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「和風」の「自律型」ニュータウンは成立するか?
Plannning Japanese style self contained newtown

~成熟社会と地方都市問題解決の一案~

2007年6月 瀧山幸伸




1. 背景  既成市街地再生 VS 新市街地創造  文明論的視点

文明の破滅などに伴い廃墟となった都市は多いですが、今日の都市は今後数千年単位で継続するはずです。以下の論は、短視眼的な論争を避けるため、最低百年単位で達成可能な時間軸で検討します。

概念図


■ 既成市街地の問題

 既成市街地、特に商店街が衰退し、それを再活性化させる。コンパクトシティという名のもとに郊外型大規模商業施設を規制する。現在この政策が主流として実施されていますが、これを成功させるのは大変困難なことです。既成市街地変革に対する抵抗が大きく、権利者の利害調整は特に伝統的な街では難しい。なぜ難しいのか、上田篤(注1)が日本人の土地に対する異常なまでの執着や世界観、都市観を興味深く分析しています。

■ サステナビリティの問題

 CO2削減などのサステナビリティ問題に関しては、文明への警鐘ですから、千年単位の持続的な成長策についての議論がなされるべきです。超長期にわたり生産性や都市生活の快適性を維持しながら根本的に解決する方策はあるのでしょうか。

■ 東京と地方の格差問題

 経済格差のみの議論ではなく、ライフスタイル論的視点、社会学的視点も重要です。例えば、地方都市に生まれ育つ人々の一部は、青年になると仕事が無いので大都会に出る。そこで家族を作るけれどもコミュニティとの親和性が希薄で、エンプティネストになると根無し草。晩年要介護になると家族と離れて施設で孤独な死を迎える。そのような日本社会は本来の姿なのでしょうか。宮本常一の「忘れられた日本人」(注2)などに記録された家族愛と純朴さ、日本人の根っこの部分は永遠に忘れ去られてしまうのでしょうか。

 このような三つの課題を背景に、既成市街地再活性化の代案として、別の場所に中心市街地を創造する案(概念図参照)が考えられます。旧市街と新市街の競合ではなく、双方の共存策があるのではないかという問題提起です。
  経済地理的に検証する方法論を考えてみましょう。商業のみならず医療福祉教育行政などの各種都市サービス施設は、用地の規制がなければ効率が最大となる場所に立地するはずで、その最大効率の場所に施設の集積があれば、その周辺に人が住み、ほとんど全て徒歩圏内で完結することが最も効率が良いはずです。新たに作る郊外型複合用途のニュータウンであれば、街づくりのイニシャルコストもランニングコストも小さくなります。この街が何百年何千年も続くことを考えれば、既成市街地とどちらがサステナブルか、どちらが人間的かという議論が現実のものとなるのです。
 議論を深めるための仮説として、小京都と呼ばれているような伝統的な地方都市を想定してみましょう。(かつて「新産業都市」に指定されたような工業指向の都市では、守るべき伝統的市街地は多くありませんから、この議論からは除外して考えます。)小京都会議に参加している街は全国に50もあります。多くは城下町で、それらは中世における防衛を主目的とした地理的立地と都市計画で今日まで続いていますが、上記三つの課題を象徴しています。東京も城下町であり、規模が巨大であることを除けば同様な課題を背負っており、関東大震災後の大東京復興計画が頓挫したのも改造費用と土地所有権に対する過度な執着でした。
  その郊外に見られる「道の駅」や「ハイウェイオアシス」などの立地を参考に、施設を大型化し、その周辺にあらゆる都市施設と住宅と職場を複合させたニュータウンを創るという都市計画案です。言い換えれば、道の駅やハイウェイアオアシスにあるような単機能ではなく、衣食住、職、遊、学、健、全ての機能を凝縮した、外洋客船や宇宙ステーションのような街づくりが可能なのではないか、過去の例で比較すれば、 西欧の中世都市や日本の寺内町(今井、富田林など)、あるいは山の中なのに全てが揃っていた鉱山都市のようなものの未来形がありうるのではないかという発想です。かつてスモークインダストリーと呼ばれ嫌われ者だった工場は今や環境の優等生ですから、工場や廃棄物処理施設、コジェネレーション施設などを隔離する必要もありません。

  この概念は、巷間言われている「既成市街地再活性化」の手法とは正反対の手法です。長期にわたり国内のほとんどの地方都市を調査してきた実感として、既成市街地の活性化はやさしくないし、既成市街地の区画整理や再開発に伴い、古き良き街並と文化を失うリスクも大きいということです。このような「新天地での街づくり」という代案が無い限り、既成市街地関係者の危機感は生まれず、再生か新規創造か、何を残し何を壊し何を創るのかという議論も、超長期に及ぶ社会コストの意識も働かないでしょう。
 ちょっと待て、旧市街地はどうするのだ?二重のコストになるのではないか?郊外のニュータウンだとすると自動車が中心、環境はどうなる? というような多くの疑念が湧くでしょう。
街の存続は千年単位ですから、単に静的な都市運営コストではなく、人とモノの移動コストと機会損失なども含め、超長期に及ぶ街のライフサイクルコストのシミュレーションを行い、ニュータウン創造の判断材料とすることが重要です。今回は概念論ですので定量的検証は別の機会に譲るとして、旧市街地は「歴史地区」など、保守保存的な方向で成立します。旧市街に愛着を持ち、そこに住み続けたい人も多いでしょうから、区画整理や再開発で伝統を破壊することは行わず、世界各国の古い街並と同様、歴史と文化を尊重し、最低限のインフラとサービスを維持しつつ丁寧に扱うことになるでしょう。
  困り者は城下町の城跡周辺の一等地にある行政庁舎です。ほとんどの城下町では、江戸から今日までタテ社会の構造は変わっていません。天守閣と御殿が行政庁舎に、殿様と武士が行政の首長と役人に変わっただけです。城の付近は「お上の場所」として特権的排他的に使われています。本来このような場所は市民のために使う、例えば憩いの公園とすべきです。では、行政庁舎がそっくりニュータウンに引越して来れば良いかと言うとそうでもなく、行政サービスの窓口は必要ですが、非効率な行政事務と庁舎は本来の都市機能としては過大な施設であり、ネットサービスなどの効率的な方法に切り替えれば良いのです。ですから、ニュータウンに入れるべき行政機能は最低限とし、地方財政支出を削減すると同時に減税を図るべきです。スリム化した余剰人員は付加価値創造産業、例えば観光ホスピタリティビジネスなどに携わります。その効果として、東京と地方、あるいは地方間の競争、それも国際レベルでの競争と魅力付けを促進させるべきでしょう。要するに公務員の数を大幅に削減するなどの社会システムの大リストラクチャリングをニュータウン創造と同時に断行しなければ地方都市の活力は生まれません。大げさですが、戦国時代以降そのような大変革がなされていないことがそもそもの問題と言えます。

2.  コンセプト

新市街地を創造するための理念を考えてみましょう。
成熟社会において、地方都市がアイデンティティを持ち持続的に成長するためのキーワードは何でしょうか?


(1)和の文化は日本人のアイデンティティ

  今、和風回帰が顕著になっています。個人主義とアイデンティティの向かう先は和風回帰です。日本様式は繊細であるばかりでなく、機能的で美しく世界に誇れるものです。和風は日本人の共有価値で、遺伝子としての和は中高年者のみならず「トトロ」などで若者にもすりこまれています。

 海外旅行を一通りこなすと、ほとんどの人が日本人としてのアイデンティティを考えさせられることとなります。特にリタイア層は、衣食住足りて文化芸術エンタテインメントなど自己実現を探求する段階になりますし、日常においても欧米ライフスタイルへの飽きが顕著になっています。成長期に育まれた和風環境の、ゆとり、いやし、なごみ、なつかしさ回帰への潜在的欲求が顕在化しつつあると思われます。
 すなわち、時代のキーワードから導き出される仮説として、コンフォタブルでシンボリックな「和風」ライフスタイルへの潜在ニーズがあると認識されます。毎日を過ごしたい和風の美しい街での美しいライフスタイルです。以下、誤解を招くことを承知で乱暴に例示すれば、コンフォタブルとは、家では和室に正座ではなく和風インテリアで椅子のライフスタイル、旅館やホテルでは布団ではなく和風インテリアにベッドのライフスタイルです。シンボリックとは、風呂敷をインテリアなどに使うという、欧米人が好むネオジャポネスクの和風と捉えればわかりやすいでしょう。但し、そのような教養ある欧米人は、本来の「和風」を良く理解した上で彼らのライフスタイルに取り入れているのであり、日本人のほうが伝統的和文化への基礎知識が足りていないようです。すなわち、本物の「日本文化」を理解したうえでの「和風」であり、フジヤマゲイシャの和風ではありません。、建築ではライトやタウトであり、学者ではサイデンステッカーやドナルドキーン、政治家ではライシャワーなどです。日本人では白洲次郎がわかりやすいでしょう。

  日本の近代化に伴い、全国津々浦々、西欧の近代都市を模倣した街並となってしまいました。都市サービス施設として重要な商業施設を例にとれば、現在の大規模商業施設は、ほとんど全てアメリカ商業施設の系譜であり、どちらかというと若年層やファミリー層をターゲットとしています。既成市街地の商業集積、いわゆる商店街の多くも和服の上に洋服を着たような姿で郊外型大規模商業施設と競合しています。これでは勝負は目に見えています。
  和風テイストの街を創るにはどうすればよいのでしょうか。ハードウェアである建築、ストリートファニチャ、テキスチャなどに和風のデザインテイストを活かすことは難しくありません。犬矢来などの格子を使えば急に和風になったりします。例えば、門前町井波には街中に木彫りの彫刻があふれています。ただし、自動車や自転車、ショッピングカートや人など、和風テイストの街並に影響を及ぼす「動き回るもの」を和風に変えることは難しい課題です。

祇園の格子と犬矢来 井波の彫刻
  


(2)「セルフコンテインドシティ」

 TOD(Transit oriented development)の理想形は宇宙ステーション型

交通を意識した都市計画の理想は何でしょうか?
そもそも、なぜ人は交通機関を利用しなければならないのでしょうか?
江戸時代には、百万人の大都市江戸を筆頭に、地方藩のどの街でも、人の主要交通手段は徒歩でした。
通勤通学をはじめ生活の全てに徒歩のみを利用する都市はできないのでしょうか?
19世紀の文明は鉄道がリードし、20世紀は自動車と道路によるスプロールで都心と郊外が機能分化してしまいました。21世紀は歩く時代です。不要なスプロールを防止し、全ての都市機能を半径500mから1Km程度の徒歩圏内に集約し、その周辺に付帯都市施設を配置するという発想です。
「コンパクトシティ」という用語は定義が曖昧なまま恣意的に使われているので、ここでは、このような新市街を「セルフコンテインドシティ」と名づけます。
「セルフコンテインドシティ」とは、 「サステナブル」で「災害に備えた」「エコノミカル」で「エコロジカル」な「自律都市」だと定義します。ところが、これらの街づくり標語のほとんどは実体の伴わない空念仏です。実現可能な都市のあり方を考えてみましょう。
  ゲーム「シムシティ」などを体験した方にはなじみがあるでしょうが、全ての機能が内包されている都市が理想系です。過去の概念と対比すれば、TODやTND(Traditional neighborhood development)の発展系、未来都市のモデルとなる次世代型のニューアーバニズムということ、わかり易くいえば、狭域で完結する立体複合の都市を作る概念です。全て歩ける範囲内に施設を配置する、 タウン内でのエネルギー消費を極小化する、セルフコンテインメントの最小タウンモジュールをシステムとして作り出す概念です。その究極にあるのは、宇宙ステーションのように、発電、上下水、ゴミ処理や葬祭場など、全てのインフラを化学コンビナートのようにシステムパッケージ化するという発想です。ゴミ処理などあらゆる熱エネルギーや下水はコジェネレーションの対象であり、電熱源として利用されますし、生ゴミはディスポーザで下水に流され衛生的で、カラスに悩まされることもなく、資源回収コストも削減されます。新市街は全ての都市サービス施設が複合しているため、公共民間ともに街づくりの初期投資もタウンマネジメントコストも低く抑えられます。
 近距離交通手段としては、環境配慮型で高効率な新鋭システムを導入し、空調や断熱も経済的で、常時非常時ともに安全かつ人に優しい住みやすい街が生まれます。新市街から旧市街へは、高規格道路やLRT(Light Rail Transit)を整備すれば時間にして10分程度の距離でしょうから、格安または無料のコミュニティシャトルで快適に往来することができ、世代間の断絶もコミュニティ破壊も起こりません。遠距離交通手段ですが、今後も航空機が主流ですから、郊外の新市街ならば空港へのアクセスも快適です。

   
 このコンセプトを具現化する方策は多様ですが、宇宙ステーションのような発想を取り入れれば、例えばこのようなユニークなテーマと手法が考えられます。

■ ユニバーサルデザインと健康
 アクセシビリティとアンチエイジング・ノーマライゼーションがキーワードです。
成人の過半数が50歳以上となった現実ですから、高齢社会への対応が都市の優劣を決すると言っても過言ではありません。ユニバーサルデザインは必然ですし、健康をテーマとすることは中高年者の潜在欲求に合致します。この「健康」のイメージは、欧米のように「カロリーの高い食事を摂り激しい運動で健康を保つ」のではなく、「日本食で医食同源、風土に調和し健やかにゆったりと生きる」ことにあるのです。 
  老若男女全ての人にやさしい街とは、ハンディキャップ対応は当然として、「ベビーカーと一緒に入れる男性トイレブース」など、細かいところまで対応できていなければなりません。アンチエイジングとしては、動力の補助で楽をするのではなく、コミュニティヘルスプログラムの導入が求められます。楽しみながら疾病予防やリハビリテーションを行う工夫が街のいたる所に求められます。例えば米国スタンフォード大学の医学部キャンパスには疾病予防のトレーニングコースがあり、専門家の指導のもと、行動科学に基づいた運動栄養処方を作成し、消費カロリーやバイタルデータなどをモニターフィードバックしながら生活習慣病の予防に必要な運動を楽しむシステムとなっています。

■  輪廻型マスタープラン
 街づくりは数十年、数百年単位の段階的開発が必要です。神社の社殿が数十年おきに遷宮するように、老朽化する施設の建て替え用地を確保して、次世代のために施設と機能を順次更新するシステムを取り入れたマスタープランが必要です。

■ パブリックシェア 
 皆で資産を共用する発想です。コミュニティで自動車や自転車を共用する事例は出始めていますが、各家庭が占有していた庭園などを含め、もっと積極的に共有・共用する思想です。そうすれば、公園にミニ動物園、植物園、日本庭園やミニ水族園、釣堀などを配置して、効率よく運営することができます。釣堀の魚類などは、放流したい人と釣りたい人のニーズを満たすことができるでしょう。ネコや犬も、部屋内で飼われるのではなく、一定区域を囲って放し飼いとし、共同管理のもとで幸せな生涯を送ることができます。実際、地域の人々が交代で世話をしている「地域ネコ」が幸せに暮らしている街があります。ニワトリも昔の農家のように放し飼いします。

■  オーガニック
 物理面はもちろん、心理面でもオーガニックな街であるべきで、衣食住に限らず、全てにおいて「人工物」を可能な限り排除する発想です。例えば、パブリックな部分に露出する無機質な金属やコンクリートは遮蔽する、裸足で歩く感触を重視し、リハビリに貢献するよう、歩道は土とマルチングを利用するなど、細かいこだわりが必要です。あるいは落ち葉を堆肥化するなど、有機ゴミは極力焼却しないことです。

■  季節感
 オーガニックにも関連しますが、四季、時間、天候の変化、自然環境を取り込み、人間が本来持っている順応性を増進させる、自然に基づいた健康増進と文化創造を重視するという発想です。例えば、夜ふかしをしないで日の出と共に起床し早寝をする。夏は昼寝をする。クーラーではなく打ち水やヘチマ棚などで心理的な涼しさを演出するなどです。

■  緑化と経年優化
 潜在植生の復元をめざし、基本的に苗木が百年千年単位で大きく育つ街づくりを行います。無機的な空間の駐車場なども緑化します。


3. マスタープランとゾーンイメージ 

「和」の表現

 新しい街を創造するのですが、それは海外からの借り物ではなく、自己実現のための街づくりという観点から、日本人のアイデンティティとも言える汎用的な「和風のエッセンス」のスタイルと、地域特有の「風土」を現代空間にどう活かすのか、美しさ、快適さとは何かを根源から問い直さなければなりません。家庭で受けた躾け、学校での体験、冠婚葬祭、年中行事など、日本人の遺伝子として組み込まれている文化的背景を重視し、 テーマ性を持たせた街づくりを心がける必要があります。

街並や施設のプラン演出イメージですが、 「小京都」は城下町がほとんどですので城下町にふさわしいニュータウンを考えるべきです。特に外周部やパブリック部分には和風の演出が重要です。


「 城下町」をテーマとした街づくり

城下町には、武家町、商人町、寺町、茶屋町などがあり、同時に宿場町としての機能も備わっています。それぞれにアイデンティティがありますので、具体的なイメージを探ってみましょう。

■ 門前町通り 
テーマは 「祭りと幸せとオムニバスエンタテインメント」で、ご利益と幸福、長寿、冠婚葬祭などのサービスを提供します。シネコンなどのような受身のエンタテインメントではなく、文化創造と交流という観点から、ライブ性を重視します。施設や公共空間は素人に開放し、いつもミニイベントやお祭りがあり、屋台の楽しさとともに、見るも踊るも楽しい街を創造します。
例: 善光寺門前


■ お祭り広場、大道芸広場 例: 伊勢おかげ横丁 
 


■ 和風ミニ遊園地 例:浅草花やしき



■ 宿場町通り 例:奈良井
テーマは「旅、スポーツ、健康増進と文化交流」で、それに沿ったサービスを提供します。



■ 商人町通り(楽市楽座)
信長が保護した自由な商業空間とシステムは当時の西欧よりもはるかに進んでいました。また、江戸時代の日本橋は世界一の売上を誇っていました。その伝統を現在風にアレンジします。
生きるために消費する時代ではありませんから、テーマは 「消費を通じた自己実現」で、前向きな人生を送るためのサービスを提供します。

例:彦根 街並整備資金を得て城下町内の商人町を新規に建設しました。



例:豊後高田の和風ミニモール 水路を中央に挟んだ新築空間です。


例:京都青龍園 古民家と庭園を利用したミニ商業空間です。蔵を利用したコーヒー店がアンビエンスを醸しています。


伝統的露天市 
商業者を排除し、生産者のみが産直で販売できる露天市で、究極のトレーサビリティとも言えます。
例:肘折温泉朝市 


■ 茶屋町通り
テーマは「大人のエンタテインメント」で、娯楽だけではなく、ビューティケアと飲食などのサービスと夜の賑わいを重視します。 街並はべんがらを使って華やかに仕上げます。
例:金沢東茶屋町


酒蔵と酒蔵レストラン 
例:小布施


和風エンタテインメントクラブ
例:金毘羅大芝居



環境

街全体の環境
エコロジカルな全体環境を作ります。例えば、街路樹など公共空間での潜在植生の復元、在来種重視、ビオトープ、バードサンクチュアリなどです。

■ 妖精の森と泉 
憩いの場として活用します。大木には癒しの力が感じられます。数十年経て、ここで生まれた子供がお年寄りになる頃には大木の森となる。それを次の世代に伝えるような森です。
例:茨城 鹿島神宮の社叢


例:山形東根小学校の大ケヤキ 鹿児島蒲生のクス、山梨北杜の神代桜 
それぞれ日本一古く、樹齢千五百年程度です。


■ 名水、水琴窟
おいしい地下水を飲めるだけではなく、水の音などによる癒し効果も期待できます。水を身近に感じる環境への懐かしさを演出します。

例: 新潟栃尾 杜々の森湧水
 

例:奈良井の水場



■ ミニ水族館、釣堀、ミニ植物園、ミニ動物園、庭園、ペットガーデン、ガーデニングショップ、調理食堂

道路公園は公共空間ですから、委託事業者方式によりタウンマネジメント
の一環として管理します。
運営においては、コスト削減と健康増進、自己実現の観点から、園芸福祉士など動植物の専門家を活用し、生涯学習しながらボランティアもできる方策を導入します。
基本方針として、セントラルパークのように、入場無料、24時間オープンであることが重要です。
日本固有の環境適応型動植物を中心に据えます。ショップは公共施設上の店舗(コンセッション)として、居住者優先で公募します。

例:足助屋敷の牛


例:奥鬼怒、道路脇のニホンザルファミリー


例:金華山のシカ、鎌倉のリス
 


例:根津神社 つつじ祭り


例:巾着田のマンジュシャゲ

例:足利フラワーパーク



■ 音のシンボル

環境は、五感全てに優しくなければなりません。一例として、地方都市の役場からの「歪んだ時報」を駆逐すべきです。例えば、日本古来の寺の鐘。朝6時から1時間おきに時報として鳴らします。あるいは、教会の鐘。日曜朝、祭日、結婚式など、ハレの日に鳴らします。

例:平戸 寺と教会が隣接する有名な光景。クリスマスやイースターなどには素晴らしいアンビエンスです。


■ 和風景観の演出

街全体の外構は、竹薮や防風林、土塀と水路に囲まれるようにしつらえます。
あらゆる面で環境が劣悪で安全性も劣る駐車場は、最も環境緩和策を導入すべきで、和風の植栽、石、水を多用し、景観水路、ミニ灯篭、手水鉢などを設置します。

例: 京都 KYOEN (仮設商業施設)


例:飛騨古川


例:金沢長町


例:郡上八幡 いがわこみち

 


文化系ゾーン

■ 伝統文化の再評価と生涯教育

公共の大型文化施設など仰々しいものではなく、和風民家などを利用した生涯教育施設で日本文化の情操教育などを行うことが重要です。これらの活動を通じて、地方と大都会との交流が生まれます。宿泊機能があればなお好ましいでしょう。

例:足助屋敷


例:足助屋敷の水車


例:平出の登り窯


例:足助屋敷の鍛冶屋 


例:足助屋敷の機織場 


例:足助屋敷の紙漉き場 


例:足助屋敷の傘屋 


例:井波の彫刻師 


例:房総のむら 体験型学習パーク 


例: 日光旧田母沢御用邸でのお茶稽古

 
例:
明治村漱石旧居での琵琶弾き体験


例:足利学校


■ 図書館

例:塩山 高野家の文庫蔵を利用したこども図書館。縁側で親子が絵本を読む姿がほのぼのとしています。


■ 美術館・博物館
デリケートな美術品を数百年保存してきた蔵などを利用した施設が高温多湿の日本の風土になじみます。

例:山形 紅花資料館 蔵を利用したギャラリー


■ 保育園、小学校、中学校、コミュニティカレッジ、塾、高校、専門学校、単科大学 体育館、運動場

往々にして教育機関を郊外に移設することがあるのですが、教育施設は住居地に近接させるべきです。
 
例:松代 藩校の文武学校 と、隣接する小学校
 

例:旧登米高等尋常小学校
 


■ 古代生活キャンプ場と農場 
野外活動体験施設は、欧米のテントやキャンプファイヤーではなく、古代人の生活の知恵を反映することも可能です。懐かしい焚き火の躍動感もさることながら、いろりで調理する健康食はシズル感がありますし、便利さに慣れた現代人に、エネルギーや食物の重要さを体得させることができます。ワラの利用法など、年寄りの知恵を若者に伝授することも可能です。

例:三内円山


また、教育実習施設としてのミニ農場を持つ必要があるでしょう。ニート防止にも役立ちます。

例:千葉旭 大原幽学遺跡 世界最初の農協システムを作った。


例:栃木 二宮尊徳桜町陣屋




冠婚葬祭系ゾーンイメージ

門前町付近のコアとして位置づけます。戦後の都市計画は、宗教施設をないがしろにしてきましたが、都市機能としてなくてはならないものです。例えば、多目的ホール、結婚式場、葬儀場などで、宗教法人はNPOであり、宗教施設だけではなく、介護施設や生涯学習施設の経営を兼ねることも可能だからです。

■ ミニ禅寺と鐘楼

例:千葉 飯高寺 立正大学の源流

■ ミニ神社と太鼓 
お祭りと結婚式、ハレの場と言えば神社です。神社には縁結び石と長寿の泉があります。

例:京都清水 地主神社



■ ミニ教会と鐘(幸福の鐘)

例:長崎出津 大野教会 
遠藤周作の沈黙にも描かれた出津は世界遺産の暫定登録がされたように、日本文化そのものとなっており、鐘の音と音楽で癒されます。



ヘルスケア・ホスピタリティ・宿泊ゾーンイメージ

「千と千尋の神隠し」に登場する湯屋をイメージします。

■ 温泉、美容SPA

例:田沢温泉
  

■ 介護、デイサービス施設 
高齢者は隔離するものではなく、多世代同居のコンセプトを重視し、小さい子と共に過ごすべきですから、小中学校に隣接した懐かしい小学校風の施設が良いでしょう。北欧でも、介護施設と小学校が同じ建物に同居し、昼食は一緒にするなど、相乗効果のある事例があります。

例:吹屋小学校


■ 中規模の病院

例:明治村 名古屋衛戍病院




住居系ゾーンイメージ 

和風の低層マンションが主となります。シンプルなデザインの高級和風旅館が参考となります。 
バジェット型の和風ホテルや民宿も可能です。


ビジネス系ゾーンイメージ 

■ SOHOオフィス
京町屋のようなオフィスやSOHOも立地可能です。職住近接ですので生産性が上がります。

例:宮津 三上家
 


■ 郵便局・銀行 例:伊勢おはらい町



公共公益利便施設ゾーンイメージ 

■ 行政施設 

例:足助


■ リサイクルセンター
本、PC、家具、家電などのリサイクルを主とします。
 
■ 清掃工場 
ク リーン/エネルギーセンターと温浴運動施設
となります。

■ 交番、セキュリティセンター
公共のセキュリティコストは増加の一途ですので、ITを活用し、無駄な警備人件費を削減します。

交通系インフラ

20世紀の町の中心だった鉄道駅に代わるものとして、バスやLRT、通常のパーキング施設を次世代ターミナルとして位置づけます。町の中は車の乗り入れが無く、ボランティアにより域内電気自動車などを運行し、各所にオンデマンド停車します。

例: 和田宿のバス停


■ カーセンターと自動車学校
部品、修理、新車中古車販売、レジャー目的のレンタカー業務などを行います。
昼は交通(乗り物)公園で、子供たちのために和風ミニ列車なども運行します。夜は自動車学校として活用します。

■ サイクルショップ
歩行者が中心の町ですから、乳児からお年寄りまでの人力乗り物ショップが必要です。


通信インフラ

ユビキタス通信網とコミュニティ向け双方向放送システム
コスト効率が良いので、域内は光回線も高速無線通信も低額で利用可能となりますし、ユビキタス通信網とITを活用した地域双方向放送が実現でき、災害時にも活用できます。


4. まちおこしのマーケティング戦略

地方公共団体と言えど、効率的な経営という観点から、ビジネスマインドが必須です。
最近、市町村境の道路看板にもその地域特有のシンボルデザインが添えられるようになりました。
まちおこしにはその町のアイデンティティとなるマスコットキャラクターが必要です。
忍者ハットリ君
やにゃんまげくんなどの地域マスコットが楽しい生活のシンボルとなり、他所からの観光客の誘致にも貢献することが望まれます。
コミュニティ向け放送システムを活用すれば、国境を越えて世界中の人に"Visit my town"の情報発信をすることができるのですから。


このような和風のミニタウンで生まれ育ち、そこで職を持ち家族を作る。家族やコミュニティと共に幸せな人生を送るということが地方都市本来の姿ではないかと思います。


参考文献

(注1) 上田篤 「都市と
日本人」  2003年 岩波新書
(注2) 宮本常一「忘れられた日本人」 1984年 岩波文庫