MONTHLY WEB MAGAZINE July 2012

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■■■■■ 仁王様の乳首 野崎順次

先月、富田林の龍泉寺に行った。国指定重要文化財の仁王門(鎌倉中期)の全景を撮影してから、仁王様にとりかかった。正面はガラス張りで側面は金網である。金網にNikon NV1のレンズを押し当てて斜め下から撮影したら、目の前に花形の乳首キャップがあった。筋肉たくましい胸に一対の花である。これまで恐らく数百回は仁王様を見てきただろうが、乳首に注目したのは生まれて初めてだった。

JAPAN GEOGRAPHICのウェブサイトで他の仁王様(正式には金剛力士像)の乳首の様子をいろいろ見てみると、人間に近い半球状突起もあることはあるが、花形キャップが主流のようだ。もっと多くの事例を綿密に調べる必要があるが、とりあえず、次の4つに分類してみた。

A.半球状突起

奈良県斑鳩町 法隆寺中門 国宝 奈良時代

日本最古の金剛力士像で塑像であるが、後世の補修が甚だしく、吽形像の体部はほとんど木造の後補に変わっている。

大阪府太子町 叡福寺 仁王門 指定なし

愛知県豊川市 財賀寺仁王門 重文 平安

B.単純花形

奈良県奈良市 東大寺南大門 国宝 鎌倉初期

C.多弁花形

秋田県秋田市 天徳寺山門

大阪府堺市南区 法道寺中門 市文 鎌倉 弘安六年(1283)

富山県高岡市 瑞龍寺山門 指定なし

阿形像には乳首がないが、吽形像は金色キャップと非常に派手である。

D.省略象徴的花形

大阪府大阪市天王寺区 四天王寺 東大門 指定なし

非常に新しい、恐らく昭和。

仏像は大きく4つの階層がある。上から如来(悟りを得たもの)、菩薩(如来になるべく修行中のもの)、明王(力づくで仏の教えに導くもの)、天部(如来・菩薩・明王の守護者)で、仁王様(金剛力士像)は天部に属する。

天部の一つの特長は男性神と女性神が区別されていることである。梵天、帝釈天、吉祥天、四天王、阿修羅などが含まれるが、裸形で乳首あるいはそれを隠す装飾キャップらしきものが確認できるのは、金剛力士像が圧倒的に多いようだ。ちなみに興福寺の木造金剛力士像(国宝、鎌倉)には多弁花形キャップが付いているが、同じ天部に属する阿修羅像(国宝、奈良)の胸はのっぺりして乳首がない。

参考資料

仏・如来・菩薩・天部データベース

万安真の対話版 2.仏像:大別4種

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