MONTHLY WEB MAGAZINE Mar.2011
■■■ 民家園 瀧山幸伸
二月に訪問した川崎市の日本民家園、冬の寒い日には囲炉裏の直火が心地良いです。
物理的に暖かいというわけではなく、心がほっこり暖かくなります。
日本の社会経済文化を学ぶ場であるのはもちろんのこと、環境など未来の問題を学ぶ場、自分のライフスタイルを考え直す場としても適しているのではないでしょうか。
そういう目で園内を巡ると一日でも時間が足りないほどです。
全国各地の民家園はどれもがんばっています。ぜひ訪問してみてください。
複数の民家を保存開放している屋外型博物館や民家園の主要なものを記憶を頼りに取り上げてみました。北から、
などなど。
そうは言っても、民家は元の場所に帰してあげるのが一番幸せでしょう。
その民家が成立した地域の地理と歴史、すなわち周囲の森や田畑や集落とともに学ぶのが本来の姿ですね。
民家が建築された地域産の部材を学び、民家とその地域で行われた民俗文化を学ぶためには、現地に行くのが最も良いと思います。
民家が成立した社会経済的背景を学ぶことは、地域活性化など日本の未来を考える上でも非常に重要だと考えます。
民家園や公園にたたずむ民家は、山から湧く清水を引く樋や枡が枯れ、屋敷林も奪われて裸同然です。
閉め切られたり、囲炉裏の火を絶たれたりで茅葺屋根や建物の痛みが進む民家も多いです。
ひどいものになると元の方位も変わってしまっています。
ぽつんと公園内に置き去りにされ、戸が閉まっているような民家は特に悲しい叫びをあげています。
まるで首をもぎ取られて泣いているように感じます。
重要文化財の民家は貴重なので難しいでしょうが、それ以外の民家は宿泊してこそ価値があるのではないでしょうか。キャンプとは違う、貴重な体験学習の場です。
かまどやいろりを利用して食事を楽しんだり、座敷からゆっくりと庭を眺め、湧き水の音、竹林のそよぐ音を聞いてこその民家でしょうし、月を眺めてこその民家でしょう。
十三夜の月、十五夜の月、立待ちの月、居待ちの月、寝待ちの月、更待ちの月、そして二十六夜の月まで、農村の文化と生活リズムを知るには民家での宿泊生活体験がふさわしいと思います。
それゆえに世界遺産の白川郷や五箇山相倉や菅沼は評価が高いのではないでしょうか。
全国区各地の重要伝統的建造物群を構成する農魚村集落、たとえば美山や伊根なども観光と文化財の保存と体験学習とが両立している好事例だと思います。
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