JAPAN GEOGRAPHIC

Monthly Web Magazine July 2020

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■ 最近の取材から  大野木康夫

新型コロナウイルスの影響が取材に及んでからはや半年近くになります。
当初は人が少ない山城を中心に撮影していましたが、感染が拡大し始めてからは不要不急でない用事のついでの撮影、4月中旬から5月末にかけては職場のルールに従い、まったく撮影に行きませんでした。
5月末から市内の撮影をはじめ、6月下旬からは職場のルールの緩和に伴い、隣県へ撮影に行きました。
撮影対象は、長年続いた保存修理事業が完了した竹生島と薬師寺です。

県をまたいだ移動が可能となった6月20日は、平成25(2012)年から修理保存事業が続いていた竹生島宝厳寺を訪問しました。
竹生島に渡る琵琶湖汽船の船便は事前予約制で、定員よりもかなり少ない人数で運航されていました。
   

9年ぶりの竹生島
  

保存修理事業により黒漆ベースの鮮やかな色彩となった唐門
今回訪問した主目的です。
豊国廟の唐門を移築したものですが、豊国廟の唐門は大阪城の極楽橋に付属していた唐門だったようです。
幟が少し気になりますが、寺社なので仕方ありません。
     


修理前の唐門(平成24(2011)年7月撮影)
     

竹生島の重文・国宝建造物
     

帰りに彦根城に立ち寄りました。
危険個所として立ち入りできなくなったエリアがあり、あまり満足できませんでした。
        


7月2日には10年に亘って保存修理工事が続いていた薬師寺東塔を見に行きました。
5月の落慶法要が中止となったので、東塔周辺の整備工事が続いており、低い囲いが設置されたままとなっていました。
初層の裳階(もこし)は創建当初は西塔と同じ連子窓と聞いていたので、どうなっているか気になったのですが、確定できるような資料がなかったのか、白壁のままでした。
巨大な三重塔ということになりますが、裳階がなければ滋賀石塔寺の石造三重塔のようなスリムな姿になるのでしょう。
フェノロサが東塔を見て言ったといわれる「凍れる音楽」が意味するものが、フリードリヒ・シェリングの「芸術の哲学」に記述される「凝固する音楽」と同じ「天然物と少しも似る事なき美を作りだすもの」であるとすれば、日本の塔婆建築として極めて異形であるこの塔にぴったりの表現であると思いました。
もう少し時間がたって、周辺の整備が終わったころにもう一度訪ねたいと思いました。
    


修理前の東塔(平成23(2010)年9月コンデジ撮影)
  


覆屋に入る前の東塔(平成25(2012)年1月撮影)
  


西塔と金堂
  


東院堂と休ヶ岡八幡宮
  


ついでに寄った唐招提寺浄瑠璃寺岩船寺
       
    

最近、また、感染者が増えてきたようなので、これからしばらくは市内での活動(なるべく夏季休暇を利用した平日の活動)に専念しようと思います。

 

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