匠で、豪壮な桃山時代の気風を反映しています。

醍醐寺の子院で、西大門の西北にあります。1115年に創立されました。1470年の火災で荒廃、秀吉が再興しました。
国宝の唐門と表書院、宸殿や本堂、純浄観、庫裏、玄関が残っています。

 


御香宮神社 本殿


京都市伏見区御香宮門前町

初めは「御諸神社」と称しましたが、863年、この境内から「香」の良い水が湧き出て病気平癒に効験のあることから「御香水」の名を清和天皇から賜りました。
室町時代には伏見九郷の鎮守として崇敬を集めました。
文禄年間(1592~96)豊臣秀吉は伏見城造営にあたり当社を大亀谷に移し、伏見城鬼門の守護神としました。その後、徳川家康が現在地に戻しました。
現存する社殿は徳川家寄進のものが多く、本殿は1605年家康の再建、表門は1622年水戸藩祖頼房の寄進、拝殿は1625年紀伊藩祖頼宣の寄進です。
現在の本堂は、1605年に徳川家康が元の地に建立したものです。
1868年の伏見鳥羽の戦では、当社は官軍(薩摩藩)の屯所でしたが幸いにして戦火は免れました。
本殿は全体の造り、細部装飾とも優秀で、よく時代の特色を表しています。保全状態もよく桃山時代の五間社流造の大型社殿として貴重とされます。
本殿は桃山期の華麗な装飾で飾られています。

豪壮な表門をくぐると正面が拝殿です。拝殿からまとめて行きます
 

拝殿 京都府指定 建立:1625 桁行七間 梁間三間 一重 入母屋造 正面軒唐破風付 本瓦葺の割拝殿 桁行中央一間は馬道
  
紀伊中納言徳川頼宣によりの寄進。1996年に行われた半解体修理で極彩色が甦りました。
拝殿は本殿と同様に、唐破風の彫刻や蟇股、妻飾り、組物などは極彩色に、賑やか彫刻で飾り立てられています。

蟇股は、妻の虹梁上、正面・背面の虹梁上、外部の内法長押と頭貫との間十八カ所に配されています。
透かし蟇股で、中刳りには彫刻が掘られ彩色が施されています。 

妻部の彫刻と蟇股 当初材の西妻のものと新調された東妻のもの
    

正面唐破風内組物彫刻と蟇股 
    
虹梁や唐破風の彫刻に、浪や水が多く取り入れられています。
これは御香宮が境内から芳香を発する清水が湧き出る吉兆がもとになっているとされていることから沢山描かれているとも思えます

馬道背面唐破風内組物彫刻と蟇股
    
蟇股の牡丹唐草は、真中から二つに分かれる様になっています。
母体の一部が分かれて無事に子供が生まれるようにという願いが含まれる、安産祈願の御香宮ならのものとされます。

身舎の蟇股
正面向かって左側から馬道背面迄、九個並べます。
  

蟇股―1 「鷹に松」・「こうのとり」・「虎に竹」
   

蟇股―2 「鳳凰に桐」・「猿に栗」・「瑞兆にシャクヤク」
   
「猿に栗」の寸法 全幅 : (若葉まで) 1,530mm 全高 : (実肘木まで)620mm

蟇股―3 「瑞鳥に菊」・「ぼたん」・(桃に目白)
   

正面向かって右側から馬道背面まで九個並べます
  

蟇股―4 「鷹に松」・「こうのとり」・「獅子にぼたん」
   

蟇股-5 「瑞兆に菊」・「牡丹)・「桃に目白」
   

蟇股―6 「鴛鴦に水葵「オモダカ」」・「雪中の筍堀」・「蓬莱島」
   
彫刻は透かしの中刳に造られ、蟇股の輪郭とは一木で彫られています。
拝殿は本殿と同様に、唐破風の彫刻や蟇股、妻飾り、組物などは極彩色に、賑やか彫刻で飾り立てられています。
彫刻の主題には、身近に実在するものや、空想上の動植物、教育的説話や仙人譚に及びます。
単なる動植物も当時の人にとっては不可思議な力をもったものとされ、架空の動物や、鳥なども実在するものと信じられていたかもしれません。

虹梁や唐破風の彫刻に、浪や水が多く取り入れられています。
これは御香宮が境内から芳香を発する清水が湧き出る吉兆が元になっているとされていることから沢山描かれているとも思えます。

本殿 国重文 建立:1605 前室付五間社流造 向拝三間 檜皮葺  本殿内の撮影は殆どできません。瑞垣の隙間からの撮影です。
    
1605年に徳川家康の命で、京都所司代板倉勝重を普請奉行として建立に着手されました。
全体の造り、細部の装飾共に豪壮華麗で、よく時代の特色を表し、桃山時代の大型社殿として価値が高いとされます。
1990年より着手された修理工事で、約三百九十年振りに極彩色が復元されました。

馬道内部 (本殿へ向かう)
   

本殿に配されている蟇股は向拝3個、正面に5個、妻に2個、背面に5個あります。

本殿妻飾
西側面(西妻) 蟇股は「椿に鴨」 東は「ビワを食べる猿」
   

東側面(東妻) 蟇股は「ビワを食べる猿」
   

向拝の組物と彫刻
    
頭貫、木鼻、蟇股、手狭には彫刻を施し、すべて極彩色に飾られています

向拝の蟇股は三個配しています。 東側表面・裏面 中央表面・裏面 西川表面・裏面
      
蟇股の題材は獣類で、(ボタンに獅子)、(雲に龍)、(竹に虎)の彫り物です。裏表共に化粧した籠彫りです。

身舎の蟇股は正面に五個、背面に五個配されています 

本殿正面の本蟇股です 「桐に鳳凰」「鷹の巣ごもり」「金鶏・銀鶏」「バラに緩鶏」「ソテツに孔雀」
     
「金鶏・銀鶏)の寸法 全幅 : (脚まで)1,100mm 全高 : (実肘木まで)420mm
背面の五個は絵蟇股です 「万年青(おもと)」「芙蓉」「もみじ」「菖蒲」「シャクヤク」
     
背面側は裏側のため彫刻でなく絵でかいて省略したと思われます。背面とか見えない所を簡略化することはよく行われたようです。

表門: 1939年解体修理工事行われました

表門の建立は1622年、水戸藩祖、徳川頼房の寄進で、伏見城の城門を移建したものとされています。
建物の形式、様式からすると木割太く、豪快な軸組、屋根に鯱を戴いた外観は城門に相応しい多くの要素が認められ、時代的にもその頃の建築とされます。
細部意匠は極めて細やかで、特に冠木上四か所に並ぶ蟇股は、内刳りに精緻で写実的な彫刻を施し、題材も二十四考の内の「孟宗」「唐夫人」「郭巨」「楊香」の情景を選び、精神世界を発露しています。

表門 国重文 建立:1622 三間一戸門 屋根切妻 本瓦葺
     

東・西妻飾部の板蟇股
    
板蟇股は幅六・六尺、成四・二尺、厚さ五・五尺で、渦・鍋が付き、斗・実肘木・を介して棟木を受けています。板はヒノキ材です。
彩色も施されていましたが、現在は剥離しています。
 
この板蟇股には、板の面に円く穴をあけ中に彫刻を施す桃山時代に生まれた方法が取られています。
その後あまり発達しなかったが、時代蜀を残す貴重なものとされています。
  
彫刻の題材は両妻ともに「栗」で、豊穣を表わすと共に搗栗(かちぐり)にちなむ戦勝祈願を象徴して選ばれているとすると、城門としての由来を伝えているとも
いわれます。

表門の上には中国二十四孝の物語を彫った蟇股が四個並びます

正面蟇股 左側表面「孟子」「唐夫人」「郭巨」「楊香」と裏面
        


境内を散策して蟇股との出会いを楽しみました。

摂社 東照宮 極彩色な装飾
       

摂社 狩尾社
    

桃山天満宮 建立:1841 年代が確実に分かるものとして貴重です
     
蔵光庵堵いう寺院が発祥で、室町時代頃に、菅原道真の画像をお祀りしたことから始まりました。1841年の造営時に使った大工道具がそのまま残っています。
蟇股は牛の親子で、組合せは梅に差さです。欄間に鶴と松の彫刻が施されています。木鼻には渦模様の彫刻がされています。

絵馬堂
      


大光寺
京都府伏見区伯耆町1-1

伏見桃山駅の西、大手町商店街の店の間に山門がある寺院です。
伏見大光寺(元大光明寺)は、鎌倉時代1264年に開基された浄土宗の寺院です
もともとは江戸町(伏見桃山町松平武蔵)にあり、宮家と深い縁を有し、のちに伏見奉行所の小堀遠州により、伏見城の大手筋門通りの地である家光傅役 青山伯耆守屋敷跡を拝領し、現在の地に移転されました。
伏見奉行所の与力方の菩提寺としてあり、幕末には、伏見義民一揆や新選組に関係する事件などもありました。伏見の歴史に深く関係した古刹です。


本堂 建立:1989年 十二支の蟇股が並んで配されています。

  
細部
    
十二支の蟇股
           

薬師堂
  
薬師堂は知恩院宮の旧御殿を拝領した桃山建築で、三笠山の薬師寺からきたという平安時代の薬師三尊、薬師如来様、日光・月光菩薩様が祀られています。

 

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